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三日坊主日記 vol.46 『車掌の遅刻』

珍しい光景に出くわした。

大阪メトロ西梅田駅の改札を通り抜け、電車が停まっているのを確認しながらホームに向かって階段を下りていた。3分の2ほど下りたところで発車の合図が鳴ったので一瞬走ろうかと思ったが、急いでなかったので次のに乗ることにした。

残りの3分の1をゆっくり下りて、ホームに着いても扉が閉まらない。こういう時に慌てて飛び乗ると、待ってましたとばかりに扉を閉められて挟まってしまうことがある。焦らず慎重を期して一呼吸置いてみた。

発車のベルが鳴ってから既に数十秒経っている。相変わらず扉が閉まる気配がないので、挟まれないように気をつけながらスルリと車内に滑り込んだ。そして何食わぬ顔で、いま入ってきた扉の脇にもたれて立った。しかしまだ扉は閉まらない。何かトラブルだろうか。急いでないとはいえ困ったなと少し不安になってきた頃に、僕の前を車掌らしき人影が走り過ぎた。

まさかと思って行く先を目で追っていると、やはりその男は慌てた様子で最後尾の細長い扉を開けて入ってきた。そして間もなく扉が閉まり、お待たせしました発車します。というアナウンスと共に、何事もなかったかのように走り出した。時計を見ると出発時刻を約2分過ぎていた。

日本の鉄道は世界でいちばん時間に正確だという。僕たちが物心ついた時にはそれが当たり前だったんでなんてことないが、外国人には信じられないことらしい。それはそれでとても素晴らしいと思うし、誇るべきことだと思う。

しかし、発車が数分遅れたところでそんなに困ることだろうか。予定時刻よりも早く出発されると非常に困るけど、少しぐらい遅れたところで誰に迷惑が掛かるのだろう。だけど最近は少しでも遅れると、その理由を何度も何度も喧しいぐらいアナウンスしているのを聞く。誰々がどうした理由で2分遅れて運行しています。どこどこで何々があった為に3分遅れて発車いたしました、と。

するってぇと何かい(急に江戸っ子)。今日の場合だと、私がトイレに行って遅刻したせいで2分遅れて運行しております。と、何度も何度もアナウンスするってえのかい。

あー、何て言うのか何も言わないのか確かめたい、もっと乗っていたい。と、思いながら一駅目で降りたのであった。

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