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「わかってない!」の話

補語と申します。普段は絵を描いています。
さて、私は去年の十月、「わかってない!」という題の漫画をpixivにアップロードしました。
これです↓

今回は、この「わかってない!」を描く上で考えていたことなどを書いていきます。形にする上での周辺に関する雑記なので私の思想云々は控えめです。
しかし、これで固まってしまう色々もあることかと思いますので、危機を感じたらいつでも離脱して下さい。私は見てくださった方の自作品に関する解釈を邪魔したくないので…

制作期間

二年です。二年もかけるな。
実はこの漫画は元々身内向けに書いた小説でした。その小説自体は余りに攻撃的な内容であったため公開を諦めたのですが、すごく情念が篭った物であったがために捨てきれず、その後もちくちくと加筆修正を続けていたのです。最初は六千字だったのですが、膨れ上がって最終的には一万字になっていました。
一万字を越してもまだ思い切ることができず、今度はそれを少しずつですが漫画にし始めました。小説内の身内向けの部分を改変し、あれは余計だから外し、これも余計だから外し、アッこういう展開の方がより「本当」なのでは…?とやりながらやっていたので、小説と「わかってない!」はほぼ別と言っても良い内容となっています。(小説から漫画にする過程で外してしまったものも、今後何かしらの形で生かすことができればと思います)

主人公一つ取ってもこの改変具合

題名も最初は「贅沢病」でした。この題名は実は公開寸前まで選択肢として残っていて、投稿する数分前まで「わかってない!」か「ぜ〜たくびょ」かで悩んでいました。今は「わかってない!」にしてよかったと思います。「ぜ〜たくびょ」よりも解釈の幅がありそうで良い…
ちまちま漫画を進めていく中、現実で「本を作る」という課題が出て、ふと「この漫画を本にして、それに合う装丁をしてみたい」と思ったのです。
思い立ってから、約一ヶ月で原稿、製本を終わらせました。構想一年十一ヶ月、実働一ヶ月。人は締め切りがあった方が動く。

遊びで作っていた表紙たち。回を追うごとに攻撃性が抜けていく…

本は内容のネット公開後無事完成し、展示まで出来ました。公開直後は何もかもが怖かったので、様子を見にいく度にディスプレイが崩れていて「ヨマレテイル!ヨマレテイル!コワイ!」になっていました。会場で見てくださった方、ありがとうございました。


製作中のあれこれ

注意書きについて
全てに怯えていたので注意書きを盛りに盛りました。閲覧できる不誠実。かわいい有害図書。教授を絶句させた漫画。内容もさることながら後半の「お花畑」のシーンが一番注意書きが必要かと思っています。描いていた当時は携帯しかまともに使いこなせる作画機材がなかったため暇さえあれば指でちまちまと花を描いていました。文字の密度も相まって本当に気持ち悪い図になったと思います…

共有しまくり

話しまくり


とにかく初めての創作漫画であったため、なによりも「モチベーションを続かせる事」を重視して、ずっと製作中に考えたことや進捗をTwitterにアップロードしていました。当時存在していたフリートも使用して延々と。フォロワーの皆さん、その節はよくわからない話を浴びせるように聞かせてしまい、ご迷惑をおかけしました。

インプット
「悪人がスカッと倒される作品」「Twitterで物議を醸すタイプの作品」
などをエッセイ漫画を中心にひたすらに読みました。そういった作品は、人間のある種の感情を克明に描写しているものが多く、「感情」を軸にした創作をしていた今回はとても参考になりました。お陰で「わかってない!」の事をまだうっすらと架空のエッセイ漫画だと思っている部分があります。
それと、本当に気持ち悪い話で恐縮ですが、壁に、主要人物三人の設定上の身長の高さに目印をつけ、事あるごとに「この位の大きさの…高校二年女子学生…」と思っていました。楽しいですよ…

作画環境
前述の通り、携帯です。
アイビスペイントで指描きしていました。その途中でなんとiPadを購入したのですが移行に手間取り、結局作画はほとんど携帯で描いていました。iPadをある程度使えるようになってきた今、当時の原稿を見ると本当に一から描き直したくなります…全体的に気に入っている作品なのでいつかできたら…(無計画にそういうことを言う)

テーマについて
どうしても主人公になり得ないであろう人間を主人公にしてみたかった
覚えがあります。カメラが向かない地味な関係、地味な痛み、地味な終わり。もっと主人公にふさわしい人たちならきっと思い至りすらしない懊悩、煩悶。何にもカテゴライズされない、というかできないほどに薄ぼんやりとした属性の数々。私は世界の終わりよりも、そういうものが描いてみたかったのです。そういった作品を存在させる事で、私は救われたかった。
漫画も含め、主人公の汚い部屋の絵を何枚か描いていますが、いつも薬の殻だけは描かないように意識しています。彼女は何も服薬せずとも生きていけてしまいます。狂う事すらできない程の茫漠とした痛みを抱え、一歩も進めない、進まない生活をこれからも続けるのだと思います。

終わりに

「わかってない!」を描いた後、ありがたい言葉とファンアートをたくさん頂きました。頂いたものの一つ一つが本当にうれしいです。本当にありがとうございます。
様々な情念が篭った作品なので、これからもちょくちょく落書きはすると思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。最後に、本にした際につけた後書きの言葉で締めくくりたいと思います。

少なくともこの本が黒歴史になるまではなんとかやっていきたいです。やっていこうね。

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