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「勝利の裏の駆け引き」20-21 Genoa vs AS Roma 【マッチレビュー】

パンダくんとビーバーくんが話しています…

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選手を「消した」ローマ

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パンダ「ボクが見ていた感じだと、前半のうちはローマがずっと攻めていたんだけど、それはどうしてなの?」
ビーバー「そうだね。たしかに前半はローマがずっとボールを支配して、ジェノアの選手はボールを持ちながら効果的にプレーすること、つまりボールを前進できなかったよね。」
「そうそう。それはどうしてなの? ジェノアの選手の能力が低いからなのかな。」
「いやいや。ジェノアの選手の問題というよりも、むしろローマの選手が工夫して相手を止めたからなんだ。下の図を見て。」

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「うわあ、難しそう。」
「心配しないで。単純な話さ。ローマは、ジェノアの誰かがフリーになるのを防いだんだ。ジェノアは基本的にCBから攻撃をスタートするんだけど、ローマはそのCBがパスを出す相手を消したんだ。」
「消した?」
「そう。パスの選択肢を消した、と言うほうが正確かな。具体的には、ペドロとミキタリアンがジェノアのSBを、ペッレグリーニとヴェレトゥが相手アンカーを、スピナッツォーラ(ブルーノ・ペレス)とカルスドルフが相手SHをマークしたんだ。中央にはマヨラルがいるし、ジェノアのCBはどうしようもなかった。」
「なるほどねえ。」
「でも、CBがずっとパスを出さないでボールを握っているわけにはいかないよね。ジェノアのCBは苦し紛れに難しいパスを出そうとした。するとどうなるかわかるよね?」
「ローマの選手がインターセプトする!」
「その通り! こうしてローマはボールを自分たちのものにしていったんだ。」

サッカーは五目並べ?!

「でも、ボールを奪った後はどうするのさ。」
「大丈夫。ここからもちゃんと作戦があったよ。ここでの鍵を握るのはWB、この試合の場合はスピナッツォーラ(ブルーノ・ペレス)とカルスドルフだね。下の図を見て。」

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「また難しそう。」
「大丈夫、また単純な話だよ。この図を見ると分かるのは、ローマのWBがフリーの状態でサイドに張っていることだね。こうなると、WBがボールを持てば質のいいクロスが入るでしょ?」
「うん。確かにそうだけど……。どうしてWBはフリーになれたの? ジェノアのSHかSBがマークすればいいじゃん。」
「そういう考え方もできる。そうすれば、ジェノア側からすれば、とにかくローマのWBがフリーになるのを防ぐことはできる。でも、そのぶんペドロやミキタリアンにスペースを与えてしまうね。」
「たしかに。」
「ジェノアは、ローマのWBがフリーになることよりも、中央に近いスペースでペドロやミキタリアンがフリーになることを恐れた。どちらかをカバーすれば、片一方のほころびが出る。ローマは相手に選択を押し付けたんだ。選択を押し付けるのは、相手を忙殺するのに役立つのさ。まるで五目並べのようにね!」
「五目並べっていう喩え、読んでくれている人に伝わるかな?」

垣間見えたフォンセカ監督のテーマ

「次に行く前に質問があるんだけど、いい?」
「もちろん。」
「前半、イバニェスとマンチーニがアンカーの位置くらいまで上がっていたんだけど、それはどうして?」
「うーん。正確な理由はわからないな。ただの癖かもしれない。ただ、もしその現象がチーム全体の戦術の要素だとするなら、推測する意味はあるよね。僕の予想だと、イバニェスはボールを捌ける選手だから、攻撃力強化のために高い位置でプレーさせたんだと思う。ただし一つ大事なのは、彼は常にスカマッカを警戒しながらポジションを取っていたことだね。もしチームがボールを失っても、スカマッカにボールが収まってピンチを迎える前にケアしてボールを奪い返す。これがフォンセカ監督のテーマだと思うんだ。即時奪回こそがいまのローマのテーマなんだよ!」

ジェノアの仕返しとフォンセカ監督の博打

「後半はジェノアのペースだったよね。どうして形勢逆転しちゃったの?」「前半と後半で形勢逆転、というのはサッカーあるあるだね。特にこの試合の場合、ジェノアは前半が悪すぎたから、ハーフタイム中に大胆な作戦変更がしやすかったんだと思う。一方でローマは前半が良かっただけに、作戦変更ができなかったね。」
「ジェノアはどんな作戦変更をしたの?」
「前半との違いは大きく2つ。まずラドバビッチが最終ラインに降りて3バックになったこと。次に積極的にハイプレスをかけるようになったこと。前半とあまりに違うもんだから、ローマの選手はびっくりしたんじゃないかな。」
「順番に説明してほしいな。まず、3バックにしたジェノアにはどんないいことがあったの?」
「さっきも説明したとおり、4-4-2のビルドアップはローマのフォーメーションに対して圧倒的に不利だった。で、後半から3バックにしたら下の図のようにヴェレトゥやペッレグリーニの横に大きなスペースができたんだ。」

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「ほんとだ! ジェノア的にはオイシイね。」
「そうそう。でもこのスペースを使うには、最低でもボールを持っていなきゃいけないよね?」
「あ、そっかあ。」
「そこでハイプレスの出番! ジェノアはSH-CF-CFのユニットでローマの3バックの前をふさいで、ボールを前進させないようにした。最後にはロングボールを蹴らせて、ボールを回収していったんだ。」
「すごい! 前半の仕返しだね。」
「まさに。方法は違うけど、目的は同じ。目的にたどり着く方法はいくらでもある。その方法を選択することこそが作戦。おもしろいよね!」

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「それでローマはまんまと同点にされちゃったね。同点にされた10分後くらいに、マヨラルに代わってクリスタンテが入ったのはどんな意味があったの? 点を取らなきゃいけないのに、CFのマヨラルを下げたのはどうして?」
「たぶん、さっき説明したヴェレトゥとペッレグリーニの横のスペースを埋めたかったんじゃないかな。実際、この交代の後は中央を攻め込まれる場面が少なくなった気がするな。でも、もしこれで追加点を取れずに試合終了だったら、監督は批難されまくりだっただろうね。ミキタリアンとペッレグリーニがとにかくキレキレだったから、そこを信じたのかもしれないね。」
「たしかに。ミキタリアンすごかったよねえ。ハットトリックでしょ? ジェコがCOVID-19に感染したから心配だったけど、ほかの選手も頼もしいね!」
「そうだね。ひさびさに強いローマが見れそう!」
「おお! じゃあ今シーズンはローマに注目しようかな笑」
「ぜひ!」
「今日はありがとう。次もよろしく!」

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