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【観劇レポ】森山開次「NINJA」

とあるダンスカンパニーに片想いし始めた数年前から私はダンスの舞台を見るようになりました。いつだったか「日本一のダンサーは森山開次である」という記事を読んで以来、この人の作品を見なければと思い続けて、ついに機会が巡ってきました。

「森山開次/NINJA」
森山開次と新国立劇場による、大人も子どもも楽しめるダンス作品第二弾。劇場に入った瞬間、いつもと客層が明らかに違うことに気づきます。一番小さな子で3歳くらいでしょうか。お父さん、お母さんに連れられ、家族ぐるみで見に来ている人の多さときたら。子連れの観劇がなかなか浸透しない日本において素敵な景色だなと思ったものの、どこまでこの子たちがちゃんと見れるのだろう、飽きてしまったりしないのだろうか、など余計な心配もしておりました。

しかし、杞憂でした。

私の近くに座っていた子は呼吸を忘れているのでは、という熱中ぶりで終始舞台を凝視していたし、騒ぎ出す子なんて皆無。そして終演後のみんなの楽しそうな顔といったら。私が甘く見ていたのは子供たちの感性か森山開次の感性かその両方か。
もちろん大人も楽しめるし、楽しい面白いばかりではなく息をのむ緊迫感や繊細な美しさも詰め込まれ、全年代がそれぞれに楽しめるというそんな作品が実現可能なのだ、という驚きをいまだに感じています。

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直前にこちらの記事を読んでいたのですが(なぜか英語。。。)

「もっとダンスを子どもたちに届けたい」
「日本文化を広めたい」
という森山開次のふたつのライフコンセプトが感じられる作品でした。

子どもたちが熱中していたことは前述のとおりですが、決してわかりやすい要素ばかりではありません。単体で体験すると大人でも眠くなってしまうような日本の伝統音楽や仕掛け、作法をうまく組み合わせて美しいながらもどこか滑稽で親しみの沸く演出にしていたこと、とても見事でした。
きっと子どもたちはこのシーンの座布団の使い方を家で真似して親に叱られるだろうな。

そして全体で約1時間半の作品でしたが、飽きさせないように途中に休憩をはさむ構成もよく考えられており、暗転した途端に
「厠のじかん」
と宣言され、舞台上にはプロジェクションマッピングにより劇場内の地図と、そこを走り回る忍者の姿と、そして厠の位置と行き方が(笑。

日本文化の側面としては、忍者というテーマはもちろん、道具の使い方が人形浄瑠璃や歌舞伎といった伝統芸能を思わせる使い方であったり、最も要素として強く感じたのが能でしたが、謡や囃子を意識した音の演出や、すり足といった踊りの要素まで、森山開次流に美しく変化されていました。
私は能のすり足は遅美しいの最たるものだと思うのですが、それを早美しいにしてしまう身体能力の高さ。45歳だそうですよ。なんて脅威。。。

雷雨の音だけにのせたラストダンスは「驚異のダンサー森山開次」の本領発揮というべきか、圧巻の一言。
雨音のみで何人ものダンサーが一糸乱れぬユニゾンをソロを、激しい感情を発しながら踊り続ける。誰もが息をのみ、見守っていたあの時間。鳥肌が立っていたことにようやく気づいたのはダンサーがお茶目な笑みを浮かべながらカーテンコールをしている最中でした。

バレエ、コンテンポラリー、新体操と高いレベルの技術を持ったダンサーとプロジェクションマッピングの合わせにより、ダンサーは重力から自由になったように見え、つまりダンサーこそが現代の忍者なのではないかというのが私なりの「NINJA」を見た結論です。

ちょっと怖そうな外見の森山開次さんですが(失礼...)とても繊細でお茶目な方でした。

この後全国巡回!!!


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