見出し画像

08 マジシャンか?ショップか?で変わるトリック

マジックの世界を眺めていると、「ほんとは、プロのマジシャンになりたいけど、とりあえず、トリックやレクチャーノートを売っている……」という人がいます。

いえ、今回はその賛否じゃありませんので、ご心配はいりません。SNSで以前つぶやいたこともありますが、僕は「トリックを売るマジシャンでも、売らないマジシャンでも、どちらでも良い」と思っています。その理由は「創作や生き方は、自由だからこそ発想が豊かになる」と考えているからです。もちろん「人に迷惑をかけなければ」の話ですが……。

ただ、この話の興味深いのは、「マジシャンは道具は売るべきじゃない」なんて熱く語っていた人が、ある日「やっぱり、売ることにしました……」なんて言ってしまうこと。あまりの手のひら返しに「手首が複雑骨折してるんじゃぁ……」と、心配になることすらあります。

1度出した言葉は引っ込みませんし、SNSならなおさらです。2000年以上も前に荘子が書いた「言葉や論にとらわれ、その本質を見失う」(「荘子」寓言 第二十七)は、マジックも同じでしょう。「マジックは語るものではなく、見せるもの」が、僕の考えでもあります。

世界中のマジシャンが愛したマジックショップ

僕が大学生だった頃、「マジックランド」というマジックショップでアルバイトをしていたことがありました。海外のマジシャンが来日すると、ほぼ必ず立ち寄る……というくらい世界中で知られ、愛されるマジックショップでした。

アルバイトの仕事は、トリックを考える……というより、商品の組み立てをしたり、商品を梱包して発送したり、そんな雑用がほとんど。それでも2〜3年ほどマジックショップを手伝わせてもらい、とても勉強になったことがあります。それは、オーナー兼、トリックを創作する、小野坂 東(おのさか とん)さんが守る、オリジナルトリックのポリシーでした。

それは……

ここから先は

4,633字 / 2画像

¥ 900

サポートはウェルカムです。いただいたサポートで、若いマジシャンとお茶を飲んだり、一緒にハンバーガーを食べるのに使わせていただこうと思っています。