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インドネシアの島めぐり10日目 バジャワ周辺の温泉(マンゲルダ、マラナゲ)へ行く

フローレス島のバジャワには2つの温泉があり、1つは北に20キロほど行ったところ、もう1つは南に20キロほど行ったところで、北はマンゲルダ温泉、南はマラナゲ温泉という。

上がマンゲルダ、下がマラナゲ

地球の歩き方にも載っている(地球の歩き方はムンゲルダ)ため、日本人観光客にはマンゲルダの方が有名なのに対し、欧米人にはマラナゲ温泉の方が人気で、わたしが一緒に行ったドイツ人も、両方行ったけどマラナゲの方が良いと言っていた。
わたしには甲乙つけ難く、いずれも最高クラスの温泉なのは間違いないと思う。


マンゲルダ温泉

宿でオジェックを手配してもらおうとしたが、クリスマスイブということもあり誰も捕まらない。
みな朝から教会にお祈りに行っているという。
バジャワは85%がカトリックで、あたりの家々から結構な音量でクリスマスソングが聞こえてくる。
日本の正月三が日みたいなものかもしれない。

仕方ないのでバイクを借りて自分で運転して行くことにした。
マンゲルダはバジャワ空港から程近いところにあるため、道も整っていて運転しやすい。
この道をそのまま北に進めば海に出て、そこはリウンという海辺の観光地だ。西洋人に人気の17 Islands Marine Parkがある。
バジャワは港のあるアイメレ、東のエンデ、北のリウンに行く道が交差する要地でもある。

温泉へ向けてのんびりとスクーターを走らせていると、色々な人たちが声をかけてくる。人懐っこい人たちだ。
温泉へ向かう道は下り坂が多く、こんな最高の景色もある。

1時間くらいかかると思っていたら、温泉近くの空港に30分で着いてしまった。
そこから5分のところに温泉の案内を見つけ、なぜかここに温泉があると思い込んだ。
今から思えばあの看板は別の温泉の場所を指し示していたと思うのだが、その時はすっかり勘違いしていた。

バイクを止めて温泉の場所を知りたいとそこにいたおばちゃんに聞いたところ、本当にあった。地図には載っていない小さい温泉があるという。
場所を聞いて行ってみたら、とんでもないレベルの温泉があった。

左手の赤い屋根のところにバイクを止める。
本当の温泉はそこから少し先を左折。
上の写真の看板の根元に道がついているので降りていく。

この大量に湧き出ている温泉が幅1メートルほどの湯川を作っている。
最初先に川を発見し、触ってみて温かいので上流に数メートル向かったらあった。

川の水と温泉が混ざってちょうど良い温度になっていると思っていたが、温泉だけで川になるくらい大量ということだ。しかも適温ときている。

誰もいないので素っ裸で入ってみる。
最高に気持ち良い。穴の奥から直径20センチほどの太く勢いのある水流が噴出しており、触ると岩の割れ目から出ていることがわかる。
舐めると酸っぱいので酸性泉だ。

この奥の底から激しく湯が噴き出ている。

天からのプレゼントとしか思えない。多分日本にこんな温泉はないであろう。

夢中で入っていたが、次の温泉が本当のマンゲルダ温泉なので、仕方なく上がり教えてくれたおばちゃんにお礼を言ってから次の温泉に向かう。

次の温泉はここから1分くらいだ。
ゲートで入場料20,000ルピア(200円)と駐車場代3,000ルピア(30円)を払い中に入る。

結構広大な敷地で、どこに温泉があるのかよくわからない。
左手に川を見ながら奥へ奥へと進み、人の声が聞こえる方に行ってみると、温泉の川が流れており何人かが足湯を楽しんでいる。その上流には川のもととなる直径10メートルほどの池があり、人が入っていた。触るとちゃんと熱い。

早速中に入り、先客に「お湯はどこから来ているんだろうか」と聞いたら、池の底を指し示し「底から出ているじゃないか、見えるだろ」というではないか。
「ほらここだろ、あとそこにも、あそこにも」といって、わたしに一番の特等席を譲ってくれた。
そこは体が浮き上がってバランスを崩すほど強烈に温泉水が噴出していた。

わかりにくいが水面が勢いで浮き上がっている。

これまで日本やインドネシアで経験してきた足下湧出泉とは別次元だ。
お湯の勢いが強過ぎて危ないもんだから、わざわざ噴出口に石を置いて水流を弱めなければならないほど勢いが良い。全くもって贅沢な話である。
ちょっと大袈裟にいえば、玉川温泉や須川温泉のボコボコにお湯が吹き出ている場所にそのまま入るようなものだ。しかもお湯は適温ときている。

またしても天はプレゼントを与えてくれたようだ。稀に見る奇跡の場所がフローレス島にあった。

わたしが褒めるものだから、インドネシア人たちは喜び、また誇らしげだ。
楽しく話していたが、彼らは「あっちにもっと大きいコラム(インドネシア語でプールの意味)があるから先に行くぞ」と言って出ていった。
わたしはしばらくの間この最高の場所を独り占めにし、それからゆっくりと彼らがもっと大きいというコラムに向かった。

どうせいつもの水色に塗ったプールだろ、なんて全く期待していなかったが、そこには大量に自然湧出した温泉を流し込んだ巨大な池があり、満々と温泉をたたえていた。
一体どれだけのお湯が湧き出ているんだとため息が出る。

穴から湧いた温泉が滝のように大量に流れ落ちる

彼らはいつしか子供のように、大騒ぎでどっちが早く泳げるか水泳大会を開催していた。酸性泉で目に染みると思うが、関係ない様子だ。
濃い酸性泉で激しい運動をするなど、湯当たりの危険が高まる。案の定何人かは疲労でぐったりしていた。

あと先考えず、常に今を全力で楽しもうとするのはフローレス島もジャワ島も変わらないようだ。

マラナゲ温泉

ホテルに戻り休みながら、どうせクリスマスイブで運転手は見つからないし、マラナゲは明日かなと思っていたら、同じホテルに泊まっているドイツ人もマラナゲ温泉に行きたいと思っていたようで、宿の主人にお願いして2人で連れて行ってもらうことになった。
1人200,000ルピア(2,000円)で手を打った。クリスマス価格で少し高くてもよしとした。

ドイツ人はギャップイヤーで2ヶ月のアジア旅行中の女子。大学卒業後、4月の入社までの時間を使って旅に出た。この前まで大学生だったとは思えないほど大人びている。若者を一人前の大人として扱う文化の違いだろう。

「なぜインドネシアにしたの?」と聞いたら、「いろいろあるけど一番は文化のギャップが大きい地域でアジアを選んだ。経済が伸びていることもある。そしてインドネシアを最初に持って来たのはバリ行きのフライトが一番安かったから。テヘ」と言っていた。

伝統村 ベナ村へ行く
彼女の希望で温泉に行く前に伝統家屋の残るベナ村に立ち寄る。主人に「駐車場で待っているから3時までに戻って来てね」といわれ、2人で村に入っていく。
入村料は1人25,000ルピアで、ガイドはいない。
観光客はわれわれ以外にいなかった。

いつもなら事前に調べておくのに、行く予定にない場所だったので何も調べておらず、建物の構造や家々の配置、祭壇と思われる場所など、家に住んでいて手作りの土産を売っている人々にインドネシア語で聞いていった。

わたしのインドネシア語の語彙の問題もさることながら、地元民も詳しいことになるとわからなくなり「最初からこうなっていたんだ。ネネックモヤン(先祖の意味)がそうしたんだ」という回答が多くなる。

ご先祖様に食べ物を捧げる祭壇

それでも面白かった。
ドイツ人は精神力の強さに定評があり、そこは地元の人の生活スペースだから入るのは遠慮した方がいいのでは?というところでもズンズン入っていく。
家々の裏手にはトイレ、豚を飼っている場所や猿(これは愛玩用だろう)を縛り付けている場所があり、裏から彼らの生活が丸見えだった。

挙げ句の果てに彼女は「ここはなんだか臭うから元の場所に戻りたい」といい出し、普通の観光者がいくところに戻った。
この前まで一緒だったフランス人女性もこんな感じだったなと懐かしい光景を見た気がした。

そして温泉に入る

温泉はベナ村からさらに20分くらい道を下ったところにある。
宿の主人に「こっちだ」と教えられた方に行くと看板があった。

そしてさらに小道を森の方に降っていくと竹製の東屋があり、着替えはその先のコンクリートの建物でする。

着替え場所

温泉はちょっ見ただけではただの川に見える。
右手から60度近い高温の湯が流れ込み、左手から普通に冷たい水温の川が流れ込み、合わさった場所が適温になるという仕組みだ。
一応石を並べて堰き止め、一定の深さを確保できるようにしている。

奥が一番熱い。一番手前でも暖かい

わたしは川に手を入れ温度を確認すると、すかさずパンツ一丁になり、だれもいない川に一番乗りした。
上流では地元のおばちゃんが洗濯しているがまあいいだろう。

お湯は酸性泉だ。酸っぱい。硫黄の香りもしている。
源泉は川そのものなのだが、熱源はこの近くにあるイネリエ山と言われている。
この山は活火山で、年に数回小さなけむりをあげる。

宿から見えるイネリエ山 コニーデ型の火山

ドイツ人女子は未明にイネリエ山の登山ツアーに出かけ10時に戻ったばかりだという。若いだけあって元気いっぱいだ。

川の位置どりによって温度差があり、合流地点で一番熱い場所、つまりはダイレクトに熱湯が流れ込む地点は肌感覚で50度近い。わたしは熱い湯と川の水を行ったり来たりしながら天然の交換浴を楽しんだ。

画面右の白く泡立っているポイントが一番熱い。

ドイツ人に交換浴の説明をしたのだが、ふーんそうなんだという無関心な反応で、ぬる湯地点から動こうとはしなかった。

そのうち上流の方から突然子供たちが数名現れ、ハロー!と元気な声で叫びながら次々に飛び込んできて、下流の方に行った。
それを潮時にわたしは上がった。素晴らしい体験だった。

欧米人がここが好きだという理由がなんとなくわかるような気がする。秘境感や自然と一体になる感じが、この温泉を彼らの国にはない特別な存在にしているのだろう。
フローレス島はこういうものだという、彼らのステレオタイプに近いのかもしれない。

小屋に戻りインドミーを注文し、来るまでの間たむろしているおじさんたち、宿の主人と話した。
緑色の液体を飲んでいるので「これは何か?」と聞いたら手作りのパームワイン(パームの醸造酒)だという。

パームは油やしとも言われ、パーム油を取る植物なので、油を取るんじゃないのか?と聞いたら、幹を傷つけ樹液を採取し発酵させるのだと言っていた。
樹液から砂糖も作れるらしい。砂糖が作れるくらいの糖度があれば、酵母が糖分を分解しアルコールに変える醗酵工程は可能だろう。

お前も飲んでみろと言われて一口飲んでみると、甘酒系の低アルコール飲料だった。泡立ち、炭酸も出ている。
運転するはずの宿の主人が、一杯だけだと言いながらご機嫌な様子でパーム酒を飲んでいたのでちょっと心配していたが、これなら大丈夫だろう。

近くに蒸留酒を作ろうとしているように見える窯があり、確認したところ果たしてそうであった。
竹で管を作り、斜め下に向かって長く管を伸ばしている。手製のアラック製造機だ。

この人たちは本当に人生を謳歌している。

この場所に来るまでも宿の主人が木に生えている果物の種類を教えてくれ、そこら中に食べ物が溢れている様子だ。温泉地にもバニラ、カシューナッツ、マンゴー、パパイアがあった。

男たちの話はいつしか「うちのガーデンでは〇〇が取れる」と自慢合戦に発展し、ガーデンってただ木が生えているだけだろと思いつつ、羨ましかった。

バンドン工科大学の留学生寮の監督もよく「俺のガーデンが、」と話しているから、帰ったらすごいガーデンがあったと話してやろう。負けず嫌いだから多分悔しがるに違いない。




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