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インドネシアの島めぐり22日目 スンバ島の伝統村を回る

スンバ島はオランダによる支配が最も遅く始まり、地理的な条件もあり、近代化が遅れた島だ。
宗教はヌサトゥンガラ州の多くの地域と同じくキリスト教徒が多く、プロテスタントが多数を占めている。
ここの島は、古来からのアニミズム信仰も維持しているところが他の地域とは違う。フローレス島もアニミズムは残っているものの、スンバ島の比ではない。
キリスト教は布教のため、地域の人々が信じている神も柔軟に受け入れながら溶け込んでいくことがあり、その方針が幸いしたのだろう。イスラムならこうはいかなかったはずだ。

伝統的な暮らしを見たいのであればスンバ島の西へ行くといいと言われていたので、今回はちゃんと見ようと思っていた。
東部から西部へ向かう車窓から見える家々は、伝統的なトンガリ屋根の家や、テーブルのような形をした墓がたくさんあり、これまで訪ねた場所とは全く違っていた。
これまでは、特別に保護されたエリアだけで維持されていて、どちらかといえば頑張って無理に伝統的な暮らしをしているんじゃないかと思えた。

ところが、西部スンダは便利な暮らしをまだ知らないのか、本気でこの形の家が気に入っているのか、普段暮らしが伝統家屋で行われているように見える。それもあって実際に村の中に入って生活ぶりを見たいと思ったのが訪問の理由だ。

今回は4つの村を訪ねた。本当は5ヶ所回ろうと思っていたのだが、正直なところ飽きてしまい、4つでやめた。
建物や生活ぶりがより現代に近いかの差はあれど、基本的な家の形、集落のありよう、住民と家畜の様子は同じだ。こういうことを言うと怒られそうだが、ヨーロッパの世界遺産に登録されている都市をいくつか回ると全部同じで飽きるのと似ている。

これはわたしだけが言っているのではなく、バックパッカー達の間で伝えられてきた各地をひとことで言い表す有名な一文で、ヨーロッパは「何もないのがヨーロッパ」と言われている。見どころが多いようで、実は退屈してくることを言い表している。
ちなみにアジアは「歴史のアジア」だ。

1.ボド・エデ村

タルン村という中心地から1キロちょっとのところにある有名な村に行く途中、丘の上に茅葺きのトンガリ屋根が見えた。
看板はないが、多分たくさんある集落の一つで、有名じゃない方が面白そうだと思い寄ってみた。

スンバ島に限らず、伝統集落はたいてい小高い見晴らしの良い丘の上にあり、急坂や階段を登っていく。この集落も同じだった。
犬が吠えかかってくる。

犬が吠えるのはスンバ以外ではほとんどなかった。スンバではいまだに番犬としての役割を負っているのかもしれない。

家々の間を縫ってうろうろしてみる。挨拶はしてもらえるが、ものを売りつけてくるわけでもなく、じっと見られている感じだ。
生活インフラとしては、ガス以外は揃っているようだった。
水は昔から確保できていただろう。電気は太陽光パネルを設置していた。
パラボラアンテナがあり、テレビを見るためだと言っていた。
炊事洗濯は手作業でも、テレビやスマホは欠かせないのだろう。わたしは時間はたっぷりあるから時間節減のための投資は割に合わず、時間潰しへの投資は割に合うのだろうと予想した。

2.タルン村

ここは有名なだけに観光地の要素も一部あった。ものを売ってくる家が2軒だけあった。
それと知的レベルもそれなりに高く、日本の地震について聞かれた。新聞で読んだそうだ。インドネシアも地震大国なので、地震の知識はそれなりにあり、マグネチュードはどの程度かという会話が普通に成り立つ。
こも村でもそうだった。
わたしはメールやSNSでインドネシアの知人から地震についての励ましを受けたものの、旅行先で地震の話題になったのはこの村が最初だ。

タルン村の茅葺トンガリ屋根の集積度は高く、迫力がありインスタ映えもしそうだ。

3.プライ・イジン村

ここも有名な場所だ。
ここは入場料を取る。55,000ルピア(550円)
スンバ島では初めてだったが、全く問題なくもっととっても良いと思っている。

ここも急坂を登った見晴らしの良い場所にある。
戦争が激しかったと聞いているので、邪馬台国の頃の環濠集落と同じコンセプトで防御の要素があったと想像している。
そしてここの犬もよく吠える。

4.パスンガ村

ここはワイカブバックの町から20キロ弱と離れている。
町の近くにいくらでもあるのになぜここに来たかというと、車で来る途中に見え、町中に突如トンガリ屋根の集落が現れ興味を持ったからだ。
これだけ町の中心にあるのに、なぜ昔のままのスタイル維持しているのか、気になった。

コンクリートとブロックを使いながら、建築スタイルは昔のまま。

5.スンバ島の魅力

明日のフライトでこの島を出ることになったので、この島の独特な魅力について最後語ってみたい。
一番は、昔の暮らしが田舎だけでなく町中にも残っていて、目にする機会が多い点だ。これは今後世代が変わっていくと失われるかもしれないので、興味のある方は早めに訪れた方がいいだろう。

具体的にいくつか例を挙げてみる。

ものを頭に乗せて運ぶ人が多い。
インドネシアでは見られる光景なので、スンダだけではないだろうというご意見もあると思うが、頭で運ぶ率が高い。
子供から年寄りまで、行商人だけでなく一般人が買い物帰りに頭に乗せて運んでいる。

刀を指している人が多い。
たまたま葬式があったから正装をしている人が多く、帯刀している可能性はある。それでも、じゃあジャワで正装する時にクリスを身につけるかといえば付けないだろう。少なくともわたしは古い写真でしか見たことはないし、小説「ガルーダ商人」の記載でホテルインドネシア建設時にクリスを身から外させるのに苦労した話を見たくらいだ。

ここでは正装でなくても刀を持ち歩いている。運転手は車に刀を入れているし、ホテルのフロントの机の上にも無造作に刀が置かれている。

わたしはこっそりどんな刀か見てみたが、幅の広いカッターのような代物で、攻撃力は低そうだった。おそらく悪霊や呪いから守る目的と思われる。昔のジャワと同じだ。

家の形が昔のままのトンガリ屋根
古い家ならわかるのだが、新しく建てた家でもトンガリ屋根にする。しかもご丁寧に柱にねずみ返しをつけている。
もしかしたら収納に便利な可能性もある。家の間取りが変わりすぎるのも暮らしづらいだろう。
わたしはこれもアニミズム系の背景があると思っている。ネットで見た情報で、高い屋根には先祖の精霊が住み付き、家を守ってくれると言われているようだ。

お墓が独特な形状のまま維持されている
キリスト教になってもお墓の形は昔のままだ。

何も調べずに言っているだけなので間違っている可能性があるが、わたしは墓の上に大きな石で蓋をするのは死者を甦らせないためじゃないかと思っている。
フローレス島は、テーブル状の岩を上に被せるスタイルは同じでも厚みや大きさは全然違う。

話に祟り系や呪いのような話が混じる。
ジャワでも黒魔術があるので、スンバだけではないが、わたしが車で西部に移動するだけでも、運転手がこの手の話をいくつかしていた。
わたしのインドネシア語能力のせいで、理解できなかったのは残念だ。
例えば、車で犬を轢きそうになった時、エンガチョみたいなことをしていて、単語がわからなかったのだが、犬を引くと祟りがあるみたいなことを言っていた。
迷信的なものも多そうだった。

こういうことを今も信じているのかと思うと、他人事ながら謎めいた人達に見えてきて、得体の知れない魅力が出てくる。
わたしはバリの中でもウブドが大好きで、ウブドにも精霊系の話が多いし、やはり精霊の雰囲気が強まるのは、夜が暗い時だ。わたしには真っ暗闇がある地区は魅力的に見える。

海は最高に綺麗らしい
人が少ないから当然だろう。今回海にはいかずじまいだったので確認できていない。
海辺には高級リゾートホテルができている。

人々は純朴
特に西で感じた。スンバ島は東の方が開けており、貿易港のおかげで産業が発達している。西部は農業と牧畜が中心なので、昔ながらの雰囲気は西部の方があるように感じた。
伝統村がいたるところにあり、もはや伝統村と区別しなくてもいいんじゃないかというレベルだ。普通にその家で自然に何不自由なく暮らしているのを見ると、そのように思えてくる。

明日はバリのデンパサール経由でスラウェシ島のマカッサルまで入る。





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