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インドネシアの大学生がキャンパスにほしい施設は?【アンケート結果】

バンドン工科大学にはバンドン中心部にあるメインキャンパスに加え、学部の1,2年が通うジャティナゴールキャンパス、おもにビジネス中心のジャカルタキャンパス、分校のあるチレボンキャンパスがあります。

今回マーケティングの授業の一環でジャティナゴールキャンパスの学生たちとインタビューをしたりアンケートを集めたので、内容について記載したいと思います。


ジャティナゴールキャンパスって何?どこにあるの?

できて数年のキャンパスです。
バンドンは大学が集積しており学生の町として有名ですが、一方で大学がたくさんあることで市の発展のスペースが限られたり、交通渋滞が起きたりする問題も出てきています。

そのためインドネシア政府としては、なるべく郊外に出ていってほしいと考え様々な優遇策を打ち出しています。

まず出て行ったのがUniversity Padjadjaran(通称UNPAD)。トップ10に入る名門の国立大学です。続いてIPDN(官僚養成の大学)、Ikopin、ITBもキャンパスを作りました。下の地図を見てもらうと、集積度がわかりますよね。

バンドンの東20キロ

日本の感覚だと都市部に大学があるなんて普通の話で、なんで迷惑がられなきゃいけないんだと思われるんじゃないでしょうか。
むしろ報道を見ていると、日本では大学の都心回帰が目立つ状況です。

インドネシアは公共交通機関が未発達のため、学生も教授もみな車かバイクで通学します。そのせいで通学、帰宅渋滞が発生します。
また、卒業式などイベントがあると悲惨です。一族郎党が卒業式に参加しようと車でかけつけるため、車がまったく動かない事態になります。

ただでさえ土日はジャカルタからの観光客が押し寄せ渋滞しがち(日本だと鎌倉を想像いただければ)なので、輪をかけて混雑します。

なので、インドネシア政府とバンドン市としては、これ以上学生を増やしたくないと考えているわけです。

バンドン工科大学(ITB)のジャティナゴールキャンパスには7,000人の学生がおり、さらに2025年からはすべての学部の1,2年生はジャティナゴールキャンパスに行くことになったため、5,000人が追加され、13,000人体制になります。
急激に人が増えるので、すべてが足りない状況で、①住居②クリーニング③食堂④コンビニ/本屋の4つのニーズを深堀りすることになり、MBAの授業の題材になりました。

ジャティナゴールキャンパスの学生はソンボンらしい

ソンボンというのは、日本語だと傲慢とか上から目線という意味になります。英語だとSnobとかarrogantとかですかね。
アンケートを取ろうと学生に声をかけるのですが、感じが悪い学生が多く、MBAの学生たちが「やつらは何様なんだ」みたいな感じでソンボンだと言っていました。
クラスメートの分析によれば、勉強ができてちやほやされてきて、自分はすごい、特別だ、とでも思っているのではとのことでした。17歳、18歳の若者たちなので、たしかに勘違いしてもおかしくはありません。
ただ、わたしにはソンボンというよりは、理系特有のコミュニケーション下手がソンボンに見せているだけに思えました。

わたしは見た目からして高齢ですし、加えて外国人のため、幸いみんなほどひどい扱いは受けません。
クラスメイトによれば、インドネシア人は外国人が大好きで、外国人と英語で話してみたいと思っているそうなのです。

そのため「Makotoがいけば断られないから行ってくれ」と言われ、声がけしてました。
ただ、インドネシア語ができないので、インタビューのときはチームメイトの横に黙って座って、適当に相槌を打っているだけです。
最後に「この人は日本人だ」と紹介されスマイルという感じです。

ジャティナゴールは暑い

バンドンに比べると非常に暑く、ジャカルタを思い起こさせました。
バンドンに近いのになぜこんなに暑いんだと聞いたら、「何よりも乾燥しているのが原因、そのうえバンドンより標高も低い」という返答でした。
たしかにバンドンでは大雨で大渋滞だというのに、ジャティナゴールはかんかん照りでした。

150人のアンケート結果が集まるまでは帰れないというので、激暑のなか朝から15時くらいまでずっとやってました。
わたしのチーム5名だけで集める必要はなく、4チームでやるからすぐだろうと思ったら全然です。午前が終わったところで70人でした。

おそらくほぼ戦力になっていないチームがいたと思いますね。「ここは暑いな」なんていいながらだらだらしていて(ように見えた)、しょうがねえなと思っていました。
インドネシア人はおしゃべり好き、かつフリーライドへの抵抗感が低めな国民性ですから、エリートのITBの学生といえども日本人から見れば大差ありません。声掛けしないでだらだらおしゃべりしているように見えるのです。

日本人だと、少なくともわたしがこれまで属してきた組織の人たちは学校も会社も含め、みな勝手に工夫しながらPDCAサイクルを回して、いかに効率性を高めるか競い合うようにタスクをこなす文化でした。

インドネシアだとどうでしょうね、日本人並みの勤勉性がある学生は感覚的に3割くらいです。ITBでこれですから、インドネシア人全体だと1割切るんじゃないでしょうか。なお、女性の勤勉性は男性より高い傾向にあると感じます。

14時近くになってもういいかげんお腹もすいてきたしバカバカしくもなってきたので、市場調査もかねて近くのショッピングモールに行こうといって、うちのチームは職場放棄して出かけてしまいました。

そして涼しいところでゆっくりごはんを食べてまったりしていたら、最後150人に達したと連絡がきて終了です。結局あとからアンケートに答えてくれた学生もいるので173名に達しました。

主なアンケート結果

男女比は女性の方が多い。
まずわたしにとって以外だったのが、女性の方が多かったことです。女性の方が真面目なのでアンケートに答える率が高かった可能性はありますが、実際キャンパスに行って見た感覚も男女比は少なくとも1対1でした。
日本だと理系は男クラ(クラスに男しかいない)とわたしの年代だと言われていましたし、いまだに女性は数学ができないというレッテル張りが横行しているというのに、インドネシアの理系最高峰の学府で女性が半分いるのは先進的です。

学生は意外に貧乏
次に驚いたのが、学生の金のなさです。
最初ジャティナゴールキャンパスに着いてざっと見てまわってみると、止まっている車がジャカルタナンバー、かつ高級車が多いことに気づきました。
インドネシアも親の収入が高い方が子供の教育費に金をかけられる現象がみられるなと思っていました。これまでも、学生はインドネシアの平均に比べ裕福と聞いていました。

ところが、アンケート結果を見ると、20%が月のお小遣い100万ルピア(9000円)、40%が100~200万ルピア(9000~18000円)です。いくら物価が安いといっても、月100万ルピアで暮らすのは相当厳しいと思います。

ちなみにわたしは週100万ルピア、月500万ルピアの予算です。
普通に朝、昼、晩を学生が食べるような安めな場所で外食すると、それだけで1日4~5万ルピア(360~450円)以上は無くなります。さらにGrabバイクにのったり、学生フィットネスに行けば、3万ルピア(270円)なくなるし、週1回は洗濯を頼みます。グループワークの打合せでみんなでカフェなんか行けば、3万、4万ルピアなくなります。
なんだかんだ平均すると1日10万ルピア(900円)は使います。30日換算だと300万ルピア(2.7万円)です。わたしはこれに旅行費用、ビール代、たまに行く日本食などで月200万ルピアが追加され月の予算500万ルピア(4.5万円)になります。

100万ルピアだと1日3万ルピアに抑えないといけないので、コンビニで買い食いするのは厳しいです。本も買えないでしょう。タバコも買えないんじゃないでしょうか。
マーケットとしてカウントできない層です。

学生が一番望んでいるのはコワーキングスペース
コワーキングスペースって何?と思われた方がたくさんいらっしゃると思うので説明しますと、グループワークや一緒にテスト勉強するとかで集まって勉強するスペースのことを指します。
キャンパスを見たらそこら中に空いているベンチがあるし、そこら中に空き教室あるぞ?どんなコワーキングスペースが必要なんだろう?って思いました。

うちのグループメンバーは「外のベンチはおしゃべりしながら食事をするところであって、コワーキングスペースじゃない」と言います。屋内で、WiFiや充電用のコンセントがあり、エアコンが効いているイメージらしいです。

「いやコワーキングスペースでもみんな食べてるし、おしゃべりしてるでしょ。」と言ったら、こいつ結構しつこいなといった感じで「食べるけどスナックをつまむ程度だ」と言っていました。

そして、なんでバンドンやジョグジャカルタといった学生の町にやたらとカフェがあるかというと、学生たちがコワーキングスペースに使うからなのだそうです。
インドネシア語でNongkrong(ノンクロン)といい、英語だとHang outです。日本語だと「だべる」が近いと思います。死語になってますかね?

このNongkrong文化がインドネシア人の隅々まで広がっており、コワーキングスペースと言いながら実際のところおしゃべりに使われています。
時にうんざりするほどのおしゃべり好き国民ですからね。この国で孤独を感じるのは至難の業だと思います。

というわけでコワーキングスペースを伴うコンビニまたは本屋を考えることになりますが、何しろ相手は学生ですから、有料にすると使われず、無駄なスペースになる可能性大です。
道をはさんで隣にあるUNPAD(パジャジャラン大学)のコワーキングスペース付きのコンビニを調査に行ったら、有料の場所は誰もおらず、無料の場所でだべってました。

勉強に使うのであれば、大学側がちゃんと用意しろよなと思います。空いている教室があれば使っていいことにするとか、いくらでもアイデア出せますけどね。

本は買わないし読まない
過去3か月で1冊も本を読んでいない学生が18%、1から3冊が64%、3冊以上が18%です。これ趣味の本の話でなくテキストも入れてますからね。
テキストさえ読んでいない学生が過半数いるんじゃないでしょうか。
理系だからかもしれないと思い、クラスメイトに聞いたら、理系だからでなく、世代的にそんなものだと言っていました。動画世代で、わからないことがあれば自分で調べないで誰かに聞こうとする傾向が強いのだそうです。

日本もこんな感じでしょうか。
学生時代に読むべき本というのはたくさんあるんですけどね。社会人になると仕事の本をたくさん読まないといけなくなるし、何より学生ならでは感性が失われています。

残念ながら本屋は成り立たなそうです。本屋で気になって手に取りそのまま買うという、あの素晴らしい体験はもうできない時代かもしれません。

われわれのチームの仮説

コンビニか本屋のニーズを探って提案するというお題をいただいており、中間報告をしました。

われわれの案は「そこにいけば必要なサービスがすべてそろうワンストップサービス」というコンセプトにしました。収益性はこれから考えます。

ベースはコンビニになりますが、インドネシアのコンビニでは必要なサービスがすべてそろうというコンセプトにはなりません。

以下の機能を追加する案にしています。
- コワーキングスペース
- プリントアウトサービス
- 豊富な文房具

プリントアウトサービスのニーズはあるのか?
インドネシアの大学は、自由に印刷できる場所がありません。大学の周りや寮の周辺にコピーやプリントアウトできる場所が複数あり、そこに行くのが普通です。
値段はコピーが1枚5,000ルピア、プリントアウトが1枚10,000ルピアです。
調べたところ、ジャティナゴールキャンパスにはコピーできるところがあるようなのですが、コワーキングスペースやコンビニにあると便利なサービスになると考えています。

インドネシアのコンビニには、日本のコンビニのような複合機は置いてないんです。これは差別化になると思います。

コンビニに文房具あるんでないの?豊富なって何?
調査の結果、学生の7割が本屋で文房具を買っていることがわかりました。コンビニで買う学生は2%にすぎません。残りはオンラインショップ(ShoppeeやTokopedia)。
活字離れの時代、本屋は収益性や将来性に難ありと考えていますが、文房具のニーズは確実にあり、コンビニではニーズを満たせていないという結果が出たので、文具の品ぞろえを豊富にすることで差別化及び集客を図るアイデアです。
あとは大学名が入った鉛筆やノートも売りたいですね。

コワーキングスペースのアイデアはこれから
たばこを吸う学生が多いので、屋外にたばこ用のスペースを設ける案が普通ですが、わたしは日本みたいにエアコンが効いたところでタバコを吸うスペースを作ったらおもしろいのではと思っています。
分煙意識も高められるし、わざわざ涼しいところでタバコを吸いに来る学生が増えて集客につながるのではと考えています。タバコを吸わない学生にも人気が出ると思います。
まあ、没になるかな。30年以上前の日本を想像してもらうと分かると思います。会議でみんなタバコを吸うので部屋が煙で真っ白になってたんですよ。
会議中にタバコが吸えないと集中できないなんて、今から考えると正気の沙汰とは思えないですね。

店ではタバコも販売したいです。わたしは今回初めて知ったのですが、イスラム教では酒だけでなく、実はタバコも禁じられているらしいです。そのためお客から注文を受けて奥の方からタバコを取り出して売るパターンが多いようです。
大学内では売っている店がないらしく、学生からタバコを売ってほしいという声が上がっていました。
禁止されているにしては、やたらと吸っている人間が多いのはなんなんでしょうね。

授業で何度か出てきた話を総合すると、インドネシアの場合、宗教的指導者はいるものの権威は低く、誰も言うことを聞かないようです。
そのためコーランの解釈や正しい行いを説明されても、その通りにせず好き勝手に自分たちの解釈で行動しているのだと思います。

昔はみなコーランにはお酒は飲んではいけないと書いておらず、酔っぱらってはいけないと書いてあると信じ切っていましたからね。
今そんなことを言うインドネシア人はいなくなりました。

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