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インドネシア人のクラスメイトから就職活動のアドバイスをもとめられる。 

就職する会社をどうやって選ぶべきか迷っているとクラスメイト2名から相次いで相談を受けました。
自分が何をしたいのか分からず確信が持てない、どうしたらよいかというものです。
やりたいことがなければ、今無理に決める必要はないです。


やりたいことが決まっていないときに、どうやって仕事を選べばよいか

バンドン工科大学のMBAに通っている学生ですから、えり好みしなければ仕事は見つかると思います。そこが逆に彼らを悩ませているのかもしれません。
選択肢が多すぎるのでしょう。
今の日本の大学生も売り手市場ですから同じかもしれないですね。

わたしはまずは聞いてみました。人によって選び方は変わってきますから、その人がどういう考えの持ち主かを知ることからスタートです。

(1)仕事に求めるのは報酬、成長、どちらか

わたしのアドバイスを求めてきた学生は2名とも報酬と答えました。
じゃあ、給料が高い仕事を選ぶのがいいよねとなりました。
ここで成長と答えない人は、わたしの偏見かもしれませんが、仕事はなるべくストレスがかからず、勤務時間も短めで、つぶれない会社がいいと思っていることが多いです。
そこで、その確認に行きます。

(2)安定した会社、成長している会社もしくは仕事ができなければ追い出される会社、どっちがいい?

やはり二人とも安定した会社と言ってきました。
現実は、給料が高い会社はハードワークを求められ、アップorアウト、つまり昇進しなければ首、という組織風土の会社が多いです。投資銀行、コンサルティング業界とかですね。

そこで、本当に給料が高い会社ではなく、そこそこお給料がもらえて仕事は楽がいいということかな?と聞くと、それはそうなんだけどと言いながら、いまいち自信が持てていない感じです。

たぶん、現実的ではないと思いながら仕事が楽で高い給与の会社がどこかにあるんじゃないかとか、自分の考えが浅はかで間違えているんじゃないか、と思っているような気がします。想像ですけどね。

楽で給料が高い仕事を求める人というのは、元本保証で利回りが高い金融商品があると聞いて騙されちゃう人に近いです。言っていることがおかしい、理屈に合わないと気付かないんです。

そこで、1つの考え方として仕事を選ぶときのわたしの基準を説明しました。

(A)仕事は目先の給与より成長の余地で選ぶのがよい。成長する産業、会社を探してください。

成長する産業、成長する組織の何がよいのか、羅列していきます。
① 成長する産業にいると利益が出やすい
なぜそうなるかといえば、競争があまり激しくなく価格競争になりにくいからです。
市場のパイがどんどん大きくなっていきますので、いかにパイを先に取るかの勝負になりますし、はっきり言ってしまえば会社の能力や努力はあまり関係なく勝手に大きくなります。
わたしはVC時代に成長する市場か、市場規模は大きいかを最も重視していました。経営力がいまいちでも成長するからです。

② 結果として給料は上がっていきやすい
給与の源泉は利益です。儲かっている会社の給料は儲かっていない会社の給料よりも高いです。ただ、給料というのは下方硬直性がある(落ちない:
downward rigidity)ため経営者も用心して少しずつしか上げてくれません。
そこは覚悟してください。

③ 成長する産業で成長する企業は組織が大きくなる
売り上げが伸びたり生産が伸びれば、人出不足になるのでどんどん人を採用します。
部や課の部員がどんどん増えていくことになり、管理者も不足気味になります。
あたらしい地域に進出するので、地方の支店、海外拠点もどんどんできます。分社化したり新設したりで関係会社もたくさんできます。
日本の古い会社なんて後輩が入って来ないから、何年間も新人扱いされてしまいます。

④ 組織が大きくなる=新しい部署ができる=ポジションが空きやすい。結果として自分も背伸びしながら成長できる。
部や課はある程度の規模になると分かれます。そうじゃないとコントロールできないですから、適正規模があるんです。
あたらしい拠点は拠点長が必要です。新しい子会社もそうです。どんなに小さくても同じように組織は必要になります。
そうなるとどうなるか。並みのレベルの人間でもチャンスをもらいやすくなります。自分の能力以上の仕事がもらえるということです。
伝統的な会社で上が詰まっているとなかなかポジションは空かず、年功序列になりがちです。

⑤ 若いうちに責任ある仕事を任せてもらいやすい=キャリアを積みやすい
わたしが拠点長になったのは32歳のときです。
32歳でインドネシアの代表ですよ。人数的には少数でしたけど。
経験や能力からいって正直不安だなと今から見れば思いますが、当時はやってやるぞとしか思わなかったし、周りを見てもそれが当たり前の状況だったため、全く違和感も不安も感じませんでした。
行くと些細なことから大変なことまで、決めないといけないことだらけで、決めた以上は責任も発生するので緊張します。あと、自分でも方針がブレブレだなと感じることも多かったです。その日の体調や、別のプロジェクトや経営状況に引っ張られ、強気になったり弱気になったりどうしてもするんです。
その結果、失敗したーと落ち込むことが何度もありましたり、あんなことしなければよかった、言わなきゃよかったということの繰り返しです。
若い時からそんな経験をさせてもらえるのは貴重です。

⑥ キャリアを元により高い給与の仕事に移りやすい
わたしは転職より起業を考えていたので、どうやったら転職できるキャリアを積めるかは考えていませんでしたが、結果としておもしろいキャリアになっていました。
ベンチャーキャピタルという業界を選んだのがよかったのかもしれませんが、他にも当時伸びている会社はたくさんありました。

(B)成長している会社の選び方

新聞やニュースを読んでいれば、伸びている産業、伸びそうな産業は分かると思います。今ならAIとか、再生エネルギーとか、新しい働き方や新しい価値観の社会になったときに消費や生活スタイルはどう変わるのか考えるのです。

それは難しいし確信が持てないという場合があると思います。
そういう時は上場している会社であればアニュアルレポートや決算書を見てください。

成長している会社の財務諸表の特徴をざっくりと言います。産業によってはこうならない成長企業もありますが、典型的な例を示しているとご理解ください。
① 減価償却以上の投資を続けているため、固定資産がどんどん大きくなっている。
② 投資を賄うため、借入を増やしている、あるいは増資を繰り返している。
③ 従業員数がどんどん増えている。
④ 配当をしていない。全部成長投資に回してしまう。
⑤ 経営者が若い。
⑥ 従業員の平均年齢が若い。
⑦ M&Aをしながら規模を拡大していっている(これは必須項目ではないです。拡大方法の一つとご理解ください)
⑧ 海外展開しているもしくは志向している。(これも業種によりますが、日本市場だけで成長を続けることはますます難しい時代になるはずです)
 
成長していたとしても財務的に危ない会社に入るべきではありません。短期的に危ないのは問題ありませんが、安定的に悪いのは止めた方がよいです。
わたしが重視する財務的に良い会社は以下になります(これも産業によって当てはまらない会社がありますので典型例とご理解ください)
① ROEは二けた、できれば20%近くは欲しい。
② Gross margin(粗利益)またはMarginal profit(限界利益)は30%は欲しい。
③ ①と同じことを言っていることになりますが、Asset turnoverが大きい(総資産の何倍の売り上げがあるか)。

利益率が高い商売で資産をたくさん回転させると、資産効率が高まりROA、ROEは自然と高くなります。

是非あまり知られていない、人気がない優良企業を発見してほしいです。もしそうやって自力でお宝企業を探しだし、なぜこの会社が良いと思ったのかとうとうと説明したらMBAの卒業生らしいなと思ってもらえるでしょう。

うまくいっていない会社や、赤字のスタートアップで働くのも別の良さがありますが、新入社員であれば最初は優良企業に行くのが無難だと思います。

(3)楽で給料が高い会社はあるが、とても危険

仕事が楽なのに給料が高いという矛盾した状況があるとすれば、それは規制に守られて競争がないからです。
あるいは、誰にも気づかれずにひっそりと儲けている会社もあるかもしれません。

あと大企業は給料は高いです。日産の下請けいじめが問題になっていましたが、ゼネコン、広告代理店、SIer、全部同じ構造です。下請けをたたいて搾取しているに近い状況です。だから利益が出て高い給料が払えるのです。
わたしはこんなことはいつまでも続かないと思っていますので、大企業にいれば安心だなどと決して思わない方がいいです。

あるいは、会社のビジネスモデルがうまくいっていて、そのおこぼれに預かれる可能性はあります。これも長く続かない可能性が高いです。必ず競争相手が現れて競争が激化します。

新卒で入った会社が定年退職まで優良企業であり続ける可能性は限りなくゼロに近いということを理解すべきです。「会社の寿命」という本が昔ありましたが、今読んでも全く色あせない本なので読むことをお勧めします。中古で安く手に入ります。
その本によれば会社の寿命は30年です。

30年で倒産するような可能性はそこまで高くはないと思いますが、給料がずっと世の中より高いままということはなく、仕事が楽ということもなく、その立場を失う可能性が高いということです。

そうなると楽してきた分悲劇です。楽して高い給料をもらっていた社員は、言ってみれば金持ちの道楽息子です。世間の荒波を知らないので溺れ死ぬ可能性すらあります。

自分の仕事への貢献に対して給料が低すぎる、転職すればもっと上がる、という状態が健全です。貢献より給料が高い、転職したら給与が下がる人は、首になる可能性が高まっています。

まとめ

‐ 楽で給料の高い会社を求めるのはとても危険。
‐ 最初に入る会社は成長している会社がよい。
‐ なぜなら、よりよいキャリアを積める可能性が高いから。
‐ 有名ではないが成長しているお宝企業を探すのがベスト。









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