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"自分も気づかずバカになっている" 堀江貴文・西野亮廣「バカとつき合うな」

読書メモ#14です。ネット界隈(というくくりがもはやちょっとクサイですが)をブイブイ言わせている二人の共著を読んで個人的に心に残った部分を書き残します。

「バカと付き合うな」のタイトル通り、本の中では堀江さんと西野さんの二人が交互に「世の中にはこういうバカがいるよね」というトピックを上げながら、それらのバカを通して現代社会の中でどう生き抜いていけば良いのか、と言ったことが二人それぞれの視点で語られている本になります。
きっと読めば誰でも自分に当てはまるようなバカについて言及されていて、知らず知らずのうちにバカになっていることに気付かされるのではないかと思います。(自分もグサグサきました)
単元ごとの区切りのテンポがよく、サクサク楽しく読める本でした。

こう書くと対談形式の本のようにも見えますが、本書の中では二人の対談や意見のキャッチボールなどはほぼなく、一つのテーマに対して二人がそれぞれ考えを書いたような体裁を取っており、一冊で堀江さんと西野さんの本を別々に読んだような感覚を得られる本です。

そして最後は著者同士がお互いがいかに「バカ」であるかを考察しあい、最終的には「かしこいバカこそが現代における最強の生存戦略である」という結論にいきつく、と言った本になります。

ただその「かしこいバカ」がどのようなものであるかについては西野さんや堀江さんの活動を見ていれば分かるような部分であるため、このnoteではあまり書かないかもしれません。

その前段にある堀江さん西野さんが語る「バカの例」が面白かったのでいくつか個人的に心に残ったバカを書いていきたいと思います。


人と同じことをやって損をし続けるバカ

人を出し抜くため、人と差をつけるためには何かしら人と違うことをしなくてはなりません。誰でも知っているはずなのに、世の中はみんなと同じことを無意識的にしてしまう人たちで溢れかえっています。

西野さんは芸人としてデビューして以来徹底して人と違うことをしてきました。デビューと同時に賞レースを総なめにしたことで知られるキングコングですが、芸人としてデビューした当時は、芸人の先輩たちは皆ダウンタウンの生み出した大喜利的なスタイルを踏襲した漫才に傾倒していたと言います。また、賞レースの審査員たちも自然とそのような漫才を評価してしまう傾向があったそうです。

しかし家族に1年で結果を出すという条件付きで芸人となった西野さんは、先輩芸人たちのその傾向をいち早く見抜き、ダウンタウンとは真逆の高速で細かいボケを打ち続けるというスタイルを打ち出しました。それによってキングコングは他の芸人たちの中で目立つ存在となり、賞レースを総なめにすることができたと言います。

このような経験から、西野さんは人と違うことをして得した経験しかないと語ります。そのためなにかの判断をするときは脊髄反射的に周りとは異なる打ち手を決断できるのだと言います。


人と違う道を進む自分を支えてくれるのは「ロジック」

そんな自分の信じた道を進み続ける孤独な西野さんを支えていたのは徹底的に突き詰めて考え抜いたロジックだったと言います。周りの人とは違うことをやっていたとしても、自分の中で理屈が通っているのであれば自分の道を信じ抜くことができる。

例えばダウンタウンスタイルの漫才をやめたときも、他の人と同じスタイルでやっていたらコンテストに5組出ていたら勝てる確率は1/5になってしまう。
しかし、他と全く別のスタイルを打ち出したことでもともと1/5だった勝負もスタイルの違いで言えば4組vs1組の戦いとなり、勝負は「どちらのスタイルが良いのか」という観点へ持っていくことができ、結果勝率を1/2にすることができると考えたと言います。

そのようにきちんと自分で考え抜いたロジックこそが、他と違う道を歩む自分の一番の味方となってくれたと語っていました。


天才になりたければ天才にならざるを得ない環境を作る

これも西野さんの主張ですが、偉業を成し遂げるためには、そうならざるを得ない環境を先に作ってしまうほうが良いと言います。

例えば西野さんは映画でディズニーの興行収入を超えることを宣言しています。これも先にそうならざるを得ない環境を自分から作ってしまって、そこに自分の技術や才能を追いつかせるために意図的にやっているものだそうです。

西野さん曰く極端な才能は極端な環境がもたらすものだと言います。
天才になる必要がある環境に人を追い込まない限り才能は開花しないと言います。

この考え方は転職を考える人の心理や、企業のマネジメントにも通じるもののような気がします。とにかく環境が先で、才能の有無は後という生き方は非常に考えさせられるものがありました。


活き活きと使い古された直球を投げるアマチュアの強さ

これも西野さんの主張で「新しさばかりを追求するバカ」という項に書かれています。今の時代、プロが作るものが必ずしもアマチュアより優れているとは限らない、とい言います。

プロはそれを専業で長くやっているがゆえの弱点があるといいます。それはズバリ創作への飽き
作曲家を例としてあげていますが、例えばプロの作曲家は1日1曲作るというのを10年続けている人は確かに技術面ではアマチュアを凌駕するものがあるのは間違いないですが、本人はもう曲を作ることに飽き飽きしてしまっている。なので直球ではない変化球を投げがちになってしまうと西野さんは分析しています。

対して「曲を作りたい!」という初期衝動でガッと作りきってしまうアマチュアの作品には、多少荒があれど力がこもっていると言います。

そんな変化球、新鮮味の誘惑は西野さん自身にもあったそうです。
2作目の絵本を書き始めたときにちょっとでも気を抜くと新しいことを始めそうになってしまう自分がいたと語っています。

しかしその「新しいこと」はあくまで自分の中の話であって、それを知らない受け取る側が求めているものと合致しているとは限りません。

人の心を掴むのはアマチュアのド直球。本当のプロフェッショナリズムは新鮮味の誘惑に負けずひたすら王道を貫き通すことだ、と西野さんは締めくくりました。

現在公開されている西野さんの「映画えんとつ町のプペル」は本人も公言していますがまさしく王道。それゆえに内容が薄いとか、情緒的な感情の機微の表現がないなどの批判もあったりしますが、これが彼なりのプロフェッショナリズムなのだと思うとあの作品の見え方もまたグッと深まる気がしています。


人間関係は拡げるものじゃなく拡がるもの

気づいたら西野さんの項ばかりを取り上げていたので最後に堀江さんのも取り上げます。ここでのバカは「孤独を怖がるバカ」。

堀江さんは自分から人間関係を拡げようとしたことがないと断言します(本当でしょうか、)

人間関係は自分がやりたいことをやっているうちに自然と拡がってきたと言い、人間関係とはそういう中で自然と出来てくるものなのだと言います。
つまり堀江さんのよく言う言葉で表現するならば「他人の時間」ではなく「自分の時間」で生きている人の周りに人が集まってくると。

会社を退職して自由な時間が多くなるとそれまで仲が良かったと思っていた同僚などとの付き合いもなくなり孤独になってしまう人が多くいるそうです。しかしそれは堀江さん的に言えば会社という枠組みの中で他人の時間を生きてきたからだ、と言います。堀江さんや西野さんのように自分の時間で自分のやりたいことを全力で取り組めば、本当の意味での仲間、人間関係が築けるのだと言います。

少し抽象度が高い気がするので自分の解釈も加えるなら、人間関係を築くには自分のやりたいことをやる中で、しっかりと自分の考えを持ち、それを周りに発信(発言)していくことが大切なのだと感じました。
自分のスタンスがはっきりしている人にはときには批判もあるでしょうが、それと同時に思いを同じくする仲間も集まるはずです。

「他人の時間を生きている」というのはおそらくそれらがないまま生きている人のこと。自分のスタンスがないから、非難も称賛もされず、表面的な人間関係に終わってしまう。

そうならないためにも、孤独を恐れないためにも自分のスタンスを持ちながら、それを発信していくことが必要なのだということを伝えているように感じました。


感想:バカでも考え続け、やり直し続ける

この本の中では様々なバカが語られていますが、ところどころこれを書いている本人たちも「かつては自分もそうだった」と書いていたりします。

つまり、どこかのタイミングでバカな自分を自覚して修正してきたということだと思います。

ここで語られるバカ像はどれも無自覚に楽な道を選んでいる、という部分で共通している気がします。人と同じことをしてしまうのも、受け手のことを考えずに自分の中での新鮮味を追い求めてしまうのも、自分のスタンスを貫かず相手の時間を生きてしまうのも、結局は考えることを放棄して無自覚に感情的安心を求める生き方をしている人のように思えます。

西野さんの言葉の繰り返しになりますが、周りに流されるではなく、常に自分の頭で考え抜いたロジックをベースに生き続けなければならないのだと考えました。そしてきっとそのような人には堀江さんの言うような本当の人間関係が形成されるのだと思います。

発売当初ちょっとミーハーなタイトル(同時期に似たタイトルのベストセラー本がありました)に食わず嫌いをしていた本だったのですが、様々な学びを得ることができました。
何より本のテンポがいいのでサクサク楽しくあっという間に読み進められます。自粛期間中の読書におすすめしたい一冊でした。


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