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「簡単にメキシコは危ないって言うな」と言われた話。

メキシコって、麻薬カルテルの闘争のイメージがあって。でも、そもそもの街(メキシコシティ)の危険度は他の都市と恐らく同程度だと私は思っているんです。それでも、メキシコにいると話すと「え、大丈夫なの?メキシコって。」とか「すごい残虐な輩がいるんでしょ。」とか言われることがある。

肌感覚としては、半分合ってて半分間違っている。ニュースを見れば、確かに残虐な報道もされているし、毎日のようにどこかで「え!これ、日本だったら連日大騒ぎだよね。」というものが流れてくる。

でも、実際何か経験したか?と問われると、私自身は何もない。まぁこれは、コロナで外出の機会がほぼ無くなったことや、普段から結構慎重に行動しているから、というのも要因かもしれないけれど。

そんな中、先日メキシコ人の彼と話していて、どうにもやりきれなさを感じた話題がある。それは、麻薬を製造・輸送・密売するのは、現状としてどうしようもない事なんだよ、という話。

できれば海外の国々の現状や歴史に詳しい方や0→1を考えるのが得意な方とディスカッションしたいくらいの心情でいる。

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麻薬カルテルのNetflixを観て。

今、これを観ているんです。その名もNARCOS。メキシコ最初のカルテルの話です。

少し前には、NARCOSメキシコ編も観たんですよ。どうやって、NARCOSというカルテルが出来たのか、トップに君臨したゴッドファーザーはどのように警察の手に落ちたのか、など。

何も知らない私には勉強にもなるし、単純に日本にはないカルテルという存在が興味深くもあって、日課のように観まくりました。そして、続編にも手を出したわけです。

話の大枠としては、NARCOSがどんな組織で何をやっているのかということや、コロンビアやアメリカなど近隣国との関わり、アメリカのDEA(麻薬取締局)の捜査などが中心です。

そしてNARCOS第二話を観終わったあと、メキシコ人の彼に言われました。

「Netflixとしては面白いかもしれないけど、なんか微妙だよね」と。彼曰く、この手のストーリーは、アメリカの捜査官がヒーローのように扱われるのが、どうにも納得いかないそう。

ついでに、アメリカの政府も嫌い。どの大統領になってもそれは同じ。さらに言うなら、中国もイギリスもカナダも、もしかしたら日本も、大体どこの政府も嫌い。勿論、一般人はそれぞれだから、普通に好きだけどね、と。(あくまで「政府」です。国自体に魅力は感じているし、その国の人々は関係ない。)

理由を聞くと、こう言われました。

確かにカルテルは暴力的だし、事件も沢山起こしている。でも、それがひとつの産業となって商売が成り立っているのは何でなのか?って言ったら、アメリカ人を中心に、外国人が高く買うからだよ。
じゃあ、買えなくさせて麻薬の流通を完全にストップして、カルテルを封じ込めればいいか?と言ったらそういう簡単な問題でもない。君は日本人だから想像出来ないかもしれないけれど、ラテンアメリカの国々はすごく貧しい。明日食べる物を心配する家族が沢山いるんだ。そういう人たちも、麻薬の製造や輸送、密売に関わってる。
誰が彼らを助けるの?カルテルは、決して称賛するようなものではないけれど、もはや産業なんだよ。そんな現状から目を背けて、「自国の国民を守るため」とか綺麗事を並べて「メキシコが悪い。ラテンアメリカは危険。」とか非難してくる他国の政府が最低だと思う。

大体こんな感じのことを言われました。(スペイン語と英語でやりとりしていたので、聞き逃しは多少あると思うけれど。)

最初私は、「確かにそうかもね。でもだからこそ、メキシコや他のラテンアメリカの国々は自国を強くしたほうが良いよね。」と答えたんです。

でも、それにも

「そうなったら良いかもね。でも、どうやって?もうずっと変わってない現状なんだよ。誰がどうやって変えていくの?」と。

政府が中心となるしかないよね。そして産業を増やして雇用を安定させて、、、とか言葉を返していたけれど、途中で私は口をつぐみました。

え、なんか私、教科書みたいな話してない?机上の空論的な。確かに政府が率先して改革して、この国の経済力を強くして……って間違ってない気がするけれど、理想論じゃない?

恥ずかしくなったんです。なんかメチャクチャ薄っぺらいこと話してるな、と気付いてしまって。

多分、現状を変えようとした人はこれまでも沢山いて。でも、そもそも国民の40%が貧困と言われるメキシコ。近隣国では、メキシコより貧困率が高いところもある。教育水準も低いし、路上生活者は沢山いるし、麻薬関係の仕事のほうが家族をちゃんと養っていけると考える人もいる。

おそらく、日本で生まれ育った私には想像できないような歴史と現状があって、その中で生き抜いてきたメキシコ人たちは、そう簡単に希望を持てなくなっている。

いつも陽気で悩み事なんて無さそうなイメージも確かにあったけれど、それについても「確かに国民性もあるかもしれないけれど、ベースには、明日もちゃんと食べて生きられるかわからないんだから、だったら今日を思いっきり楽しもう、という感情があるんだよ」と別のメキシコ人に言われたことがあった。

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麻薬カルテルは、もともとメキシコ北部に拠点がある。それは、アメリカとの距離が近かったり、大麻を育てやすい環境があったりするから。だから、私のいるメキシコシティではカルテルの大規模な抗争はない。(これまではあったかもしれないけれど、私が住み始めて1年はなかった。)

彼に、だったら、お酒は??依存性もあるし、人を暴力的に変える事もあるし、でも、完全に合法で嗜好品でしょ?自分の身体のことなんだから、アルコールも煙草も大麻もコカインも、同じようなもんなんじゃないかな。

そう言われて、私は「こうあるべきなんじゃないか?」「いやでも、メキシコやラテンアメリカの国々について深く知らない以上、空っぽな事を言って別世界の奴だと思われたくない」とか、いろんな感情が混ざってゲームオーバーとなりました。

誰かと議論したい。できればメキシコ人の彼氏も交えて。いやでも、最初は日本人だけで。「正解」とは、「正義」とは、「国民を救う」とは。遠い世界のびっくり話だったものが、現実問題として私の前に現れた感覚。

視野を広く、想像力をMAXまで使って、非難されるのを怖がらずに。日本人だから分からないことは山積みだけど、メキシコ人じゃないから見える何かもあるんじゃないか、とまた理想的に考えたりしている今日。どうしたもんかな。

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