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モテるクラフトマンになる方法|「365日」杉窪章匡(前編)

インタビュー | CRAFTSMAN × SHIP パネリスト | 代々木公園「365日」杉窪章匡

11月23日(土)13:30から、渋谷の国連大学で開催される、食の職人によるトーク&イート・イベント「CRAFTSMAN × SHIP」公式ノートの第5回は、パネリストの杉窪章匡さんが登場です。ウルトラキッチン株式会社の代表取締役兼エグデクティブシェフとして「365日」「15℃」「ジュウニブンベーカリー」などを手がけたり、名古屋や福岡など土地にあったお店をプロデュースしたり、食の世界を盛り上げ続けています。

今回はイベントに先んじて杉窪さんが体現する「モテるクラフトマン」について語っていただきました。

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杉窪章匡が考えるクラフトマンとは?

ーー今回のイベントは「CRAFTSMAN=職人」をテーマにしています。ゲストは実際に職人の話を聞きながら、その商品を食べることができます。杉窪さんには、ぜひいつも話してくれている「モテるクラフトマン」について話してもらいたいと思っています。まずは、杉窪さんの思う職人像について教えてください。

杉窪 世間では、自分のやりたいことをやっているひとを職人だと思っている節があります。でも、輪島塗職人の家系で育った僕としては、自分のやりたいことをやっているひとを職人だとは思いません。僕が思う職人は、例えばこうです。職人は、お殿様から「こんな漆器が欲しい」と注文を受けて、それにぴったりなものを用意する。その上で、自分の経験やセンスを少しだけのせて提案するんです。自分の好きなものを作るのではなく、ニーズにあったものを作る。それが僕の考える職人です。

ーー常にユーザーファーストということですね

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杉窪 すべてが需要と供給です。たとえ供給ができても需要がなければ成立しないので、職人は自分のことは後回しです。実際に、僕の祖母が亡くなったとき、家族からは修行の身だから戻らなくていいと言われました。父が亡くなったときは、お店をオープンしたばかりだったのですが、お店とお客さんがあるのにどうしてきたんだと言われ、結局お通夜やお葬式には出ていないんです。

本気でモテろ! 商品のニーズの掴み方

ーー家族の一大事であっても、徹底したユーザーファーストを貫いてこられた姿勢に圧倒されます。では、実際に商品をつくるときには、どうやってユーザーが求めるものを見定めていますか。

杉窪 僕は一切「お客さんの声」を聞かないんですよ。先ほどのお殿様の例でいえば、お殿様はこれまでに沢山いいものを見て使って経験を積んでいるので、どんなものが欲しいか適切な発注ができます。その場合は言われたものを作ればいいわけです。しかし、一般のひとは、何が欲しいかをうまく言語化できない。「メロンパンがほしい」と言ってはいても本質的に欲しいものはメロンパンじゃないことが多くて。だから、職人は、その言葉の先を汲み取って提供します。相手が本当に求めるものを汲み取って、それを満たす。僕がよく「モテるのが大事」と言っているのはこういうことです。

ーー相手の求めるものを満たすことができれば「モテる」ということですね。では、365日は誰にモテようとしていますか。

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杉窪 女性全般ですね。女性全般の気持ちを掴みにいっています。結果的に男性の心を掴むこともありますが、あくまでターゲットは女性。最近では、堀江貴文さんや落合陽一さん、キングコング西野さんなど影響力のあるひとの話を聞いて自分もできる気になり、ノウハウだけで形にしようとするひとがいます。でも結局、自分のキャラにないことはできません。女性にモテないのに女性のためのお店をやってもだめ。ポーズではなく、本気でモテないとだめなんです。大事なのは、自分が一番モテる場所を見つけて、そこで勝負することです。

ーーニーズから始まる商品作りは、出来上がるものが似通ってしまうことも多くあります。でも、杉窪さんのパンには確固たるオリジナリティがある。その違いはどこにあると思いますか?

杉窪 引き出しの数の違いだと思います。引き出しが膨大にあれば、その中から選択して組み合わせ、オリジナルを作ることができます。それが答え(商品)の出し方の違いになるんです。そのためにはまず、1つのジャンルに徹底的に洗脳されることです。これは教育といってもいいんですが、すでにある方法論や技術を徹底的に学びます。

僕の場合でいえば、もともとはパティシエでした。その後にパン、コーヒーと広げていきましたが、これらに関しては、修行らしい修行はしていません。しかし、最初のパティシエ修行の攻略法をいかしてやっています。

その攻略法とは、理論に基づいた基礎的な勉強を徹底的に行うことです。2つ目のジャンルからは、この攻略法を使って、エッセンスの詰まった引き出しを増やしていきます。飲食の世界では、まだひとつのジャンルを極める続けるひとが多いので、この方法と分野をまたがった引き出しの多さが僕の武器になっています。

ーー今回のインタビューでは「モテる職人」の姿と、そのなり方について刺激的に語ってくださいました。次回は、モテる職人が、これからの時代をどう戦っていけばよいかについて語ってくださっています。後編をお楽しみに!

CRAFTSMAN × SHIP(クラフトマンシップ)
【出演】 CHEESE STAND ー 藤川真至/Minimal ー 山下貴嗣/365日 ー 杉窪章匡/FUGLEN TOKYO ー 小島賢治/and You.
【日時】 2019.11.23 sat open 13:00/start 13:30
【参加費】 3000円(税込)
【場所】 青山・国連大学
【協力】 ファーマーズマーケット・アソシエーション
13:00 開場
13:30 第1部 CRAFTSMAN TALK 
藤川真至/山下貴嗣/杉窪章匡/小島賢治 各20分
4人のCRAFTSMANが作った商品を食べながら、そこに込めた想いや開発の秘話などを聞くことができます。
15:20 第2部 交流会
藤川真至×山下貴嗣×杉窪章匡×小島賢治
CRAFTSMANと参加者の質問を中心としたディスカッションのほか、各店のブース出店もあり、商品を実際に購入することができます。
16:30 終了
※内容は予告なしに変更になる場合があります。

「CRAFTSMAN × SHIP」前売りサイトはこちら

すぎくぼ・あきまさ
1972年生まれ。石川県の輪島塗職人の家系に育つ。高校中退後、16歳で辻調理師専門学校に学び、パティシェとしてのキャリアをスタート。24歳でシェフとなり、27歳で渡仏。2年間の修行を経て帰国後、パティスリーやブーランジェリーにてシェフを歴任。40歳で独立し、株式会社ウルトラキッチンを興す。愛知、福岡、神奈川でブーランジェリーをプロデュースしたのち、2013年に直営店「365日」を開業。続いてカフェ「15℃」、「ジュウニブンベーカリー」、「365日と日本橋」をオープンし人気を博している。

インタビュー・構成・文/Haruka   写真/江六前一郎 edited by MAGARI

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