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知的好奇心がくすぐられる場所を増やしたくて。|古賀詩穂子

あなたの「やってみたい!」をアシストする間借り情報メディア・間借り人(まがりん)。わたしたちは『点と点を“線”にする。』をコンセプトとし、発信しています。

東海3県(主に名古屋)で間貸しをしている方に取材。第7回目はTOUTEN BOOKSTORE 店主・古賀詩穂子さん。本の原体験、就活や前職での苦悩と葛藤、新刊書店への思いなど。さまざまな角度からお話を伺いました。 


ー 「本」との出合い、原体験

本屋は昔から身近な存在。地元、大府市(愛知)にある滝書店に行く習慣がありました。当時、『りぼん』(少女まんが雑誌)がすごく好きで漫画を中心に本を買って、家族のなかで回し読みしていました。

本の魅力のひとつは、頭の中を文章として可視化して、かつプロダクトとしてどの紙にするかとか、どのフォントを使うかとか、デザインもあらゆる点で凝らされているところ。いろんな人が携わっている一つのアウトプットの形にすごく惹かれますね。そうやって想像してみると、本ってすごいと思います。


ー 仕事としての「本」、就活の苦悩

就活で自分の原点は何か、よく質問されると思います。私は『りぼん』で連載していた槙ようこさんという漫画家の方がすごく好きで、『りぼん』に携わりたいと思い、出版元の集英社の面接を受けました。グループ面接の時に、周りと自分とのギャップを感じたというか、周りの人たち、1人ひとり個性があるように見えて、それに対して自分には何にもないなと思ったり、「なんでこの仕事がしたいんだっけ......」と考えたりと、就活自体がわからなくなりました。

最初は出版社志望でしたが、出版社と書店の両方に関わることができて、出版のインフラになっている取次会社に興味を持って受けたところ、ありがたいことに内定をいただいて、就職することになりました。


ー 新刊書店をやりたい!と思ったきっかけ、理由

仕事で毎日のように足を運ぶのとは別に、仕事がうまくいかないときなどにプライベートでも本屋に行っていました。本屋にはたくさんの人がいて、各々が自分が買いたいと思う本を選んでいる。あの景色を見るのが好きでした。

例えば、話題になっている本があって、売れる店にはたくさん積んであるのに小さな店にはほとんど入らないというような、全体最適で細かく見切れない、といった業界の仕組み上の問題や、売場での効率化によって属人性が削がれるような状況にモヤモヤしていました。それと、業界について調べる中で、本屋で本を買うこと、本から情報を得ることが減っていくこと、後継者がいないということなどにより、本屋が20年で約1万店舗なくなっているということを知って衝撃を受けました。

その後取次会社から転職して東京にいた時期があったのですが、例えば神保町を歩くと本屋だらけで。出版イベントも毎日いたるところで開催されている。地域によって情報の格差、文化的な格差があるなと肌で感じて、結構ショックだったんですよ。なので、本屋をやる、となったときに自分が育ったところでやりたくて、東京から愛知に戻ってくるタイミングで始めました。

本屋をやるときは“新刊書店”でやろうと思っていました。新刊書店というのは、新しく発売される本を仕入れて販売する、というかたちです。新刊は点数がかなり多くて、大体1日に200点以上。うちも今朝も新刊が入荷しました。そういう意味で棚の代謝があり、1日として同じ棚がない、どこかしらが変わっているというのがすごく有機的。そういうところが面白いと思っています。

書店は考えの視点をずらすというか、深めたり、もう少し広げたりしてくれるものだなと思っていて。知らないものがたくさん並んでいると、知的好奇心をくすぐられるし、知らない世界を知ることで自分の狭まっている世界が広がるし.....そういう感覚に自分自身もすごく救われましたね。


本屋をやりたい方へ

お店をやっていると、将来本屋をやりたい人から本屋の経営について聞かれます。私が参考にした本の一つは〈本屋、はじめました〉。東京・西荻窪にある本屋Titleさんの開業の記録をまとめたもので、事業計画書も書いてあります。やっぱり、やったことがある人に話を聞くのが一番早くて正確だと思います。

自分の味方になってくれる本はたくさんあるので、探して、ぜひ読んでみてください」


間借りがしたい方へ

2Fにイベントスペースギャラリースペースがあります。イベントや展示は本にまつわるものだと面白いなと思いますが、もちろんその他も歓迎。うちのお店の空間をいいなと思ってくれてる人に借りてもらえると嬉しいです。


間借り情報


文:Kazuki Ohtsuka
編集、写真:Re!na

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