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出かけてきたよ㉕(おもてなし色々🍳②)

「ザ・洋食屋 キチ・キチ」
南北にこの街に流れる川沿いにある、木屋町通り。
隣の先斗町と少し違った趣のあるこのエリアに位置する。

現在も、完全予約制。
お店の前から少し離れたところに、和文英文で書かれたポールが
立っており、ここで予約した時間まで待つことになる。

ちなみに、同日。一番乗りした私と家族以外に、待ち客が3組ほどいた。
しかし、皆さん互いに様子をうかがうわれているばかりで、
私達以外に、この指定の場所で待つ組はいなかった。不思議なことに。

定刻ぴったりに、お店のスタッフの誘導で店の中に入る。
時間待ちをしていた順番で、店内での席の場所が決まる。
つまり、その順通りに、おもてなしがより楽しめる席に座ることに
なるのだ。この透明な公平性が保たれていることに、とても好感を持つ。

カウンター。そして奥にテーブル席がある。
そのカウンター席の前は、厨房。
店内の壁面に、何十年前かのお店の写真がある。
若かりし頃の姿で収まっている、店主の元吉さん。
私見だが、現在が断然、活力に溢れているお姿をされている。

現在は、元吉さんお一人で調理されている。
厨房には「キチキチガールズ」と呼ばれる、若手スタッフ。
皆さん、笑顔が素敵な美女達。忙しく立ち働く姿はキビキビしている。

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きっと、何年もの経験を経て、お店はこの体制に至られたのだろう。
元吉さんは、それなりの御年のお方だ。
しかし、現在も最前線に立ち続ける現役そのもので厨房に立たれている。
ご自分が、この「お店そのもの」、
中心であり続けていく意志の表れだと私は思う。

このご時世、どこの飲食店もお人払いが続いている。
しかし、ここはどうだろう。
私達が訪れた平日の夜だが、予約でその日も満席。
お店スタッフ達とやり取りしながら、楽しそうにされている元吉さん。
世の中がどのようになろうとも、
この場の和やかさと活気は変わらないだろう。

カウンター席に通されてすぐ。
壁面に「記念撮影OK大歓迎」の貼り紙があるのをチェック。
そこで私は、ご挨拶をした後、ご準備を始められる前の元吉さんに、
こう伝えた。
「こちらのことは、元吉さんの動画を拝見して知りました。
ぜひ、元吉さんお手製のオムライスをいただきたく、
ウェブサイトから予約を取りました。
予約を取ることが出来て、とても嬉しかったです。
実は私達、遠方に暮らしています。
滅多にうかがえませんから、喜びもひとしお。感激しました。
今日は、早い時間からこの近くに来てしまいました。とても楽しみです。
いつでもご都合が良い時で結構です、
ぜひ一緒に、お写真撮らせていただいてよろしいでしょうか。」


あれあれ・・・・自分でもびっくりした。言葉がスラスラと出る。
これでも、極度のはにかみ屋だった。
社会人になるまで、人様に話しかけることすらできなかったのに。

後からじわじわ、わかってくる。
元吉さんの放つ光に、こちらまでオープンになれるのだ。
ちなみに、リクエストした次の瞬間、元吉さんと記念撮影を叶えた。

いよいよ、オムライスづくりのパフォーマンス。
まず、店内での動画撮影(そのための携帯置きがあるサービスぶり)・
SNS拡散OKと明るく伝えられてから、開始。
滑らかな実況トークと共に、ご飯が手際よく炒められる。
非常にテンポがいい手順。流れるよう。
そして程よく要所要所、私達とカメラへ視線を向けてのトーク。

ご自分が作り上げた至福のオムライスを作る過程は、全て公開。
材料、使っている道具、美味しく調理するコツ。すべてオープン。
元吉さんは、ご自分の仕事に、とても真っ直ぐだ。
元吉さんは、”職人”、プロだ。
それがライブを通じ、ダイレクトに伝わってくる。

このお店のオムライスの価格、市場価格と同程度というわけではない。
それは、一種「結界」だと、私は思う。
このオムライスにその金額を払う価値があるかないかの各自の判断により、
この場に来るか来ないかが、分かれるだろう。
そしてその「価値」を認める人は、何度でもここに来る。
それは、あらゆるサービス業に関して同じことだ。

元吉さんはご自分が作るオムライスの価値を、客観的にもご存知だと思う。
だからこそ、その過程は、その価値を伝える必要があると知っている。
パフォーマンスは、それを見せる、魅せることに徹していた。
こちらに迎合することは一切なく、ムダ話・ムダな動きは皆無だった。
その分、客の立場では、この店の価値を知ることに徹することができる。

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その時間、一番最初に私達はオムライスを作っていただいた。
私達がオムライスを楽しみ始めたのを見届けた刹那、
今度は次の組のお客さんのオムライスを作り始める。

たまたまだが。
私達の他の方々は、”ご自分達”に入店の意義をお持ちと見受けた。
ついに名物店に来店し、動画を撮影することができる自分であることに、
その日の目的がある。
そのような方々には、その方々が笑顔で快適にいられるように、
元吉さんは絶妙な距離感を保たれて、接客されている。
自分の快適な立ち位置を確保しつつも、相手との距離を上手く図ること。
これは仕事においてとても重要だと、私も学んだ。

私と家族は、存分に元吉さんとそのお店を楽しませていただいた。
他の皆さんへのパフォーマンスをされながらも、
自分達への一番の関心をもつ、”私達”の存在をも逸らさない。敬服した。

私達との時間は、きっかり1時間と決まっている。
短くも長く、長くも短い、凝縮された時間だった。
皆、立ち上がり、一斉に店の外へ出ていく。
見送る元吉さんとキチキチガールズの皆さん。

私と家族、そして元吉さんとで、次の時間となるわずかな間だったが、
お店の外でお話することができた。
現在の状況下でも、変わらぬもの。それを追求される元吉さんの意志。
日本一古風なこの街にありながら、
グローバルであり、且つ宇宙へも広がるビジョンと行動力で生きる力。
とても触発された。

家族にとっても、今回の来日一番の経験となった。
元吉さん、キチキチガールズの皆さん。
またいつか、ぜひお会いしましょう。

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