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Review#19:Letters from Juan vol.4 (Juan Tamariz)

ついに4巻目。vol.1~3のレビューから間が空いてしまいましたが、vol.6が出たタイミングでまとめて買いました。今回の色は青。

解説中にParenthesis of Forgetfulness(忘却誘導要素の挿入)とか普通に出てくるので、アスカニオ理論は履修済みであるほうが楽しめます。もちろんそこらへんをあまり理解していなくてもトリック自体を理解する上では問題ないのである程度楽しめますが。
海外であまり高評価でないレビューを(vol.1とか2の時点で)見かけましたが、タマリッツやアスカニオの理論や考えがどう反映されているのか、頭を使いながら読む、つまり行間を読むことを求められているシリーズだな、とは思います。そういった前提で読まないと、長くてくだらないトリックを延々と見せられると感じる人もいるでしょう。


Letter from Juan(序文)

タマリッツによる序文。「スペインはシェアの文化があってなんでも共有する」みたいな言説をどこかで見たのですが、ここを読めばそれは正直、嘘だとわかるでしょう。正直この序文だけでも「いいもの読んだなぁ」という感想をもちました。タマリッツのマジック固有の「秘密」に関する考え方がわかります。タマリッツの師匠がアスカニオから怒られた話とかあるので(笑)

A CAN OF PAINT

連続カラーチェンジによるフォーブアカインド出現。ペンキ缶からペンキを取ってをつける、という演出でカードがカラーチェンジしていきます。身体の動かし方、向きなどの指示もあり、目線の動かし方などでミスディレクションの解説も。
カラーチェンジそのもの自体は非常にダイレクトな手法であり、それ自体は特にコメントはないのですが、タマリッツがメトロノーム使って練習する、と書いてあったのでテンポがとても大事である模様。演技を見てみたいなぁ。
この作品に限らずですが、スペイン語や英語って言語で結構テンポをつくりやすい言語だなぁとは思うので、日本語だとちょっと難しいと感じますよね、テンポづくり。

NEW CALL TO THE COLORS

Scarneのアイデアを元にBill Simonが作ったプロット"Call to the Colors"のタマリッツバージョン。
原案はディールのテクニックが必要ですが、こちらは特殊なディールは一度も実施しません。それで効果が落ちているかと言うと、そうでもない。ということでバリエーションとしてはとても良いものでした。
1枚ずつ交互の状態から2枚ずつ交互になり、3枚ずつ交互、10枚ずつ分離、最後にはデックまるごと分離、という超大作です。手順を覚えるのはちょっと大変そうではあります。

SEVEN BRIDES FOR SEVEN BROTHERS

デック1つで大多数の客相手にできるマジック。タマリッツ流の演出により14人の観客をステージにあげて演じることができる。男性7名、女性7名をステージにあげて、男性には黒いカード、女性には赤いカードを一人1枚ずつ渡す(男女による色分けは時代遅れだなと思いますがまぁそこはよいでしょう)
現象としてはカードアクロス。女性のカード2枚が男性のカードの山に移動します。演者の技術的負担はかなり削減され、観客とのやりとりに集中できる造りになっていますし、客から見るとかなり不思議なはずです、演者はカードにほぼ触れない印象になっているので。
タマリッツ流のプレゼンテーションでは、観客と一緒にダンスしながら現象が起きます(笑)むちゃくちゃスペインです(偏見)BGMまで具体的に言及されています。
アスカニオによる、コントラストを強調することやミスディレクションの3分類を思い出させられた作品。ステージサイズでも、それらはちゃんと適用すると有効そうですね。

The Three Stooges

ギャンブリング・デモンストレーション。3人の客のひいたカードを表を見ないで隠した状態で4枚ずつディール。すると、ストレートフラッシュに1枚足りない状態。客のひいたカードをそれぞれ見ると、ストレートフラッシュが成立する。
Mnemonicaによるトリック(ネタバレ)なのですが、リセット方法も書いてありMnemonica使いはレパートリーに入れておいて損はなさそう。ポーカーの役を知らなくても、ストレートフラッシュは誰にでもすごく見えますしね。

ということで相変わらず面白かったです。Tipsめいたものはちょっと少なかったかな。価格は25ドルということで円安なのは残念ですが、タマリッツファンは買って損はありません。

過去のレビューはこちら


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