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アジラフェルの選択:再び巡り合う日まで グッドオーメンズ2

2019年5月30日に配信されたすべてが完璧なパズルのピースのように収まったラストで終わるグッドオーメンズS1から4年、S2はクロウリーが天使だった頃の宇宙創造のシーンで始まる。
このシーンでアジラフェルがうっかり漏らす「神の計画」はクロウリーには許せない計画だった。「神の計画」についてクロウリーが感じた怒りは彼が堕天使になった理由でもあり、直接的ではなくてもきっかけとして決定的だったと推測できる。しかしそのことをクロウリーはアジラフェルに伝えていない、きっかけが自分の言葉だったという事実をアジラフェルが深刻に受け取ることは間違いないから。どんな時でもクロウリーはアジラフェルを傷つけたくない。
ニーナがクロウリーを"hard-bitten"と形容するシーンがある。"hard-bitten"とはがんこな、強情な人のことで、 元は猟犬が経験や戦いによって強くなり、頑固で無神経になったような状態を言う。ニーナはクロウリーの過去を知らないはずだが、天使時代のクロウリーを見る限り、その後の経験がクロウリーを手負いの猟犬のような容易く誰かを信用しない性格にしたことがわかる。彼が信用しているのはアジラフェルだけ、だから冷酷な悪魔を装っているがアジラフェルを傷つけるようなことは絶対しない。S1でもS2でも徹底している。それを知っていてクロウリーを都合よく頼るアジラフェルの我儘だってクロウリーは分かっていて受け入れているのだと思う。だからこそE6の最後、今までと違ってアジラフェルの言い出した「我儘」を許せなかった。アジラフェルが自らを傷つけかねない、いとも簡単に宇宙も天使も使い捨てるような天国に戻ると言い出したことに。

E6最後の、天国へ戻るというアジラフェルへクロウリーが言う、
You can't leave this bookshop. 「でも本屋は手放せないだろう?」
アジラフェルが答える。
Oh Crowley, nothing lasts forever. 「クロウリー、永遠に続くものなんてない」
クロウリーはアジラフェルのこの返事をあれほど大切にしていた本屋より、そして自分との暮らしより悪意に満ちた天国を優先したと感じ一瞬で心折れた。しかしアジラフェルがメタトロンのオファーを受けた最大の理由はクロウリーのためだった。アジラフェルはメタトロンのオファーに最初乗り気ではなかったが、クロウリーの天使復帰の話で態度を変えていく。天国に天使として戻ることがクロウリーの最上の幸せであると信じ、神から認められ2人で天国で暮らせることは彼にとって何よりも大事なことだった。永遠に続くものなんてない、君のためなら変化も怖くない、書店だって重要じゃない。天国で2人で暮らせるなら。そういう意味の「永遠に続くものなんてない」だったんじゃないか。
何が悲劇かって、ここでS1で成長したと思っていたアジラフェルが昔と変わらず天国が完全なる善であることを信じていることで、クロウリーの反応を全く予想できなかったこと。6000年も仲良くやってきて結局何も理解してないやん、ってクロウリーがショックを受けるのは当然なのである。
クロウリーに拒否されたアジラフェルは天国に戻る理由を失う。だからメタトロンが迎えに来た時、急に理由を付けて断ろうとしている。しかしそれも一瞬で、オファーを断り地球に残ったとしてもクロウリーは戻らないと気付いた彼は感情を押し殺し作り笑いでメタトロンを迎えるのだ。
クロウリー、アジラフェルどちらもお互いへの想いから取った行動と、招いた結果の悲しさよ。

S3の内容はすでにニール・ゲイマンとテリー・プラチェットの間で話し合われていたとのこと、S2の謎と余白を残したエンディングもS3がある前提なら耐えられる。S3最後、天使と悪魔は仲良くコテージで一緒に暮らすということなのでそれまでまた4年待つことになるんでしょうか。

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