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【知らないと損!】事業承継税制のメリット・デメリット

こんばんは。M&Aガイド事務局です。今日は「事業承継税制」についてです。

事業承継を行なう際、利用できる制度のひとつに「事業承継税制」があります。こちらを活用することで事業承継時の納税を実質ゼロにでき、承継者の金銭的・精神的負担を大きく軽減します。今回は事業承継税制について、その概要や最近の動向、メリット及びデメリットを詳しく解説します。


事業承継税制とは

事業承継税制とは、中小企業の後継者が、事業承継において会社の株式等を贈与または相続したとき、その株式等にかかる贈与税・相続税を一定の要件を満たすことで、納付が猶予または免除される制度をいいます。

事業承継税制は2008年にまず法人を対象としてスタートして、その後2019年には個人事業主にも対象を広げることで制度の拡充を図ってきました。また法人版事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」があり、2018年に拡充された「特例措置」ではさらに制度の弾力化が図られました。

具体的には、これまでの「一般措置」では、納税猶予割合が「贈与100%・相続80%」でしたが、「特例措置」では「贈与100%・相続100%」と双方猶予・免除される仕組みになりました。「特例措置」でこの制度の適用を受けるには、対象者が2023年3月までに事業承継の計画書を地方自治体に提出して、10年以内に承継を行なうことが条件となっています。

また、これまでの「一般措置」では被相続人(先代経営者)から1人の相続人(後継者)への贈与・相続に猶予措置が限定されていましたが、「特例措置」では親族外含む複数の株主から法人代表者の後継者(最大で3人まで)へ承継が可能になり、中小企業の実態に即した事業承継ができるようになりました。

さらに「一般措置」では承継後5年間、「平均で8割の雇用維持」が条件となっていて中小企業の円滑な事業承継を妨げる要因となっていましたが、「特例措置」ではこの条件も緩和され実質的になくなったことから、より制度の適用が受けやすくなりました。


事業承継税制「特例措置」の要件

事業承継税制の「特例措置」を受けるには、最低限対象者が満たすべき要件が2つあります。それは以下の2つです。

対象者が中小企業であること
制度の対象となる法人が、中小企業庁が定めた「中小企業の定義」(https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html)に業種ごとに合致している必要があります。(資本金・従業員数基準)

事前の「特例承継計画」策定の必要性
「特例措置」の適用には、認定支援機関※の所見を付与した「特例承継計画」を策定して、本制度で決められた5年以内(2018年4月~2023年3月)に書類を都道府県知事に提出して、その確認を受ける必要があります。

※認定支援機関(認定経営革新等支援機関)とは、中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベルを超える者を国が認定した支援機関をいいます。税理士法人や会計士事務所、商工会・商工会議所、金融機関等が該当します。


事業承継税制のメリット・デメリット

事業承継税制も制度である以上、メリットもデメリットもあります。以下がそのメリット・デメリットです。


事業承継税制のメリット

事業承継税制の主なメリットは以下の5つです。

贈与税・相続税ともに100%免除
この制度の最大のメリットが、この贈与税・相続税がともに100%猶予・免除されるということです。ただし「特例承継計画」を地方自治体に提出して一定の条件を満たす必要があります。

雇用の8割条件が緩和
事業承継税制の「一般措置」では事業承継後、後継者は5年間平均で8割の雇用条件を守らねば、猶予されていた贈与税・相続税の全額を納付しなければいけませんでした。しかし「特例措置」では仮に雇用条件を満たせなくても、承継後に雇用条件が満たせなくなった妥当性のある理由を記載した書類を出せば、納税猶予がそのまま継続されるようになりました。

先代経営者及び後継者の条件緩和
「一般措置」では、中小企業の先代経営者から後継者への贈与等による株式移転は先代経営者のみからと限定されていました。しかし「特例措置」では、親族以外を含む複数の株主から承継者の代表者(最大3名まで)承継できるようになりました。これはかなり大きな制度の弾力化といえます。

株価対策のため法人の利益を圧縮する必要がない
先代経営者から後継者に対して事業承継する際、株式等にかかる高額の贈与税・相続税は悩みの種です。そのため経営者としては、株式評価の基準となる利益を圧縮するなどの株価対策をすることで、できるだけ事業承継時の納税額を引き下げる努力が必要でした。しかし事業承継税制の適用を受けることができれば、承継時の贈与税・相続税を100%猶予・免除されるので、他の事業承継対策のように意図的に利益を圧縮する対策も必要ありません。これは経営上、大きなメリットです。

事業承継税制は期間限定の特例措置、後継者が先代経営者に事業承継を促しやすい
事業承継税制は申請期間が5年、実行期間が10年の期間限定の特例措置制度です。この間に必要な対策をしなければ、事業承継で贈与税・相続税を100%猶予・免除されることはありません。一方、先代経営者は「まだ自分は現役で頑張れる、事業承継は先でいい」と結論を先延ばしがちです。しかし、事業承継対策は長い年月が必要なだけに、後継者としては先代がそのような考え方に固執されていては困りものです。そこで、後継者も先代に対してメリットの大きい事業承継税制の活用を訴えつつ、期間限定の特例措置であることをアピールすれば、先代経営者に事業承継への対応を促しやすくなります。


事業承継税制のデメリット

事業承継税制の主なデメリットは以下の4つです。

特例承継計画の提出が必須
「一般措置」ではいくつかの要件を満たすことで納税猶予は受けられ、特例承継計画の提出は必要ありませんでした。しかし「特例措置」に制度が拡充されてからは特例承継計画の策定及び提出が必須になり、手続きに厳格さが加わりました。

また承継後5年間は毎年、継続届出書を都道府県と税務署に、5年経過後も3年に1回、提出が義務づけられています。万が一、失念等で書類を提出し忘れると、その時点で納税が確定してしまいます。承継者は手続きをしっかりと進める必要があります。

事業承継税制の適用期限がある
「特例措置」の適用を受けるには、認定支援機関の所見付きの特例承継計画を2018年4月1日~2023年3月31日の間に提出して、都道府県知事にその確認を受けなければなりません。期間が限定されているという意味で注意が必要です。

納税猶予の取消リスクがある
事業承継税制には納税が猶予されている間、対象者が守らなければならないルールが実ににたくさんあります。

たとえば、事業承継税制を使うと5年間の間、後継者は代表取締役を継続して務め、さらに所有株式を1株も手放してはならないという決まりがあります。これを破ると、制度の取消事由に該当すると判断されて、猶予されていた税額に利息もプラスして支払わねばならなくなります。

さらに、事業承継税制を使った場合、その後資本金を1円も減らしてはならないというルールも付いてきます。他にも事業承継税制の適用を受けたら、その対象となる株式を途中で一部売却しても、制度の取消事由に該当して、猶予中の税金を全額納付しなくてはならないという決まりもあります。

これら以外にも納税猶予の取消リスク項目がたくさんあるので、後継者は事業承継後も気を抜かずルール違反しないよう各方面に目配りしていく必要があるのです。

事業承継税制を含む、事業承継を総合的に支援できる専門家(税理士、公認会計士等)が少ない
前述したとおり、納税猶予の取消リスクがある中で、事業承継税制を利用すべきかの判断を含めて、事業承継を総合的に支援できる専門家(公認会計士・税理士)が少なく、適切な専門家探しは必要となります。また、事業承継税制を採用した場合も、納税猶予の取消リスク項目が実に多くあるため、承継後に後継者ひとりで全て管理することは非常に労力を要するものであり、中長期的に事業承継に対応できる専門家の助けは必須です。

事業承継税制の概要やメリット・デメリットを最新の制度内容をもとに解説しました。ぜひ事業承継税制検討時の参考にして下さい。

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