アッサラームアレイクムは特別な挨拶だった
アラビア語を学び始めると、最初に覚えた言葉が「アッサラームアレイクム」である人は多いのではないかと思う。
「アッサラームアレイクム」(السَّلامُ عَلَيكُم)は「こんにちは」と訳されることが多く、アラブ世界では日常的に使われる。
直訳すると「あなた方の上に平安あれ」という意味になり、先に相手に「アッサラームアレイクム」と言われた場合は、「ワレイクムッサラーム」(وَعَلَيكُمُ السَّلامُ)と言って返す。
これは、前半の「平安」(السَّلامُ)と、「あなた方の上に」(عَلَيكُم)をひっくり返して返答することによって、相手へのより丁寧な姿勢を表していることになる。
返事の「ワ」(وَ)は、「そして」を意味する。
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ヨルダンでは、年配の人を中心に、さらに長い挨拶をする人もいる。
「アッサラームアレイクム ワラハムトッラー ワバラカート」(اَلسَّلَامُ عَلَيْكُمْ وَرَحْمَةُ اللهِ وَبَرَكَاتُهُ)と言い、先ほどの「平安」に「神のご慈悲と祝福」という意味を付け加えたものである。
これに対する長い返答もある。
それが、「ワレイクムッサラーム ワラハムトッラー ワバラカート」(وَعَلَيكُمُ السَّلامُ وَرَحْمَةُ اللهِ وَبَرَكَاتُهُ)である。
挨拶としては衝撃的な長さ!
最初は噛んでしまってなかなか言えなかったけど、これをスラスラ言えるようになった時には、なんとなく誇らしい気持ちになった(笑)
実際に使ってみると、「アッサラームアレイクム ワラハム・・・」くらいで、相手が最後まで聞かずに、返事をしてくることも多い(笑)
ただ最近は、「アッサラームアレイクム」の挨拶と、「マルハバン」(مرحباً)というもう一つの「こんにちは」という挨拶を、相手によって使い分ける様にしている。
それは、ヨルダンに住むキリスト教徒の人々は、「アッサラームアレイクム」という挨拶を使っていないからだ。
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ヨルダンには圧倒的にイスラム教徒の人口が多いが、キリスト教徒の人々もいて、以前の記事でも触れたように、私の住んでいる街マダバには、キリスト教徒の人々が多く暮らしている。
私が、キリスト教徒である大家さんに対して、最初はいつも「アッサラームアレイクム」と挨拶をしていた。
しかし、彼は「ワレイクムッサラーム」と返す事はなく、「アハラン、アハラン」と挨拶をしていた。
ちなみに「アハラン」(أهلاً)も「こんにちは」と言う意味。
毎回挨拶をするたびに、少しだけ違和感を感じていたが、クリスマスの時に、キリスト教徒の人ばかりが集う教会に足を運んだ。
その時に、キリスト教徒の人たち同士の会話を聞いていると、誰一人として「アッサラームアレイクム」を使って挨拶をしている人がいなかったことに気がついた。
彼らは、「マルハバン」や「アハラン」を頻繁に使っていた。
キリスト教徒である彼らは、ٱلْحَمْدُ لِلَّٰهِ(アルハムドゥリッラー)や、إِنْ شَاءَ ٱللَّٰهُ,(インシャアッラー)という言葉は使うこともあるのに、「アッサラームアレイクム」だけは使わないのは、驚きとともに、一つの発見であった。
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それくらい、やはり「アッサラームアレイクム」という挨拶は、イスラム教徒にとっての特別な挨拶だったことが分かる。
確かに、同じくイスラム教徒が多いインドネシアやマレーシアでも、公用語とは別に、挨拶として「アッサラームアレイクム」を使うことが多い。
最近「レンタル彼女2」と言うインドネシア映画を観たが、この映画でも「アッサラームアレイクム」が頻繁に使われていた。
けど、ヨルダンで聞くのと少し発音が違っているのが面白かった。
ちなみにこの映画、題名からはイメージがつきにくいが、インドネシア語をはじめとして、インドネシアのイスラムの宗教観、結婚観、家族観、服装、住居、屋台文化など、まるでドキュメンタリーであるかのように、現地の様子を見ることができたので、おすすめ。
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少し話が逸れてしまったが、この「アッサラームアレイクム」と言う挨拶は、今度も相手によって使い分けていきたいと思う。
それくらいイスラム教徒にとっての特別な言葉だと思うから。
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