稀に見る大雪の夜 あなたから送られてくる 人気のない街の写真には しんと静けさが漂う 「これ、桜が咲いてた」 一言添えられた一枚には ふっくらと新雪をたたえた 雪化粧の枯れ木が佇んでいて シャッターを切るあなたの吐息は 春風に似て 首筋を甘く くすぐっていった #一かけらの今 #恋愛詩 #詩 #散文 #雪
夜空を見上げれば そこにある月と星が 俺達を繋いでいると あなたは言った 無限に広がる 空の色は しっとりとした漆黒 あなたが見えない 大好きな笑い声は 暖かな掌は 通わせた心は 本当にそこにあるのでしょうか か弱く白い一筋の光が 頬伝う涙と重なった #一かけらの今 #恋愛詩 #詩
かかる半端な長さの髪 お揃いの斜めがけの鞄 あなたの吐息と 唇の感触 全て捨てられたら 今よりずっと軽やかで でもきっと悲しくて あらゆる重さに負けないように 今日も私はひっそりと 月に向かって背筋を伸ばす #一かけらの今 #恋愛詩 #詩
甘いのが苦手と言いながらも 私のお皿に視線を落として 小さく口を開けるあなた なるべく苦い所を選んで そっと口元へ運ぶ 唇に付いた 僅かなチョコソースが 甘く私を誘う 「おかわり。」は 同じ香りの吐息が混じる 魔法の言葉 どうぞゆったり お召しになりませ
あと何回 あなたからのおやすみを この耳に 頬に 瞼に 落としてもらえるのだろう くしゃりと髪の毛をこする 少し冷たい指先を 静かに唇でとらえる 輪郭をなぞる手のひらの そのぬくもりが どうしようもなく 胸を締め付けて どうか明日も あなたのそばに #一かけらの今 #恋愛詩 #詩
隣に腰掛けた君の声が 今夜も眠気を誘う 途切れた会話の隙間の 心地よさに身を任せて 君の小指に触れる ぴくりと肩を揺らし 見上げた瞳は 信頼と戸惑いの狭間で揺れていて 絡め返された小指から伝わる か細い愛情を手繰り寄せ その柔らかな黒髪に 静かに口付けた #一かけらの今 #恋愛詩 #詩 #散文
週末は嫌い あなたの手元から 自分の存在が消えるから あなたのいない夜は嫌い 長くて 永くて 与えられた響きが より恋しく 不意にもたらされた優しさが 忘れられなくて さらり ざわり 永響 共鳴 涙の境界が近付いて 明けの明星がかすかに滲んだ #ことばおもい #詩 #恋愛詩 #散文
小さなヤキモチが ぐずぐずな嫉妬に わずかな意地悪が 消えないケロイドに その傷痕に口付けをする時 手に入らない君の一部分が 僕のものだと錯覚する #詩 #恋愛詩 #言葉の添え木 #散文
午前4時 冷え切ったサンダルに足を入れ 西の満月を眺める 耳元にはどこか知らない場所を走る エンジン音と君の声 君の吸い込む空気が 一瞬凍る息となり やがて甘く暖かい 囁きに変わる もっと欲しいと伝えたら 終わってしまうと 今夜も一人 夜風を飲み込む #詩 #恋愛詩 #言葉の添え木
「嫌いじゃないよ。」 素直になれない僕たちの 二人ぼっちの合言葉。
寂しい夜は、声を届けて。 途切れた会話の合間に聞こえた あなたの息遣いが、 私をまた、恋に落とす。