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Where’s My History/[Alexandros] [A]盤 曲順の観点からの感想

3/17リリースされた[Alexandros]のベストアルバム「Where’s My History」を聴いて感じたファーストインプレッションを文字に残しておこうという試みからこの文章を書いています。
※全ては理論に基づいた感想ではなく、感覚に基づいた感想です。

↓のPodcastでもほぼ同じような内容を話していますので、このnoteとPodcastが相補的なものとなっていれば良いなぁと思っています。


「Where’s My History」は[Alexandros]のベストアルバムですが、その[A]盤とは何かと言いいますと、[Alexandros]というのは改名したのちの二つ目の名前でして、[Alexandros]になってからリリースされた曲をを集めた盤を[A]盤というわけです。よって、「Where’s My History」は改名前の[Champagne]時代にリリースされた曲を集めた[C]盤と[A]盤の2枚組です。

さて、このベストアルバムはリリース順にまとめたものではなく、曲順を新たに構築しているという情報を見てから、収録曲と曲順をなるべく見ないようにしました。というのも、ライブのセットリストのように楽しみたかったからです。

そして、自分は曲順を考えるのが好きな人間なのですが、曲順という観点でこのベストアルバムの感想を簡単に書いていきます。ここに書いてあることのほとんどはその場のリアクションで書いているので、新鮮な驚きや予想などを文字にしておけたのは個人的に良い体験でした。

このアルバムを聞く上で一つ大きなモチベーションがあります。それは個人的に大好きな「PARTY IS OVER」をどこまでピークに持っていけるかというもの(あまりにも好きなので「PARTY IS OVER」が収録されているのだけは確認した)。「PARTY IS OVER」がどこに位置づけられるか、感情やテンションをどのように起伏させてどのようにこの曲に至るか。「PARTY IS OVER」が収録されているオリジナルアルバム「Sleepless in Blooklyn」とはまた違った景色が見えるのか。などを道標にこのアルバムを聞いていこうと思います。


まだアルバムを聴いていない方は、ぜひ聴いてから、もしくは聴きながら読んでいただけると嬉しいです。(A盤は17曲目までです。)


01.Adventure


この曲が入るとしたら冒頭か終盤の二択だったので、一曲目に入ってきたのは納得です。というのも、この曲が[Alexandros]に改名した後の一曲目のシングルだったからです。その決意表明のようなところがあるので、冒頭か終盤の二択だと思ったわけです。ライブでは終盤の大団円を担うことも多いこの曲を一曲目に聞くことで、地に足がついたスタイリッシュさを楽しむことができました。そして、この曲が一曲目に入ってきたことで、次は「ワタリドリ」だろうなと予想できます。

02.ワタリドリ


予想通りの「ワタリドリ」。というのも、「ワタリドリ」は彼らの代名詞のような曲なので、ベスト盤では序盤に入ってくるだろうと思っていました。「ワタリドリ」は王道Jロックの印象が強いですが、本人たちはカントリーミュージックをイメージして作った。と言っており、実際に「[Alexandros] Tour 2016~2017 ~We Come In Peace~」ではカントリー風のアコースティックアレンジで演奏されており、これが本当に良いのでぜひ聴いてほしいです。さて、冒頭2曲の役割は、感情の起伏などより挨拶がわりという側面の方が強いように感じます。いわばプロローグのようなもので、注目すべきは3曲目からだと思い、次の曲に集中します。

03.Dracula La


この曲が入っていることがまず嬉しかったです。そして、ライブでは終盤で聴くことが多いこの曲を序盤に聴くと、ライブのお祭り騒ぎ大団円とは打って変わって、音源ならではのスタイリッシュな雰囲気が際立ちます(ライブと音源では全然雰囲気が違う)。視野がギュッと狭まる感じですね。MVでのVo./Gt. 川上洋平の立ち姿がこの曲のスタイリッシュさをそのまま体現していると思います。そして、この曲は「ワタリドリ/Dracula La」という両A面シングルとしてリリースされたので、言ってしまえば「ワタリドリ」と対をなす曲です。そういう意味でも、「ワタリドリ」の次に「Dracula La」を持ってくることで『俺らは「ワタリドリ」だけのバンドじゃないぜ」という強い意志を感じます。(そんな意図はないだろうけど。)

04.風になって


この曲は新曲ということもあり、ベストアルバムの大団円的なポジションを担うと思っていましたが、4曲目という割と序盤に位置付けられていることにまず驚きました。王道のアガるポップなメロディーの中に見え隠れするノスタルジーは少し視野を広げてくれます。CMソングということもあり、これもCMの影響があるのだろうけど、茶色い草原とその広大さ、空の高さを思わせる曲なのです。この点で、視野がギュッと狭まる「Dracula La」との対比が良いですね。

05.Feel Like


納得。自分もこの曲順ならここに「Feel Like」を持ってくるだろうなと思います。アップテンポが三曲続いたのでのもあって、そろそろ違う味が欲しくなってくるところ。そこでちゃんと違う味を持ってきてくれるあたりがとても気持ちが良い。この曲でThe 1975の「UGH!」を思い出すという人も少なくないのかな?

06.月色ホライズン


これまた、アップテンポで爽やかな疾走感の中に青春のノスタルジーを帯びたような曲で、夕焼けを望む河川敷の匂いさえ思わせる。というのもあって、自分なら終盤に持ってきたくなる一曲です。しかし、緩急という面では「風になって」→「Feel Like」→「月色ホライズン」と、とてもよい緩急の付け方をしています。個人的には「風になって」と「月色ホライズン」には近いものを感じていますが、後者の方が感情を乗せやすいかなとも思います。では、「風になって」と「月色ホライズン」は逆ではダメだったのか?これは聞き終わってから考えたことですが、次に暴れ馬のような「Droshky!」が控えていることから、その流れへもっていくために、あっさり系の「風になって」ではなく、感情を掻き立てた上で後味が残る「月色ホライズン」がここに位置しているのはとても納得です。

07.Droshky!


ここまで王道で盛り上がるけど、[Alexandros]ってこんなもんだったっけと少し不安になっていた中、イントロが流れた瞬間「これこれ!」と唸らせてくれました。トリッキーなイントロと激しさを持つこの曲が、今まで綺麗に積み上げてきた[Alexandros]像を気持ちよくぶっ壊してくれました。この曲の効果を最大限発揮するために、直前に『ここで王道の「月色ホライズン」に戻る?』というフラストレーションをあえて持ってきたのではないかと思うほどです。

08.Leaving Grapefruits


自分ならば、ここで激し目の曲をいくつか畳み掛けるだろうな と考えたけど、[Alexandros]はそんなことをしなかった。タイトル通りの甘酸っぱさがありながら(bedroom ver.は特にそれを感じられる。)、メロウの色よりロックサウンドとアコギの色が強いこの曲が、この場所に位置することで何が見えるのだろう(一回聴いただけではわからなかった)。「Droshky!」→「Leaving Grapefruits」→「Girl A」のハードとソフトのサンドイッチ構造がニクいですね。

この曲といえば、ZOZO マリンスタジアムで開催された「VIP PARTY 2018」での雨の中での演奏を思い出すので、そこまで込みの感情を与えてくれるようです。

VIP PARTY 2018のリンクを貼っておきます。「Leaving Grapefruits」は1:27:25〜です。

Bedroom ver.のリンクも貼っておきます。


09.Girl A


この曲は、イントロが耳に突き刺さるようなサイレン音から始まるかなり激しい曲だが、この曲が流れた瞬間に「さっきと同じパターンだ」と悟った。「月色ホライズン」→「Droshky!」のパターンに酷似していたのだ。
だから、この次くらいにアルペジオ、ムーンソングあたりが来るのでは?と思ったものの、彼らは全く同じパターンはやらないと思うので、重厚さで畳み掛けてくると思う。その場合はMosquito Biteか?こうやって考える瞬間が何より楽しい。

10.Mosquito Bite


やはり、先ほどのパターン通りとはいかず、重厚さを重ねてきた。そして、予想通り「Mosquito Bite」。この段階まで来ると冒頭の縦ノリ[Alexandros]の姿はどこへやら。縦ノリだけじゃない横ノリを教えてくれる。
ここから綺麗に「PARTY IS OVER」に向けてバトンを繋いでいきたいところだけど、また曲数はありそうなので、もう少し寄り道をするだろう。「Kaiju」あたりが来てくれたら嬉しい。そもそも「Kaiju」は入っているのだろうか?(入ってなかった)

11.ムーンソング


横ノリから「PARTY IS OVER」にまで持っていくバトンは綺麗には進まず、やはり寄り道をした。
この曲はオリジナルアルバム「EXIST!」や、そのアルバムを引っ提げたツアー「[Alexandros] Tour 2016~2017 ~We Come In Peace~」では一曲目に位置づけられていた。それゆえに、この曲の冒頭でも印象的な軽いリズムギターのイメージが強かった。つまり、少し軽くてサビで宙を舞うような曲のイメージがあった。いわゆる浮遊感。しかし、重厚感あふれる2曲から続けてこの曲を聴くことで違うイメージが見えてくる。というより、ドラムやベースがより聞こえるようになる。宙に舞う感覚に加えて、地に足をつけて上を見上げる感覚が新しく芽生えました

12.Philosophy

この曲はとてもよい曲で気持ち良いのだが、曲順となると取り扱いが難しい。どこにおいてもうまくハマる感じがしない。比較的新しい曲ということもあり、まだ消化仕切れていないので、ここでもなんとも言えず。

この曲はNHK 18祭の曲だったし、その後のデジタルシングルとしてのリリースも「18祭 MIX」だった。それゆえに、バンドのみで演奏されるバージョンを聴くのはこの瞬間が初めて。だから、それだけで嬉しいですね。
縦ノリの盛り上がり方ではなくて、体の内側から溢れ出してくるエネルギーを解き放つような曲。ものすごくハイになるけれど、踊り出すようなハイとは違います。地面をしっかりと踏みしめながら歌いたくなる曲ですね。

13.アルペジオ


気持ち良い。この曲の冒頭コーラスは「Philosophy」で最大限に上げ切ったテンションを、ある種の冷静さで頭を冷やしてくれる。この曲も、うちでふつふつと湧き上がるものはあるけれど、平熱感のある曲。だけど、ラスサビ直前のリズムからラスサビにかけては最高の聴きどころで最高にハイになります。一つの曲でも、平熱感から最高なハイという感情の起伏を楽しめますが、「Philosophy」と連続で聴くことで、より一層ダイナミックな起伏を楽しめたんじゃないかと思います。

14.LAST MINUTE


その上がり切ったテンションをなだめるように、この曲は少しの気だるさと夜の匂いを漂わせます。すでに14曲目というのもあり、このアルバムは盛り上がって終わるのではなく、メロウでエモーショナルにしっとりと終わっていくのだ とわかる瞬間でもありますね。

15.あまりにも素敵な夜だから


「LAST MINUTE」で感じた「メロウでエモーショナルにしっとりと終わっていくのだ」という感覚は正しかったようです。ついついステップを踏みたくなってしまう軽快なサウンドながら、斑点のように丸みをおびたギターとドラムの音が暖色の街灯を感じさせます。夜の冬空のつんと顔を刺す冷たさの中に、ほのかな温かさを感じる曲です。

16.PARTY IS OVER


最高の順番で回ってきた「PARTY IS OVER」。このアルバムは個人的にいかにこの曲を頂上に持ってくる聴き方をできるかという勝負でもありました。「あまりにも素敵な夜だから」の軽快なステップとは裏腹に、ゆったりとしたビート。横ノリだけど、ゴジラのような重厚さはなく、ベッドの上であぐらをかいて上半身だけ揺らす程度の横ノリ。このノリが最高に気持ち良いのです。曲順的にも最高のお膳立てをしてもらっていますね。

17.rooftop


「LAST MINUTE」で外に連れ出して「あまりにも素敵な夜だから」で夜道をスキップして、「PARTY IS OVRR」でその余韻に浸って、「rooftop」で翌朝を迎えるという流れはあまりにも気持ちよくて、リピートしてしまいます。

「rooftop」は「Where's My History?」「Bedroom Joule(配信版)」「Bedroom Joule(CD版)」の3つのアルバムに収録されています。それぞれ違った位置に配置されていますが、それによる見え方の違いも要整理です。


総括

自分はアルバムの曲順を後ろから見るという癖があります。今回の場合は、「rooftop」←「PARTY IS OVER」←「あまりにも素敵な夜だから」←「LAST MINUTE」まで一連で遡ることができ、"017."で書いたようなストーリーが見えます。個人的には「LAST MINUTE」は「ハイ」になっているもののかなり熟成している状態の「ハイ」だと思っています。クラブには行ったことがないですが、オールナイトで踊った深夜3時くらいの熟成度というのが一番近いでしょうか。ですから、その直前までは盛り上がっていて欲しいのです。そこで直前の曲を見ると「アルペジオ」←「Philosophy」と内から込み上げる爆発がある。さらに、一つ前を見ると「ムーンソング」ですが、「ムーンソング」の前は「Mosquito Bite」←「Girl A」という骨太で「ふつふつと込み上げるもの」を表現された曲が並んでおり、「アルペジオ」←「Philosophy」への伏線なのではないかとさえ思うのです。そして、ふつふつと込み上げる骨太楽曲から爆発させてハイになる楽曲への繋ぎとしての「ムーンソング」。繋ぎとしても上手いし、裏切り=驚きとしてもニクい。そして、先ほど見た「Girl A」は「Girl A」←「Leaving Grapefruits」←「Droshky!」のハードとソフトのサンドイッチ構造の一端をになっている。そして「Droshky!」はそこまで王道を立て続いて、飽きさえ頭をよぎる中で、綺麗な[Alexandros]像を良い意味でぶち壊す役割を担っている。『まだ王道やるの?』というフラストレーションと内から込み上げるエモーションの両方を担っているのが「月色ホライズン」。「月色ホライズン」←「Feel Like」←「風になって」は"06."で書いたようにワンセット。すでに序盤まで帰ってきていますが、この辺りは王道パート。「Dracula La」には必然的に「ワタリドリ」がついてくるし、「ワタリドリ」には「Adventure」が付いてくる。この辺りはそれぞれのパートで書きましたね。


このようにして、後ろから出発したら、「この曲はこの流れで聞きたい、この曲もこの流れで聞きたい」と戻って行き、気づいたら最初にたどり着いている。アルバムの一部でこういう現象が起きることはよくありますが、アルバム全体でこのような現象が起こることはなかなかなかったので、本当に上手くできているなぁと感じました。

そして、最初聴いていた「Adventure」「ワタリドリ」などのいわゆる王道から、「PARTY IS OVER」「rooftop」などに行き着いている。このアルバムを一言で表すと「気がついたらこんなところにたどり着いた」というアルバムであり、それはまさに彼らの音楽そのものだと思います。

アルバムの中の物語も、作る音楽の変遷も、彼らのバンドとしての姿も、「気がついたらこんなところまで来ていた」というところが彼らの魅力なんでしょうね。

[C]盤は気が向いたらやりますが、[A]盤に熱量を注ぎ過ぎてしまったので多分やりません。


冒頭にも書きましたが、Podcastをやっているので、そちらも聞いてもらえると嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

まひる🌱


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