見出し画像

私、ヲタク先生【3】

クラスがめちゃくちゃになるのはあっという間だった。

いや、私はその予兆すら、考えていなかった。

「みんな、今日はうるさいな」

「この進み具合だと、隣のクラスに遅れちゃうな」

そんな感じでしか思っていなかったんだ。人間は慣れる生き物だとは言うけれど、めちゃくちゃになってしまっても、普通、と言い切れるもんなんだね。

クラスで毎日のように誰かが泣いて、それを火消しして回る毎日。仕事は毎日舞い込んでくる。丸ツケだけじゃない、アンケートや調査書まである。それを片付けていたら、いつの間にやら8時9時は当たり前。

だから、普通に給与明細に「労働外時間80時間」って書かれていても、全然気にならなかった。もちろん残業代は発生しない。笑っちゃうけれど、講師だって教育公務員だから「給特法」という法律が適用されていて、残業代はないんだよ。あるって言っている人もいるけれど、時給で換算すればアルバイトの最低賃金を軽く下回っちゃう。

……今じゃそんなの、ありえないって思うけれどね。


「うちの子、いじめられているんです」

そう言われて、はっと気が付いた。校長先生も教頭先生も入って、いろいろ話し合っていた。その場にいて私はまるで宇宙の彼方から電波が発信されているかのように感じた。

だって、普通に勉強してるし、遊んでいるよ。

どこが悪いの?

でも、調べていくうちに男の子同士の取っ組み合いが酷くなっていることが発覚した。私はそこで、愕然とした。

援助金は私の創作物の印刷費に主に使用されます。 また、余裕があれば保護猫ちゃんにも使いたいなと思っています。よろしくお願いします。