「あとは二塁打だけなんだけど……」
6月26日、ファイターズ対ホークスの試合で、ルーキー上川畑選手がサイクルヒットにリーチをかけて臨んだ10回表。
一番出にくい三塁打もプロ初のホームランも打って、残るは二塁打。
しかし上川畑選手はこの打席でフォアボールを選んだ。結果的には上川畑選手が決勝点のホームを踏んでファイターズの7連敗をストップさせたため、これは価値のあるフォアボールだった。

ーーーーとはいえ、惜しかった。とても惜しかった。
これまで何度もこんな気持ちになっている。今シーズンはファイターズの選手の「サイクルヒットまであとひとつだったのに」がとても多い気がするのだ。これを「サイクルヒット未遂」と表現すると、万波選手は今シーズンだけで4度のサイクルヒット未遂をしている。とても多い。それとも私が知らないだけで、他のチームでもサイクルヒット未遂がたくさん出ているのだろうか。

今シーズンの6月末までの試合で調べてみると、サイクルヒット達成者は出ていないものの、40件のサイクルヒット未遂があった（私が知らないだけで意外とあった）。
そしてそのうち12件はファイターズだった（やっぱりファイターズは多かった）。
万波（4回）、松本（2回）、渡邉、近藤、アルカンタラ、淺間、今川、上川畑の8選手がサイクルヒット未遂をしている。
ちなみに2番目に多かったのがスワローズの8回。あとの10球団は1〜3回なので、ファイターズとスワローズは異常なくらい多い。

ただこの「サイクルヒット未遂」には、サイクルヒットにリーチをかけたが次の打席が回ってこなかったものも含まれる。
ではこの40件の中でサイクルヒットにリーチの状態で打席が回ってきたケースは何件あったのかというと、約半分の21件まで絞られる。
（そのうちファイターズが8件、万波選手は3件）

ではこの21件は、あと何が出ていればサイクルヒット達成になっていたのか。
圧倒的に三塁打である。
21件中17件が「三塁打が出ればサイクルヒット達成」という状態であった。
しかし三塁打を狙って打つのはものすごく難しい。良い当たりだったとしても外野手の守備位置や肩の強さ、打者の足の速さによって二塁打止まりということもあるだろうし、逆に当たりが良すぎてホームランというケースもあるだろう（実際サイクルヒットリーチからのホームランは今シーズン4件も発生している）。

残り4件のうち2件はホームランが達成条件だったファイターズ渡邉選手と西武の森選手、あとの2件は二塁打が達成条件だった冒頭の上川畑選手と万波選手。
ちなみに万波選手の試合は10-2でファイターズが勝っていたため、チームの勝利が優先となる冒頭の上川畑選手のケース（同点で延長10回）と違ってサイクルヒットを狙って振れるケースだったが空振り三振で終わっている。これ以上ない条件だったのだが、あと一本が遠い。

それにしても、なぜこんなにファイターズ選手のサイクルヒット未遂が多いのか。調べてみると去年6月末までのファイターズのサイクルヒット未遂は1件もなかった。
去年と今年の大きな違いとは。考えなくてもわかる。

BIGBOSS

「ファーストストライクを狙え」
「バットを振らないと何も起こらない」
「今年は横一線。一年間トライアウト」
守備はもちろん、打って結果を残さなければレギュラーどころか一軍にすら残れない。そういったギラギラとした熱い闘いの中で首位打者の松本剛が生まれ、たくさんのサイクルヒット未遂が生まれている。

サイクルヒット未遂のデータの中でもうひとつ、それを裏付けるものがある。
サイクルヒットにリーチをかけてからの打席数だ。序盤に述べたように40件中21件は打席が回って来ず、打席が回ってきた21件中14件は1打席しかチャンスがなかった。
残り7件は2打席チャンスがあったのだが、そのうち3件は今川選手と万波選手（2件）だった。
最初から積極的に振って、打って、中盤にはサイクルヒットにリーチがかかっている。
でもやっぱり、最後のあと一本が遠い。

万波選手だけに注目すると、サイクルヒット未遂4件中3件はサイクルヒットに挑戦できる打席があり、うち1回は二塁打を残すのみ、あとの2回は2打席チャンスがあった。
しかし、達成ならず。未遂と達成の間には高い高い壁がある。
あと一本、どうすれば打てるのか。
球団では1989年の田村藤夫氏以来サイクルヒット達成者は出ていないのだが、身近なところに達成者がいる。
GMの稲葉篤紀氏だ。スワローズ に在籍していた2003年にサイクルヒットを達成。しかもこの時は5回までで達成というスピード記録も樹立している。今のファイターズに最適なサイクル達成者だ。
キャンプ中から
「あっちゃん（稲葉GM）は左専門の打撃コーチ兼任！」
とBIGBOSSに言われ、左打ちの清宮選手へ指導する場面もよく見ているが、ぜひ右打ちの万波選手にもサイクルヒットを打つためのアドバイスをしてもらえないだろうか。

後半戦、万波選手がサイクルヒットを達成するのか、その前に他の選手が達成してしまうのか。
三度目の正直ならぬ五度目の正直に期待している。