三千世界覇王グローブ 第6話

俺--世良快里--の心は怒りで満ちていた。

あの謎の戦士(=騎馬スレイプニル)がいかに非道であるか思い知ったからだ。

アイツは多くの人間をドール怪人に変えて苦しめている。

しかもドール怪人が思い通りにならないと、自ら手を下し傷つけてしまう。

あれから一週間、マンティスドールにされた女子中学生は入院した。

命に別状はなかったというが、どれほど怖い思いをしたのだろうか。

「どうしたの快里クン。なんか恐い顔してるよ。」

全く、恩田心はなんて呑気で馴れ馴れしいんだ。

「うるさい黙れ!話しかけるな!」

俺は恩田心に怒りをぶつけ、立ち去った。

考えてみれば、恩田心は俺を睨み付けるわ、グローブだと見抜くわ、ろくな存在じゃない。

これを機に嫌われてしまえば、もう関わらなくて済むだろう(まあクラスで顔を合わせなきゃいけないことに変わりはないが…)。

授業を終えて帰宅した俺は、母方の叔父・柏紀明(かしわ・のりあき)に迎えられた。

「お帰り快里。今日は何かあったな?」

「別に。なんでもないよノリおじさん。」

「自分から話したがらないのは相変わらずだな。」

全く、ノリおじさんは鋭いな。

俺のこと誰よりもわかってる。

俺は小学生のとき母親を亡くし、父親と二人で暮らしていた。

中学校に上がった頃から、父親の海外赴任が決まったことでノリおじさんと暮らすようになった。

元々父親とは仲が悪かったし、ノリおじさんとはたびたび会っていたから、正直こうなって好都合だ。

父親も生活費を送る以外で特に関わることもないので、今の暮らしは心地よい。

大人になったらおじさんを楽させたいと、俺は常々思っている…。

翌日、俺は担任教師・長田春子(おさだ・はるこ)に呼び出された。

どうやら恩田心が、長田先生に俺が悩みを抱えているとチクったらしい。

どこまでも図々しい女だ。

「別に悩みなんてないし、仮にあったとしても長田先生や恩田さんに話す義務ないでしょ。」

俺はそう言って、長田先生を突っぱねた。

俺はわかっていた。

長田先生や恩田心への態度が、ただの八つ当たりであることを。

けどどうしようもなかった。

正直誰も近づけたくない。

こういうとき優馬クンは何も聞いてこない。

俺は彼との付かず離れずの関係を心地よく思っていた。

学校からの帰り道、俺はオウルドールに遭遇した。

詳しいことは不明だが、どうやら陰キャ呼ばわりされた者が変身させられたらしい。

俺はグローブのフレイムとウインドの力を使い分けて戦い、最後はフレイムでとどめを刺した…。

「やはりネガティブな感情を利用しなければ、感情エネルギーは集まらないか…。」

俺--騎馬スレイプニル--は、自らが繰り出したオウルドールの成果を前に確信していた…。

ここから先は

0字

¥ 500

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?