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パリの空き巣手口

数ヶ月前、19年のパリ生活で初めて遭った空き巣。
朝いつも通り家を出た時には想像もしなかった、四角くぽっかりと切り抜かれたドア。
見違えた姿のドアを見た時は、あまりのショックに息を吐くのも忘れて、数秒間固まっていたと思う。

空き巣に遭い、荒らされた部屋を見て最初に感じたのは恐怖の混ざった怒り。 
夜中に警察に来てもらい現場検証が終わるまでの数時間、部屋に入れないまま被害状況を予測するだけの不安すぎる状況。

今まで空き巣に入られた人の話を聞いても、大変だな、かわいそう、くらいに思っていたけど、実際に自分が被害に遭って初めて心から分かる、見知らぬ他人に自分のものを物色される気持ち悪さ。

3年前に買ったMacBookはまた買い直せるけど、18歳の時にお金を貯めて日本で買った、思い出の詰まった腕時計はもう戻ってこない。
犯人にとってはそんな感情的な価値に意味はないのだろうけど。

翌朝は保険会社に連絡し壊されたドアの緊急修理をしてもらったり、警察署で被害届を出したり。
人生で初めて入った警察署。
受付のある部屋には、携帯電話の使用禁止の張り紙が四方の壁に貼ってあったのだけど、10人ほどいた中で電話をしていなかったのは私だけ。
嫌でも耳に入ってくる、他の人たちが警察署に来た様々な理由。
日常の、私の住む地区で実際に起きている事件の数々。
思わず何かお手伝いしましょうかと言いたくなるような、明らかに私より大変な問題を抱えている人たち。

警察署での待ち時間、前日の怒りは収まらないながらも、でももっと最悪の事態になっていたかもしれない可能性を思い浮かべる。
例えば犯人と鉢合わせしてしまったり、怪我をさせられたり。
例えばもしこれがパリに来たばかりの頃だったら、フランス語が分からず警察に状況を説明することもできなかったと想像するとゾッとする。

今回の件で学んだことがあるとすれば、被害への対応の順序だったり、書類関係の手続きについて。
これは経験しないと分からないものだとつくづく思い、そして今回確実に一気に上がったと思える経験値。

犯人が触った可能性のあるものはほぼ処分し、家中掃除をし、友人たちからの精神的サポートや、インスタでたくさんの方からメッセージをもらい少しずつ回復してきた心のダメージ。
それでも、空き巣の日から10日ほど経ってから盗まれていた事に気付いた物があったりして、あの日の不快感がまた蘇ってきたり。

この空き巣事件で心に深い傷を負った、なんて大袈裟なことは言わないけど、シャワーを浴びたらヒリっと滲みるくらいの心の擦り傷はまだしばらく治りそうにないように思う。

ただあの日、奇跡的に大切なカメラが盗まれなかったことには何か運命からのメッセージのようなものを感じていて、もっともっと良い写真を撮れるよう努力しなさいということなのかもしれないと勝手に解釈しています。

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