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老人狂詩曲 第2番

認知症を患っているおばがうちにやってきた。
だいぶ進んでしまった。

電柱の住所を読んでいる。

「○○町…○○町って言うのはmaiちゃんが住んでいるところ!」

そう!不思議ね。
私の息子の存在は忘れちゃっても住所は覚えているの?
そう思っていた。
👵「maiちゃんの子供…私会ったことあるんだっけ?」

息子が発達障害で受け入れられなくて辛かった時寄り添ってくれたのはおばちゃんだ。
maiちゃんは寝ていなさいと布団を敷いてくれてずっとモモと遊んでくれた。
美味しいご飯を作ってくれおばちゃんの車で近くの銭湯に行った。
おばちゃんはよくmaiちゃんがかわいそうだとポロポロ涙をこぼした。
もうその記憶は抜け落ちてしまったらしい。

ご飯を食べに行き帰る前にトイレに寄りたいと言うのでうちに寄る。

初めて来たかのように
👵「ここに住んでるの?」と聞く。
🐸うん、そう。
👵「誰かいないの?留守番とか…」
おばは私に旦那がいるのか探っているようだ。

トイレを済ませると車で待たせている弟(私の父)のことを忘れてしまったかのように

👵「コーヒーをもらおうかね」と言う。
🐸どれにする?
甘くないの、落とすの、甘いの…

インスタントを選んだのでお湯を沸かしクッキーと共に出すと

👵「あれ?これは何?コーヒー?淹れてくれたの?」

と自分が言ったことも忘れてしまっている。
姉である10歳年上のおばに

お前…顔付きが…違う人みたいだよと言われたくらいお洒落なおばは見る影もない。
👵「だって私はお姉さんだもの」
そう言ったのでみんな冗談かと笑ったが。
たぶん混乱しているのだ。

真っ白な白髪頭はフケだらけで払っても払っても黒いTシャツに落ちてくる。

おばを座らせコーヒーとクッキーを勧め、外で路駐で待つ父に事情を説明する。

👴「しょーがねぇなぁ(;^ω^)」と苦笑い。

父はそのまま車で待つ。
家に戻ると混乱した顔で
👵「あんた…○○(おばの娘)……?…かと思ったよ」

🐸似てる?従姉妹だから。私はmaiだよ😃

私もコーヒーを淹れおばと飲む。
さっきお寿司をたくさん食べたおばはクッキーを貪るように食べている。

👵「これ、美味しい😋💕」

🐸うん、昨日頂いたの。
神戸の有名なケーキ屋さんのらしい。

👵「今日は仕事はないの?仕事上手く行ってるの?」
もう三回目の質問だ
🐸うん、まぁまぁだね。
でも今日は土曜日だからお休みなんだよ

👵「あぁ、今日は土曜日…」
そう呟くのも三回目。

おばは食べ終わると斜め掛けにしていたカバンから大事そうに何かを取り出した。

それはおばちゃんの息子が産まれたての孫を抱く写真。2010年と書いてある。

👵「これ、○○(おばの息子の名前)これ、変じゃない?誰の子なんだろう…」

後ろに孫の名前が書いてある。
そして写真や手紙の束の中から見覚えのある文字。

👵「これ、maiちゃんの手紙」たぶんおばちゃんがいつも持って歩いているその手紙はボロボロ。10年前くらいに私が出したもの。

👵「住所は○○…」

うん。

こぼれ落ちる記憶に逆らうように私の手紙を持ち歩いていてくれたのね。

車に乗り込むとの窓を開け私の手を握る
👵「maiちゃん、いくつになったの」

🐸『おばちゃん私二十歳よ』

そう言うと、そう!二十歳なの?と。

🐸『おばちゃんも二十歳でしょ?』と言うと冗談とわかったようで

👵「そう!みんな二十歳ね!」と笑った。

一瞬昔の伯母の表情が戻った気がした。

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