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照らす明かりは 君の中に【群青日和 #2】

【試合結果】
3/30(土) 広島東洋カープ
〇6-1
[勝]平良
[敗]黒原

◇ ◇ ◇

何度見ても慣れないものは慣れない。

弾け飛ぶヘルメット。
現地でも、中継映像でも、目に映った瞬間に指先が急に冷えてくるような感覚になる。
何度もその瞬間がスロー再生される。
瞬く間に写真や動画がアップされていく。

ただ、カープの黒原を責める気には全くなれない。
以前も似たようなことがあり、SNSでかなりの誹謗中傷を受けていた。
このマウンドに戻ってくるまで相当な苦心と努力があったはず。
本人も覚悟を持って、突然やってきたチャンスに意気込んでいたと思う。
結果としては残念なことになってしまったけれど。

度会はほどなくしてグラウンドに戻ってくる。
避け方とフェイスガードのおかげで大事には至らなかったようだ。

続く佐野の打席ですかさず盗塁を決めて見せる。
動けます、ちゃんと全力プレーできますよと皆に示すような、プロ初盗塁。
結果を出すためというより、プレーそのもので自分も周りも鼓舞していく選手なんだろう。

試合後にこんなコメントを残せる新人は、さすがに初めて見た。

◇ ◇ ◇

ルーキーが開幕早々なかなかハードな目にあっている中で、兄さん達の心に火が点かないはずもなく。
とはいえ怒りの声を上げたりだとかは、中継を見る限り無いように見えた。
でも、随所に燃えるものは確かにあった気がしていて。

2回裏、オースティンがタイムリーツーベースを放った場面。

崎陽軒・シウマイの広告方向、右中間へ伸びていく打球を放つと、ヘルメットを置き去りにして猛ダッシュ。

立ったまま二塁ベースに辿り着くと、雄々しく右腕を振り上げて、もっとだ!もっと打つぞ!と言わんばかりにベンチを激しく鼓舞する。

ベイスターズがヒットを重ねて点差は広がる一方なので、決して痺れる展開ではない。
それでも仲間をさらに鼓舞する理由は明言された訳ではないので推測の域を出ることはないけれども、チームとして絶対にこの試合勝ち切る、という気迫が滲んでいた。

◇ ◇ ◇

そういえば色々あって吹っ飛びかけていたけれど、今日最初の打点は牧秀悟が上げていた。

度会が治療のためベンチ裏に引っ込んでいる間、牧はずっとアナリストと一緒に何か言葉を交わし続け、資料をじっくり読み込んでいた。

両軍のベンチがバタバタした空気の中、落ち着いた空気を纏って集中を高めている。

2球目よりさらに甘く入った高めストレートにバットを被せるように合わせて、ランナーが得点圏に居るときはこう、とでもいうようなセンター返し。

二遊間の真ん中を打球が弾んで抜けていくのを確認すると、ぽんぽんと手を叩く。
決めたったわ、とヘルメットのつばをなぞって、ベンチに向けてぴしっと指を差す。
振る舞いは陽気だけど、いつものような笑顔はない。
意識はもう完全に次のプレーに向かっている。

いつにも増して集中のレベルが一段階高い。

オースティンは言葉にこそしていなかったけれど、キャプテンは明言していた。

「度会が当たってしまい、チーム全体がなんとかして1点を取りにいこうという気持ちになった」

記事文中より


真剣勝負の中で起きてしまうことは、仕方のないこと。
それでも全てを割り切ることは人間なのでなかなか難しい。

野球の中で起きてしまったことは、野球の中でケリをつけるしかない。

私はそれを応援するだけ。

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