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遠回りする度に 見えてきたこともあって【群青日和 #12】

【試合結果】
4/12(金) 東京ヤクルトスワローズ
◯3-1
[勝]東
[敗]サイスニード
[S]森原

◇ ◇ ◇

そうか桜が満開なのか、今年こそお花見がしたいな。
なんて思っているうちに春の嵐が通り過ぎていき、家を出る前にひっつかむアウターが薄手のものに変わったかと思うと、とうに桜の花びらは半分ほど減ってすっかり葉桜になっていた。
お花見っていうものは、

  • 季節の変化に敏感で

  • 気軽に誘える友人が何人かいて

  • お花見スポットを先に下調べする計画性のある

そんな条件を満たせる、普段から真面目に生きている人が楽しめる高度なイベントなんだな。
残念ながら私はどれも満たすことができていない。

でもまあ、この行き帰りの間に横目で眺める葉桜も悪くないのよ。
人が感じる幸せと、自分の幸せは同じ形をしていないから。
落ち着いて考えれば当たり前のことが、生活の中で降り積もってくる小さな疲れや悲しみに埋もれて見えなくなることは、ままある。

◇ ◇ ◇

注目される立場というのも、なかなか大変なもんだ。

開幕2試合連続で本塁打を放ち大暴れした後は、9試合で打率.135に。
『急失速のDeNAドラ1度会』なんで見出しが躍ること自体すごいんだけどね。
急加速しなきゃ急失速もない訳で。
どうにかしよう、と食らいついているのも打席の姿勢に出ていた。
例えば4月7日、東京ドームでの試合。
最終打席、ピッチャーゴロに打ち取られた、と思ったらまるで高校球児のように一塁ベースに向かって頭から飛び込んだ。
どうにかしたい、どうにかなれ、という思いがそのままユニホームの汚れになってこびりついているようで。

兆しはあった。
4月10日、中日ドラゴンズ戦。最後の打席、8回裏。
齋藤綱記が投じたインハイのストレートを弾き返した。
灯るHのランプ。
シーズンが始まって以降ずっと苦戦していた左投手。
今までにないアプローチでセンター前に。
もう少し。あとちょっとで暗いトンネルを抜けそうな。

最初の打席で、三塁ベースに当たって跳ねるツーベースヒットを打ってからはもう、どこまでも伸びやかで。
ずっと歓声の真ん中には度会隆輝が居た。

壁に当たるのも早ければ、乗り越えるのも早い。

「自分がブレないような言葉を見つけるとかでもいい。そうやって乗り越えていくんだよ」

開幕2戦連発→9戦打率.135…急失速のDeNAドラ1度会 「芯を持て」名伯楽が送る“金言”
記事文中より

度会がブレなかったのはなんだろう。
入団会見での彼の姿を思い返す。

「自分は常に笑顔を大切にしているということで、笑顔を大切にして全力プレーで頑張りたいと思います」
《中略》
「改めて応援してもらえる喜びを知りました。応援してもらっている以上自分はもっともっと頑張って、皆さんを幸せにできるようにやらないとなという自覚がより一層強くなりました」

全力プレーと笑顔、

そして、応援されていることを実感し、ファンを幸せにしたいという思い。

「いいぞいいぞ隆輝!いいぞいいぞ隆輝!」

勝ち越しとなるタイムリーヒットを打った後の守備回。
ライトの定位置に向かう度会に向けて、スタンドからコールが起こる。
それを聞いて立ち止まると、彼はゆっくり深く一礼する。

ライトスタンドに向けてだけではない。
向きを変えて、今度は内野席にも向けて、深く深く頭を下げる。

あまりにも彼が明るくて眩しくて、
「口だけじゃないのか」
「調子に乗っているんじゃないか」
なんて誤解されているのも、たまに見受ける。

たった一度でいい、どの席からでもいい。
ぜひその目で見て欲しい。

中継カメラに映りきらないたくさんの人々が幸せそうに、度会隆輝という選手に向かって手を振り、歓声を送っているから。

またきっと、厳しいプロの世界の壁に阻まれる日が近いうちにやってくる。
私は、それでもブレずに最短距離で遠回りする度会隆輝を追い続けたい。

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