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自分で選んだ その色で【群青日和 #14】

【試合結果】
4/14(日) 東京ヤクルトスワローズ
●0-9
[勝]ヤフーレ
[敗]大貫

◇ ◇ ◇

シーズンが始まってすぐのこの時期は、入団して間もない新人選手や昨年は一軍メンバー入りしていなかった選手に注目が集まりやすい。

でも、私は牧秀悟の表情がずっと気になっていた。

基本的には変わっていないように見える場面が多いのだけど、ふとした時におや?と思う一瞬がある。

たとえば、試合に勝った後にマウンド周辺で集合するひととき。
去年の牧はゲームセット後、皆が集まる輪の中に加わると、チームが勝った喜びを隠さなかった。

2023年9月25日の試合終了後
喜び合う牧とその他の選手たち

おや?と思ったのは今年2回目に見届けた勝ち試合の後。

皆の元に駆け寄りハイタッチを交わし、そこまでは今まで通り。
そこから離れてベンチへ向かう一歩を踏み出した時、牧は下を向き口をきゅっと結んで、己の気持ちを引き締めるようにグラブをポンと叩いた。

2024年4月12日の試合終了後
少し見えにくいけど、牧に笑顔は無かった

キャプテンになったことで、どう見られるかを意識しているのか、いままでみたいに一勝で浮かれちゃいけないと気を引き締めているのか、それはこちらが伺い知ることはできないのだけど。

他の選手と比べると感情表現が豊かなタイプの選手なので、この変化は私の中でも相当の驚きで。
自律心を前に出す、背中で引っ張る主将になりたいのかな。
そう思い、今年のオフィシャルイヤーマガジンを引っ張り出してみた。
毎年3月末、シーズン開幕直前に刊行されるこの雑誌は普段あまり読むことができない全選手のコメントや、特集インタビューが多く組まれている。
選手たちの今シーズンに向けた所信表明、掛ける思いなんかが丁寧に取材されているので、かなり読み応えのある一冊。

パラパラとページを捲ると、巻頭特集で三浦監督の次にインタビューが組まれていたので早速読み返してみる。

“自分”というキャラクターをしっかり出して、明るさでも引っ張っていきたい。

インタビュー「自分だけのキャプテン像」より

一度読んだので頭に入っていたと思っていたが、改めて読み返してみて驚いた。
今自分が見ている牧秀悟のキャプテン姿と、なかなかに差がある。
明るさで引っ張る。本当に?
むしろ勝った後も表情が弛まないように自分を律して、あえて明るい雰囲気の真ん中には行かないようにしているようにすら見えた。

印象的だった牧の姿がもうひとつある。
3月15日、楽天とのオープン戦。
ちょうどその少し前に体調不良で戦線離脱し、その日のスタメン発表にも牧の名前は並ばなかった。

しかし自ら志願しベンチ入りし、自分は試合に出ずともその日出場した選手たちとコミュニケーションを熱心に取る姿がそこにあった。
イニングの間、攻守交代の際は必ずベンチ前に出て大きな声を出して活気づけたり、一人一人に対して絶え間なく、細やかに声を掛けたり。

たまたまベンチの上付近に席を取ったので、
牧の声が本当によく聞こえた

やっぱりそこでも明るさというより、責任感とかそういう言葉が思い浮かぶ。

プロ4年目。
初年度から誰もが認める成績を出し続けてもうチームの真ん中に居るのが当たり前の存在になった。球界を代表する選手として侍ジャパン入りも果たし、世界の頂点に立つ経験も積んだ。
こうやって文章にするととても順風満帆で、挫折知らずの3年間のように見える。

開幕して2週間と少し。
キャプテンという肩書きは置いておくにしても、私がよく見てきた牧と比べると少し元気がないように感じる。
強い打球が出たり、出なかったり。
今日の二打席目、フェンスぎりぎりまで飛ぶかと思われた打球が急に失速し、外野フライに打ち取られた時に少し首を傾げていた。
感覚が戻りそうで戻らず、本人が一番もどかしく感じているんだろう。

「キャプテンになったことで精彩を欠いている」

こんな意味合いの言葉を目にした。
状況が良くない時、人はすぐに安直な理由を見つけて飛び付きたがる。
そんな簡単な話なら、キャプテン制度はこの世界からとっくに廃れているだろうに。

一選手としてだけでなく、キャプテンとしての正解を見つけようともがいている。
私の目線からみた牧秀悟は現状、そんなところだ。
見たことのない場所にチームを導くために、自分のあるべき姿を探しているような。
当然、こちらもその場所はたどり着いたことが無いので見守ることしかできない。
でも、そんなに肩に力入れなくてもいいんじゃない?とも思う。
ミスや怠慢もオッケーオッケー、なんていう意味ではない。
一球一球の勝負を楽しむ余裕が持てるくらいの準備をすればいい。
このチーム、皆が楽しそうに野球やってる時が強かったりするし。

三浦監督が就任した初年度にルーキーとしてやってきて、あっという間にチームの顔になって。
今年は“二度目のルーキーイヤー”、そう思ってやってくぐらいでいいんじゃないかな。
キャプテン1年目って、つまりそういう事。

だから、別に笑ったっていいんじゃない?

まだ4月。
2024年の横浜DeNAベイスターズも、“キャプテン牧秀悟”も、生まれてまだ日が浅い。

自分の色が見つかるまで、悩んでもがいて、あきらめないでさえいればいい。

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