C調のすすめ

 C調ってことば通じるかな? むかーし流行った言葉で、要は「調子いい」ということ。チャラチャラした感じをよく表してると思って結構お気に入りだ。

 ただ、わたしは根っこからC調な人間のことは大ッ嫌いだ。わたしは真面目で責任感も強いので、いい加減なことを言って、面倒なことから逃れるようにふらふら生きてるヤツを見ると腹が立ってしょうがない。

 真面目であることが絶対の正義であると信じて疑わない。そして、真面目にやってりゃ報われると思ってた。結果割食う半生になった。

 真面目にやっても報われないのよ。美しくもないしね。あれはドラマの中のハナシ。加えて、折り目正しく真面目な態度というのは周りの人に威圧感を与えるらしく、愛されもしない。

 真面目で勤勉が美徳な時代はとっくに終わったのに、わたしは相変わらず真面目な態度を崩せずにいてやや苦しい。

 会社で同僚がテレビドラマの話をしていてもわたしにその話題を振られることはない。でもね、わたしもドラマ、めっちゃ観るよ。その映画も観たよ。あの芸人、オモシロイよね。

 わたしがその輪の中に入っていくと「え?」って雰囲気になるんだ。なんで入ってきたの?って雰囲気。結果その語らいは尻すぼみになってお開き。いじめとかシカトでは全然ないんだけど、わたしだって知ってるよ。真面目なヤツと話しててもつまんないって。

 幸いわたしは営業職だったことがあって、たくさんの人とコミュニケーションをとらなくてはいけなかったことで、この「真面目なイメージ」を払拭する技を身につけることができた。それがC調だ。

 毎日何十人という人と顔を合わせて挨拶をして会話をする。そんな中で、これまでのようにひとりひとりに真摯に向き合っていたんじゃ疲れてしまうと気付いた。わたしがどんなに心を込めて接したところで相手はだいたい真剣に話など聞いてはいないのだ。

 かしこまって話をするより、ちょっとくらい「いいかげん」なほうが、相手は喜んでくれる。ある時、お客さんが「迷子ちゃんってカワイイよね〜」とお世辞を言ったときに、こう返した。

 「知ってた」

 これまでのわたしならば「そんなことないです!」と謙遜するか、返答に困って苦笑いするところだ。それを、そんなこと言われなくとも知ってる、と返したわけである。まったくC調の返しだ。すると相手が「こりゃいいや」と喜んだ。そしてなんと、わたし自身もなんだか楽しい気持ちになった。

 もちろん、根っこは真面目なままなんだけど、うわべだけC調を気取ることは、わたしを楽な気持ちにさせてくれた。さすがに会社の同僚が持つわたしのイメージを崩すことは難しいのだけど、これからだってたくさんの人と言葉を交わして行くんだから、楽で楽しいほうがいいに決まってる。

 わたしはちょっとずつ、テキトーで調子いいことばを身につけ、だいぶ楽に人と接することができるようになった。

 C調コトバはホントにちゃらんぽらんなヤツにじゃなくて、真面目な人にぜひ奨めたい。

 ということを真面目に語ってみたわけである。

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