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弁当屋で注文しないで静かに帰った話

両手に買い物袋を持って帰る途中、ご飯つくるのめんどくさいと思ってちょうど目にとまった弁当屋に入ってみた。できたての弁当を売るタイプの店だった。

注文カウンターに店員さんがいなかった。しばらくしたら出てくるかな?と思いしばらく待っているうちに新しいお客さんが入ってきた。

常連さんかたびたび来る人に見えたので、カウンターの奥に「すみませーん」と声をかけて店員さんを呼び、常連さんとおぼしき人に「決まっているならお先にどうぞ」と順番を譲った。譲ってしまうのはわたしの癖だ。

唐揚げ弁当がおすすめらしかった。ならそれを注文しようかなとルンルンしながら「常連さん」が注文するのを待った。「常連さん」も唐揚げ弁当をいくつか注文していた。

すると「あー、唐揚げね、あとひとつ分しかないんですよー」と店員さん。「常連さん」は唐揚げ弁当を1個しか買えなくなった。

いやいや待て。それはつまりわたしは1個も唐揚げ弁当を買えないってことじゃないか。

よかれと思って順番を譲ったのはわたしの勝手。結果買いたい弁当が買えなくなった。

次のお客さんが入ってきたのをきっかけにわたしはそっと店を出た。別の弁当を買うという選択も、またその気力ももはやない。

こうやって、わたしは日々何かに敗北している。他の誰もそのことを知らずに。

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