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立華高校マーチングバンドへようこそ 後編 響け!ユーフォニアムシリーズ 武田綾乃

『水色の悪魔』

そんなこんなで
立華高校の後編です。
マーチング三昧ですね。
濃霧が晴れて、青空が拡がって行くかの様な、爽やかで清々しい読後でありました。
終盤にちょびっと涙して、もうエピローグとか、ホント最高かよ。

佐々木梓は、立華高校吹奏楽部の1年生の中で、トップ奏者として認められていました。
弛まぬ努力も欠かさないですから、順風満帆と言って間違いありませんが、その一方で吹奏楽以外での、漠然とした不安の様なものが大きくなっている様でした。

梓の吹奏楽との出会いも明らかになって、それが必要に迫られたもので、何とも健気と言うかしっかりせざるを得なかったと思うと、その優しさと共に少しだけ切なくもありました。
勿論、高校へ推薦入学で吹奏楽を続けているのは、トロンボーンに適性があり、努力を積み重ねる才能があったこそで、今となっては、その原点も事情も切掛に過ぎませんし、高校生ともなれば枷にもなりません。
そう言った事情以前に好きだからこそ、続けられているのは、確かなんでしょうね。

疎遠となっている吹部以外の友人だった、柊木芹菜との中学時代の様子も、悪くは無かったと言うか、寧ろ良かったです。
但し、本質を見抜く力はある様でしたが、口が辛辣で言葉を選ばないので、梓が核心を突かれていると自覚していたかどうかは別として、反発してしまうのも仕方の無い事でした。

吹部が、自分自身のパフォーマンスが順風満帆であればそれで良いなんて、そんな事を言いそうなのは高坂麗奈くらいですが、まぁ麗奈も黄前久美子の存在で変化しています。
梓もまた、初心者だった同期の名瀬あみかの面倒を熱心に見ながらも、あみかの成長に伴い関係性がギクシャクした辺り、芹菜の指摘についても改めて自分と向き合って、成長する時だったのでしょうね。

立華の吹部が、強豪として成熟していると思えるのは、先輩誰もが後輩の様子を良く見ていて、的確なアドバイスや指導を躊躇無く出来ますし、時には嫉妬や劣等感をも隠さないところで、凄く風通しが良いのです。
風通しが良ければ、チームワークや一体感を醸成するのも、難しくは無い筈です。
嫉妬心や劣等感を持つ事は、必ずしも悪いと言う訳でも無くて、前へ進む原動力ともなりますから、それを悪意として当人にぶつける事が悪いのです。
立華は、吹部の伝統校であり強豪校でありますから、部員夫々にそうした愚行が部にとって、何より自らにも糧にならない事を理解しているのでしょう。

先輩や同期のアドバイスや気遣いで、梓とあみかの関係性が改善されて行く訳ですが、必要とされない自分を梓は恐れていたのです。
てっきり孤独を恐れているかと思っていましたが、より深刻でありました。
そうは言っても、梓の事情を思えば複雑な心持ちであります。
吹奏楽部の次期エースとして、嘱望され必要とされている筈ですが、そう言う話でもありませんね。
それはある意味、依存でもあります。
依存と言えば『リズと青い鳥』、『リズ』と言えば依存でお馴染みの"のぞみぞ"(傘木希美、鎧塚みぞれ)が思い浮かびましたが、似て非なると言うか、希美は最終的にはフルートを選ぶと思われますから、違うと思います。(個人の見解です)
それはそれとして、他に梓の頼る事が出来ないとか、嫉妬心なんて可愛いものでありますが、周囲の働き掛けから、自分と向き合い素直な気持ちで其れ等を認めて、現状を打破してちゃんと成長が出来ていましたね。
あみかの計らいで、芹菜との関係性もまた、お互いに本音を曝け出して、改善の兆しがありました。
完璧超人の様な梓も、案外不器用で年相応だったのですね。

吹奏楽であれば、努力と練習を重ねて行けば、個人差があるにせよ、成長は出来ます。
人間関係は、単純なものではありませんし、相手あってのものですから簡単ではありませんが、誠実に向き合う事しか無いのかも知れません。
まぁ、大いに悩んで、誰かに頼って、焦らずにじっくりと答えを見付けられれぼ、大きく成長出来るでしょう。

ホント素敵な吹奏楽部ですし、素晴らしい部員ばかりでありました。



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