憧れの姉

私は二人姉妹の妹。

姉とは3歳離れている。

私にとっての姉は、いつも笑っていていつも弱っている、わがままで、優しくて、素直で、頼れるけど頼れない、天真爛漫なイメージだ。

小さい頃から、姉のマネばかりしていた。遊びも習い事も、全部全部。

いつも笑顔の姉に対し私は引っ込み思案で姉の背後に陰のようにできるだけ張り付いていた。言葉も発さず、姉に通訳させ、姉は大人達と話す。

「憧れの姉。」

「憧れの姉。」

私が大学で東京に出てきても、姉は両親と地元で一人暮らしをしながら仕事をしていた。母と映画に行ったり、彼氏との揉め事の相談をしたり、姉自身が体調を崩して入院していたり、けっして姉の身に良いことばかりが起こっているわけではなかったけれど素直に両親に甘えられる姉が羨ましかった。思い返してみれば、そんな感情を抱き始めたのはわたしが中学生くらいからだった。

いつも間にか、憧れの姉が嫉妬の対象になっていて、姉の姿は「親に心配かけない」という自分なりの正義感というか責任感からくる反面教師みたいに見ていた。

「なんで姉ばかり」

「私は蚊帳の外」

「私は一人でも大丈夫、ねえ、見て見て!大丈夫でしょ?」

わたしは家族への甘え方を忘れた。カウンセリングの先生に「家族に甘えなさい、そしたら何かが変わるかも」と言われて向き合って話してみたり努力をした。

夢を見た。母に抱きついて泣いている私。シチュエーション的には(本当は違うけど)実家の和菓子屋がお婆ちゃんが亡くなってしまって存続するかどうかって時、わたしは「私がやる!」と言ってお婆ちゃんが亡くなった事に対する涙を流していた。でも気づいていた。本当は、母に、「辛い」とか「一緒にやろう」と言いたくてもいえない涙だった。グッとこらえた涙だった。姉は近くに立って見ていて笑顔だった。

夢でも素直になれず、姉に向ける感情は一緒。

良い大人のくせにひねくれる私に対し、姉は私を可愛い妹の「りーちゃん」と言う。そんな姉がわたしはやっぱり大好きで。子供の頃に遊んで笑った事とか、怒られた事とか、泣いた事とか、沢山思い出しても姉がいて良かったと心から思う。

大人になるにつれて色んな感情を知ってしまったから複雑にしてしまったけれどやっぱり単純に、私の中では

「憧れの姉。」のままなのかもしれない。


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