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【砂雪】1/24の短篇

降り出したときはぼた雪だった。だから今日は積もらないのかと思った。暖かい部屋の中から、窓の外を見やる。降り始めに外が見えるように窓の結露をしっかりと拭いた。その窓がまた一面曇りガラスになる頃、砂雪に変わっていたようだった。

「砂雪」は私だけの呼び名。個人的な感覚的なものだけれど、粉雪という呼び方はしっくりこない。だから、みんなが粉雪と呼ぶ雪のことを私はずっと砂雪と呼んでいる。

砂雪という言葉には、雪の粒感がある。触れたときの冷たさから走る痛みのようなものも。雪はどこまでもさらさらとした無害なものではない。それを表すのにぴったりな表現だと思うから、密かにこの表現を気に入っている。

あまりにも砂雪がしっくりきすぎていて、ついうっかり友達に「今日の砂雪がさぁ」などと言わないように気をつける。別に教えてあげてもいいんだけど、独り占めしたい。冷たくてトゲトゲしているのに美しい砂雪。砂雪は私だけのもの。