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謎を解き、街を読む【まいまい京都のめざすもの②】

不自然なカーブに気付けるか

ガイドさんとまちを歩いていると、意外なところで立ち止まる。なんの変哲もない道路。ガイドさんは話しだす。「この道、見てください。なんかここだけカーブしていますね」。言われてみればたしかにそうだ。ガイドさんは続ける。「なんでやと思います?」。何気なく歩いていた道に、とつぜん「謎」があらわれた瞬間である。

たしかに、ここだけ道が曲がっている。なぜだろう。参加者一同、あたりを見回してみる。そういえば、さらに、このあたりだけ、民家と道路のあいだに妙なスペースがある気がする。ガイドさんに伝えてみる。ガイドさんは満面の笑みになる。「そうなんです、ちょっと不自然でしょう」「この道は、かつて路面電車が走っていたんです。ここは線路のあとなんですよ」「線路は、もともと川だったところに引かれていていたから、ゆるやかにカーブしているんです。線路があったから、この一帯は住宅が斜めに配置されているわけですね」

そして、ガイドさんは畳みかける。「ではなぜ、川の上に線路が引かれたんでしょう」。謎が謎を呼び、参加者たちは次なるヒントを求めて歩き、そして立ち止まり、考える。まいまいのツアーは、距離でいえば1.5kmから3kmほど。ふだんなら30分程度で歩いてしまう距離を、2時間かけて謎解きしながら歩くのである。

見慣れたまちも「謎」だらけ

「ツアー」というと、見知らぬ土地を訪れるものというイメージが一般的かもしれない。しかし、まいまいツアーは、馴染みのある地域を歩くのがおもしろい。よく知っていたまちのはずなのに、ガイドさんと歩くと、自分の知らなかった側面をどんどん発見するからだ。

言ってみれば、まいまいのツアーは「謎解き」なのだ。まちには謎があふれている。不自然なカーブ、妙な形状の空き地。これらはすべてまちの生態を読みとくヒント。しかし、私たちは、それが「謎」だと気付くことができない。

しかし、ひとたびガイドさんと歩くと、見過ごしていたまちの特徴が「謎」として浮かび上がる。「どうして道が曲がっているの?」「どうしてここに空き地があるんだろう?」まいまいツアーに参加するといたるところに【?】が生まれ、それが次第に【!】へ変わる。と同時に、【!】はあらたな【?】を連れてくる。まちには、解いても解いてもなくならない謎がある。

「まちを読む」というリテラシー

この謎解きを体験すると、まちがもつ普遍的な原理をつかめるようになってくる。べつのまちを歩いているときにも、道幅や道の勾配などちょっとした違和感を察知し、そこに来歴を感じられるようになるのである。

「まちを読む」というリテラシーが身につくのだ。まちが読めるようになると、見える世界はガラリと変わる。まいまい京都が提供しているのは、まちを歩く2時間の楽しさだけではない。その後の人生をより豊かにしていく視点をも共有しているのである。


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