以倉敬之│まいまい京都/東京 代表

「まいまい京都」代表。御用庭師や考古学者など、600人を超える各分野のスペシャリストと…

以倉敬之│まいまい京都/東京 代表

「まいまい京都」代表。御用庭師や考古学者など、600人を超える各分野のスペシャリストとともに、年間約1,000のまち歩きツアーを開催。2018年には「まいまい東京」スタート。京都モダン建築祭、神戸モダン建築祭、東京建築祭実行委員。NHK「ブラタモリ」清水編・御所編・鴨川編に出演

最近の記事

「コトでなくヒトが主役」 〜トラベルジャーナル2023年4月17日号掲載コラム

ぶらっとまち歩き着地型プランニングガイド vol.1 (2023/4/17) コトでなくヒトが主役まち歩きの人気が高まって久しい。かつては旅行といえば温泉につかり宿でゆっくりと過ごしたり、観光バスで名所旧跡と土産物店を回ったりというのが定番であったが、近年は旅先でまちを歩き、地元の人と交流したいという方向へ人々の興味が向いてきた。 大型バスで施設に乗り付ければよかったハードウエア型「モノの観光」から、ガイドブックを片手に物語をなぞるソフトウエア型「コトの観光」へ。さらにガ

    • 「建築祭」という名前の理由【まいまい京都のめざすもの⑥】

      前回の記事では、まち歩き団体であるまいまい京都/東京が「建築祭」に関わる理由や意義をまとめた。今回は、建築祭がもたらす影響やビジョンについてお伝えしようと思う。 建築祭を通じて、まちと人が動きだす 京都モダン建築祭、神戸モダン建築祭を実施してみて感じたことがある。そのひとつが、建築をひらくと、まちにも人にも変化が起きるということだ。 建築祭に向けて、私たちは貴重な建築を所有・管理している方に、公開のお願いをしに出向く。すると、いろいろな反応がある。ぜひに、とすぐに趣旨に

      • まち歩き団体が「建築祭」に関わる理由【まいまい京都のめざすもの⑤】

        世間を賑わす「建築祭」とは近年、全国各地で建築イベントが盛り上がっている。大阪、福岡、広島、愛知。 そんななか、2022年は「京都モダン建築祭」が初開催され、2023年には「神戸モダン建築祭」がスタート。そして、2024年5月25日〜25日には、ついに東京へ。いままさに「東京建築祭」の実現に向けたクラウドファンディングが実施されていて、すでにたくさんの支援や応援が集まっている(2023/5/8まで)。 これらの建築祭は、建物の一斉公開イベントだ。ある期間、ふだんは公開されて

        • ガイドさんを輝かせる「同行スタッフ」【まいまい京都のメソッド公開⑨】

          ここまでの記事で見てきたように、まいまいツアーでは同行スタッフという存在がとにかく重要なのだ。具体的な業務内容についてはこの記事とこの記事でまとめたので、今回はそれらの業務がどんな意味をもつのか、すこし抽象化して考えてみる。 ■まいまいツアーの「らしさ」を保つ存在として同行スタッフは、まいまいツアーの「らしさ」を保つ存在でもある。まいまいツアーは多種多様だ。ガイドさんも変われば、歩く場所もテーマも、参加者さんだって異なる。ツアーの構成要素はてんでばらばらだが、まいまいのスタ

        「コトでなくヒトが主役」 〜トラベルジャーナル2023年4月17日号掲載コラム

          同行スタッフのお仕事2:マネジメント【まいまい京都のメソッド公開⑧】

          前回の記事では、同行スタッフの役割のうち「ファシリテーション」に注目してご紹介した。まいまいの同行スタッフは、前回まとめた「ファシリテーション」と同時並行して、一般的な添乗員がおこなう「マネジメント」をおこなうところに特徴がある。今回は、まいまいツアーでスタッフが行っているマネジメント業務を一覧してみる。 ■進行管理する「タイムキーパー」としてツアーの開始時間も終了時間も決まっている。終了後のご予定があったり、帰りの交通手段を予約している参加者さんもいるため、ツアーの終了時

          同行スタッフのお仕事2:マネジメント【まいまい京都のメソッド公開⑧】

          同行スタッフのお仕事その1:ファシリテーション【まいまい京都のメソッド公開⑦】

          まいまいのツアーは、ガイドさん、参加者さん、そして同行スタッフという3つの立場の人たちがつくりあげるものだ。巷のまち歩きでは、ガイドさん以外は同行しないケースも多いけれど、まいまいでは「同行スタッフ」という存在が欠かせない。 同行スタッフが担う仕事は、大きく「ファシリテーション」と「マネジメント」に分けられる。旅行会社の添乗員はおもに「マネジメント」を担っている。まいまいの同行スタッフの特徴は、「ファシリテーション」も同時におこなうところにある。今回の記事では「ファシリテー

          同行スタッフのお仕事その1:ファシリテーション【まいまい京都のメソッド公開⑦】

          集客につながる写真の選び方【まいまい京都のメソッド公開⑥】

          告知記事において、写真はきわめて重要だ。1枚の写真によって、魅力が一気にアップすることがある。まいまいでは告知ページに6枚の写真を載せているが、集客につながる写真をどう選んでいるのか。その考え方をまとめてみる。 ツアーを外から見たり、中から見たりコースタイトルが表現している内容を、6枚の写真であらわす。これが写真選びの基本だ。6枚にはそれぞれ異なる役割がある。選ばれた写真1枚ずつの意味を紹介していこう。 こちらのコースの告知ページを見てほしい。びわ湖を一周するという人気コ

          集客につながる写真の選び方【まいまい京都のメソッド公開⑥】

          リード文には主語がない【まいまい京都のメソッド公開⑤】

          盛り込まれるのは、誰の「主観」?前回の記事で、リード文を書くときの心構えをまとめた。心構えをひとことで言うなら「主観の発露を恐れない」ということ。「主観」と言ったが、これはガイドさんの主観だけではない。まいまいのツアー担当者としての主観も、参加者の主観も、リード文には盛り込まれているのがポイントだ。 まいまいのリード文には共通点がある。それは「主語を伏せる」ということだ。1つのリード文のなかで、ガイドさんになりきって案内するように書くこともあれば、主催者としてガイドさんを紹

          リード文には主語がない【まいまい京都のメソッド公開⑤】

          刺さるリード文をつくるコツ:主観の発露をおそれない【まいまい京都のメソッド公開④】

          ここまでの記事で、ツアーへの期待感を高めるリード文の書き方をまとめてきた。構成のコツや言葉の選び方のコツを紹介したが、もうひとつ重要なポイントがある。それは、書くときの心構えだ。 リード文は、一般の人にもガイドさんにもツアー先の方にも読まれるもの。そう思うと、どうしても「正しいものを書こう」と肩の力が入ってしまう。そうすると、どこにでもありそうな無難なリード文にしかならない。 参加者の心をつかむリード文はどうやったら書けるのか。それは、主観をおそれずに出すことだ。その主観

          刺さるリード文をつくるコツ:主観の発露をおそれない【まいまい京都のメソッド公開④】

          意味や実感を伝えるリード文の推敲プロセス【まいまい京都のメソッド公開③】

          前回の記事では、リード文のつくりかたを紹介した。完成したリード文を詳しく分析しながら、それぞれの段落にどんな意図があるのかを解説していった。今回は、その一歩手前を扱う。リード文を推敲するプロセスだ。まいまい京都ではどのような方針で推敲するのか、ご紹介しよう。 ファクトだけでは伝わらないまいまいツアーのリード文は、参加者の視点に立って、ツアーでどんな体験ができるのかを語っている。そのときに重要なのは、そこを実際に訪れた人のリアルな実感だ。もっと具体的にいえば、その場に行くと何

          意味や実感を伝えるリード文の推敲プロセス【まいまい京都のメソッド公開③】

          期待を高めるリード文のつくりかた【まいまい京都のメソッド公開②】

          ■ツアー告知は「予告編」前回の記事で、まいまいツアーのタイトルのつくり方を紹介した。タイトルが決まったら、次はリード文をつくる。リード文とは、告知ページの文章のことだ。これをかなりの熱量で準備している。 まいまいのリード文は、予告編のようなものだ。映画の予告編は、2時間の本編を数十秒に再構成している。そこでは本編のストーリーどおりに情報が並べられるとは限らない。終盤の華やかなシーンが冒頭におかれることも多い。 私たちのつくるリード文も同じだ。これは予告であり、説明文ではな

          期待を高めるリード文のつくりかた【まいまい京都のメソッド公開②】

          集客に直結する「タイトルづくり」3ヶ条【まいまい京都のメソッド公開①】

          ■まいまいツアーはマニアック?まいまいのツアーは「マニアック」だと言われることがある。たしかに廃線跡をめぐったり、土塁をたずねたりと、よそではあまり例のないツアーは開催している。けれども、けっしてマニア向けではない。 むしろ、そのジャンルに詳しくない初心者の目線から見て、面白いかどうかを重視している。たとえば廃線跡をめぐるというマニアックに見えるツアーであっても、鉄道の知識がない人にも楽しめるようにしている。言い換えるならば、すでに鉄ちゃんになった人だけでなく、これから鉄道

          集客に直結する「タイトルづくり」3ヶ条【まいまい京都のメソッド公開①】

          「誇りと稼ぎ」が社会を豊かにする【まいまい京都のめざすもの④】

          デフレマインドが未来を潰すこんな話がある。あるまちに、安くておいしい蕎麦屋さんがあった。値段は昔から変わらず、かけそば1杯380円。お店の主人は頑なに値上げをしない。奥さんとふたり、家賃のかからない持ち家で、経費を最小限にしてつつましく働いてきた。まちで長年愛された店だ。しかし、子どもに継がせるつもりはないようだ。息子は都会でサラリーマンをしているらしい。その店は一代で閉じることになる――。 この手のことは、ごまんとある。昔ながらのおまんじゅう屋でも、金物屋、農家だってそう

          「誇りと稼ぎ」が社会を豊かにする【まいまい京都のめざすもの④】

          トキ消費から見る まち歩きという“祭り”【まいまい京都のめざすもの③】

          コト消費からトキ消費へ「トキ消費」という言葉があるという。時間を共有することに価値をおいた消費行動を指す概念だ。 「モノより思い出。」というキャッチコピーが流行ったのは、たしか1999年。そのころから、生活者が求めるのは「商品」ではなく「体験」にシフトしたのだと言われている。「モノ消費からコト消費へ」という表現をよく聞いた。 近年では、「コト消費」が「トキ消費」へと変わっているという。体験に価値を置くのは同じであっても、その時、その場でしか味わえない盛り上がりが求められて

          トキ消費から見る まち歩きという“祭り”【まいまい京都のめざすもの③】

          謎を解き、街を読む【まいまい京都のめざすもの②】

          不自然なカーブに気付けるかガイドさんとまちを歩いていると、意外なところで立ち止まる。なんの変哲もない道路。ガイドさんは話しだす。「この道、見てください。なんかここだけカーブしていますね」。言われてみればたしかにそうだ。ガイドさんは続ける。「なんでやと思います?」。何気なく歩いていた道に、とつぜん「謎」があらわれた瞬間である。 たしかに、ここだけ道が曲がっている。なぜだろう。参加者一同、あたりを見回してみる。そういえば、さらに、このあたりだけ、民家と道路のあいだに妙なスペース

          謎を解き、街を読む【まいまい京都のめざすもの②】

          「まち歩き」という文化をつくる【まいまい京都の目指すもの①】

          まち歩きのリーディング・カンパニーとして私たちは、あたりまえのようにお茶のペットボトルを買う。しかし、1984年、世界で初めて缶入りの緑茶が発売されたとき、人々の反応は冷たかった。当時は「お茶はタダで飲めるもの」というのが常識だったからである。それでもじわじわと時間をかけ、いまや「お茶を買う」という新たな文化ができあがった。 まいまい京都/東京は「まち歩き事業のリーディング・カンパニー」だと自負したい。累計600人以上のスペシャリスト達とともに、年間1000を超えるまち歩き

          「まち歩き」という文化をつくる【まいまい京都の目指すもの①】