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かたつむり的世界観 第2回「コウモリ」

かたつむり大好きな私ですが、
私の学生時代の研究対象はかたつむりではなく、コウモリでした。
コウモリもまた、私の世界観を変えた生きものです。

コウモリは言わずと知れた夜行性の動物。
奥深い森林にも大都会にも、それぞれの環境に適応した種類が生息しています。

私が6歳頃まで住んでいたのは東京の住宅地。
夕方になると、どこからともなく現れて空を舞う、アブラコウモリというコウモリがいました。
小さな石を空に投げると主食である虫と間違えて近づいてくるので、そうして遊んだことを覚えています。

コウモリの魅力は、ヒトとは対照的な生活スタイルにあります。

昼に寝て、夜に活動する

コウモリはヒトに気づかれにくい生きものです。
夕方から飛び始めるので薄暗い時間帯なら目に見えるのですが、
生きものに興味が無いと「ただの鳥」と思ってしまうかもしれません。

地上を歩かず、空を飛ぶ

ヒトは地上を歩く生きもの。
両眼を使って立体視のできる生きものではありますが、移動はあくまで平面的。
コウモリは翼を使って空を飛べるため、空間的な移動が可能です。
一方、地上を歩くのがとても苦手です。

目よりも耳で「見る」

ヒトは視覚に頼った生きもの。
一方コウモリは、視覚はあまり使っていません。

鼻と口からヒトの耳には聞こえない超音波を発して、反響した超音波を耳で知覚して、周囲の環境を知覚するのです。

休むときはさかさま

コウモリは空を飛ぶため、体重が軽くなるように進化しています。
骨は細く、ヒザの関節はヒトとは逆向きになっていて、立ち上がることはできません。
あしの爪が発達しているので、壁などに爪を引っ掛けて、ぶら下がって休むのです。

でも、ヒトにけっこう近い

ヒトとは生活スタイルが対照的な一方で、近い部分もたくさんあります。
何より、ヒトと同じ哺乳類であることが大きいです。
鳥類とは異なり、赤ちゃんを産んで、母乳で育てます。
翼は羽根ではなく、よく見るとヒトと同じ5本指であることがわかります。

さらに、アブラコウモリという市街地に適応したコウモリは、
人工建造物をねぐらとして利用します。
ヒトの暮らしと密接に関わっている生きものなのです。

―――見えづらい夜空にも、超音波を交わしながら暮らしている生命が、私たちのすぐそばにいる。

それに気づくと、自分の見知っている世界が、世界のほんの一部に過ぎないんだと実感します。
同じ世界を共有する生きものは、きっとまだまだたくさんいるということも感じます。

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コラム「かたつむり的世界観」は、特定非営利活動法人グリーンシティ福岡のメルマガ・コラムに連載中です。
以上は、その記事の第2回(2018年7月)の記事の転載(一部改変)です。

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