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ふるさとは痛痒い。

みなさんは、
ご自身の故郷が好きですか。
私は、ずーっと嫌いでした。

嫌いというのが言い過ぎならば
ずーっと逃げたいと思っていた。
あるいは
疎ましく思っていた。

私の育ったところは
雪国で
冬が死にたくなるほど寒く
家の中や車内は
頭が痛くなるほど
暖房が効いていて

TSUTAYAやファミレスや
パチンコ店が
国道沿いに並んでいる。

高校生が
遊ぶところといえば
ファーストフード店にたまるか
市の中心部の繁華街に
数件ある中途半端な
セレクトショップ。
(そしてその繁華街は今や
シャッター街)
イオン系の
ショッピングモール。

はやく、ここではない何処かへ
行きたいと、
ずーっとずーっと願っていました。

あんなに勉強したのに
大コケした
苦いセンター試験。
その日もイヤというほど大雪で
会場の医科大まで、
遅れるだの
遅れないだの
気を揉んだものでした。

その後、寒さは延々続く中、
センター失敗から
私は気力が完全に途切れ、
なんだか投げやりな
ボンヤリした気持ちで
私立滑り止め受験やら
センターに応じて変えた
志望校やら受けたのですが、

いつものように
やたら寒い冬の印象しか
ほとんど記憶にありません。

浪人だけは絶対に嫌だった私は
なんとか
滑り込んだ大学への進学を機に
あの大雪と寒さに
塗り込められたような土地から
逃げるように
飛び出しました。

あれから幾年。

ペース配分が
模試と本番で
逆転してしまつた
グタグタの大学受験の疲労感、

とりわけブルーな記憶の
センター試験の大雪と
冷凍庫のような寒さの日々、

春に向けて
グズグズと溶け出した雪が
真っ白から
薄汚れながら消えてゆく
冬の終わりの感じ、

すべてが
一緒くたになって
ただでさえうんざりしていた
地元の冬は、
苦いような
切ないような
痛痒いような季節として
私の中に
くっきりと痕を残して
いるのです。

ふるさとの記憶は
うとましい。
なかでも冬は痛痒い。

それなのに2017年の
今年もそうですが
わたしはなぜか、
真冬に故郷に
帰ることが多い。

初めてのお産も
父の癌の手術も
仕事の大きな転機を迎えて
生まれて初めての
有休をとった今年も
節目で帰省するときはいつも
なぜか、季節は
一番、苦手な真冬なのです。

そして、どんなに
遠くへ逃げても
真冬の故郷に
帰ってくると私は、
なかなかうまくいかない現実に
途方に暮れていた
非力な18歳の頃の気持ちを
イヤというほど
思い出させられるのでした。

そのたびに、
小さなタイムトラベルを
したくらいの
既視感に襲われます。

逃げたかったことも
逃れられないことも。

それでも
どこまでひた走って来たのか
振り返ることになるのです。

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