エミール・クストリッツァ監督「オン・ザ・ミルキーロード」

またまたずうっと前に観たのに記録できないでいた映画。エミール・クストリッツァ監督はかなり気になる監督の一人。今までに観たのは「ジプシーのとき」「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」だけだけど、それらが代表作らしい。特に「ジプシーのとき」と「アンダーグラウンド」はお気に入りで、強烈な印象をわたしの心に刻みつけている。そして今回鑑賞した「オン・ザ・ミルキーロード」は久しぶりの新作で、DVDを楽しみに待っていたのだ。

 やっぱりエミール・クストリッツァ監督だあ~~!
 バルカン音楽と動物うじゃうじゃ・・・!観始めてすぐに思った。そこが好きなわたしにはたまらない♡

 今回はなんと主演がクストリッツァ監督。ある村で、ロバに乗ってミルク配達をしている男コスタを演じる。ロバというのがたまらない。頻繁に画面を横切るガチョウの群れも・・・。その村は旧ユーゴスラヴィアへのオマージュのような村だ。自然と生き物、人々が調和した暮らしを守ってきた村。
 しかしその村の一部は戦争の前線となっている。架空の国の架空の戦争。空爆もあれば、銃撃戦もあり、地雷原もある・・。兵士となって戦っているのは、どう見ても普通の村人。攻撃してくるのは訓練された某国の兵士だ。
 この村で一番の英雄とされている男(アンダーグラウンドで見たぞ、この俳優さん)のところへ訳ありの美人(スペクターでボンドガールだったモニカ・ベルッチ!)がフィアンセとしてやっくるが・・。コスタと美女は恋に落ちてしまう。そして恋の逃避行!

 まとめられないからメモで・・・

★中年同士の恋が悲しい。本当に理不尽。二人はスナイパーに追われてとうとう・・。水中を漂う花嫁衣裳のシーンでは、アンダーグラウンドの同様のシーンが思い出された。悲劇的で幻想的で美しい。(モニカ・ベルッチの美しさったら・・💓)

 ★素朴な村人とガチョウの群れ、羊の群れ、牛、ロバ・・・。みんな生きて死ぬことでは平等だ。家畜たちから命をいただいて生きることは自然なこと。しかし戦争による生と死はまったく異なってくる。・・ああ、これも今まで観た作品と共通だね。

 ★地雷原で夥しい数の羊たちが吹き飛ばされるシーンは、わたしにとってすごくショックだった。これが人間だったら、CGとかダミーだと思えるのだけど・・。これは本当に吹き飛ばしたのかもしれない。だとしたら惨い話だけれど、戦争の悲惨さを伝えるには必要なことだったのだろう。本当に耐えられない映像だった。


 自分をユーゴスラヴィア人と称するエミール・クストリッツァ監督(彼自身はボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエヴォ出身で、父はセルビア人、母はモスレム人)は故郷の長年にわたる紛争を憂いて「アンダーグラウンド」を制作したが、もうそれから長く経っている。世界に忘れられないようにまたこの映画を撮ったのかな・・なんて思った。

 オン・ザ・ミルキーロードも悪くなかったけれど、やはり「アンダーグラウンド」と「ジプシーのとき」が最高だったなぁ。