アレハンドロ・ホドロフスキーに出会ってしまった!「The Rainbow Thief」

Tさんのレビューで気になっていた映画。田舎では観られないよね~と諦めようとしていたのに、またまた某クラウドで見つけた!二割引き期間ということで即刻お買い上げ♪何もかも放り投げて鑑賞した後は、感動の波に飲まれてもみくちゃにされて、溺死状態だった(笑)

 この映画はわたしにとっての初ホドロフスキー。恥ずかしながらお名前も知らなかった。調べてみるとタイトルだけは見覚えがある作品も・・・。「カルト映画の巨匠」???観終わってからそんなことあんなことを知ったわけだけど、もうそんなことはどうでもいい。初ホドロフスキーにしてどっぷりと惚れこんでしまった。では、何がそんなにわたしを夢中にさせたのだろうか。

 まずは映像。とにかく映像!
 変人大富豪(クリストファー・リー)の豪華で不思議で妙に明るい大邸宅、娼婦たちと繰り広げられる饗宴。この娼婦たちがチャーミング♡豊満なナイスバディにカラフルな下着やドレス!目のご馳走ですよね!美しくて楽しい♡

 ta.さまによると、街並みはポーランドはグダニスクだそうだ。富豪のお屋敷の明るさとは全く異なる川沿いで湿気が多い下町の暗いトーン。しかしカメラワークが美しく、河や橋、湿った道、歴史を感じさせる汚れた建物も・・わたしには美しく見えた。

 そしてカーニヴァルですよ!カーニヴァル!小さい人、大きい人、見世物小屋、怪しい占い師・・・など。(ホドロフスキー監督自身タロットを読む人らしいけど)このマジカルな世界感には強く惹かれる。変人甥がタロットカードを一枚一枚落としながら歩む場面も印象に残っているが、タロットカードの知識がないことがひどく残念だった。

 この雰囲気はピーター・オトゥール演じる大富豪の甥がオマー・シャリフ演じる泥棒に匿ってもらっている下水道奥の不思議空間に最も顕著に表れていると思う。不潔で穢れていて臭くて暗いであろう空間にも関わらず、わたしはその美しさに魅了されて画面にくぎ付けだったのだもの。

 ベッドやテーブルを吊り上げる鎖、燭台、蓄音機、シャンデリア・・・等々。みんな盗品だろうけど、暗い下水道空間の中にキャンドルの灯で浮かび上がる空間の妖しさにうっとりしてしまった。自分は、どうやらこういう雑然とした怪しげな雰囲気に魅力を感じてしまうのだな・・・と自己分析しながら観ていた。(シンプルでハイセンスと言われるものの良さも分かるが、心震えるような感覚を味わうことはないようだ)

 蛇足かもしれないけど、洪水で夥しい数のドブネズミが流されてくる場面はどうやって撮影したのだろう。ネズミは必死に泳いでいるような様子で・・でもどんどん流されていく。1990年代の映画だからCGじゃないよね。ネズミさんたちは大丈夫だったのだろうか。生き物が好きだから、こんなことが気になる(笑)

 次は音楽♪なんといっても音楽♪
 それぞれの場面で、映像と同じくらいのインパクトでわたしに訴えかけてきたのだ。しかし、これについては記録する内容が見つからない。曲名がまるで分からないから・・。残念なことだ。気付いたのはバッハらしい音楽、ポーランド民謡らしい音楽、シャンソンらしい歌(蓄音機から流れていた)、ストリート・オルガンの音等。それぞれのシーンにこれ以上ないほどの効果を与えていた。メモをとるゆとりなどないから、頼りない記憶に残っている範囲だけど。誰か教えてくれないかな・・。時間がとれる時に調べてみたい。

 予告編を見ないで鑑賞したのがよかったかも。オマー・シャリフの泥棒が変人甥を気にかけて戻る。「え!戻るんだ!」と少し感激。最後の方、流されながら変人甥が言うの「先に行って。後から必ず行くから」・・・で、ちょっと落胆。
(ちょっと寄り道だけど)今は亡きオマー・シャリフとピーター・オトゥールは、ほんとにいい味を出していた。オマー・シャリフは何でも盗みまくる泥棒だけど、何故か憎めない。変人甥のピーター・オトゥールはそこに居るだけで、たまに微笑むだけで・・柔らかな光を放つ存在感だもの。
 ネタバレだけどラストシーン、増水した河を泳ぐわんこ(名前はクロノスで時空神というところが意味深)を画面中央に見つけた時は涙が洪水状態となってしまった。自己分析すると2人の友情と輪廻、転生のような終わり方にインパクトを受けたのだと思った。死が終わりでなかったというラストシーンは、明るく救われる。豪雨もあがり、空に大きな虹が輝く。

 タイトルの「The Rainbow Thief」は何を象徴しているのだろう。