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「ホドロフスキーのDUNE」②夢は世界を変える

 「DUNE」の主人公ポールは当時12歳だったブロンティスと決まった。ブロンティスは最初の妻バーナデット・ランドルとの間にできた長男である。まだ幼い息子にホドロフスキーは、365日休みなしで、6時間も武術の稽古を強いた。それが二年間続く。挙句に映画制作は中止となった訳だが・・・。
 後にブロンティスは、情け容赦ない仕打ちで辛かったと語っていたそうだ。(ホドロフスキーもやり過ぎたと反省)

 原作を読んでいないので想像するしかないが、悪の親玉オーソン・ウェルズ一味と戦ってヒーローのポールは最後には死んでしまうらしい。でもその死によってポールの存在が無に帰する訳ではないという。

 ポールが死んだ後、惑星は青い輪で囲われる。ポールの意識は惑星を包む。ポールの意識は人々の中で生きる。ポールは死んだが、ポールの意識は宇宙の意識となって生き続ける。

 「もう一度観た~い!このドキュメンタリー映画!」
 記憶容量少ないし、メモしきれないし・・・。とにかく、こんなことをホドロフスキー監督が話しているのを聞いて、感動したわたしだ。
 スピリチュアルというか、哲学的というか・・・。アレハンドロ・ホドロフスキーの世界だねぇ。芸術というもの(それは精神の力を引き出す)のパワーを追及し続けているのだね。そして精神は生き続けるということ。そういえば「虹泥棒」のラスト・シーンでは多分洪水に飲まれて死んでしまったであろう富豪甥が愛犬の姿で蘇ったことを暗示するシーンがあったっけ・・・。輪廻転生ということか。ホドロフスキー監督は日本の禅思想に惹かれ、来日した際には寺院を訪れている。「ホーリー・マウンテン」では、バックにお経らしき音声が流れていた。また美術も東洋哲学の匂いが感じられるものが多く見られたと思う。

 このドキュメンタリー映画「ホドロフスキーのDUNE」では、長男ブロンティスが並んで語る場面が多かった。やっぱりブロンティスとは特別な結びつきがあるように感じられる。

 わたしは、彼の瞳に強く惹きつけられる。思慮深く繊細。偉大な芸術家である父ゆえに、いろいろと抱えながら成長してきたことだろう。

 「エル・トポ」に出演したときは、こんなに幼い少年だったのに・・・。殺戮場面に素っ裸で立つ姿。子ども時代と母親に決別させられる姿。
 「DUNE」の時も前述の通り・・・。芸術のためには容赦なかった父。
 しかしその後もブロンティスは父と共にあり続けるのだ。

 「ホドロフスキーのDUNE」で監督が語った言葉。もう一つ印象に残っているのは、デヴィッド・リンチに「DUNE」の映画化を奪われたときのことだ。

 怖くて「DUNE」を観に行けなかった。デヴィッド・リンチが監督したのなら傑作に違いない。それを観て打ちのめされたくなかったのだ。
 しかしブロンティスが「本物の戦士なら観に行くべきだ」と言ったので行くことにした。
 そして、あまりのひどさにうれしくなった。大人げないけど、才能あるリンチが・・・。あれは制作者が悪いんだ!

 以前に記録したインタビューの言葉は強気そのものだったが、その境地にたどり着くまでには多くの苦難、挫折、葛藤があったのだ。そして、アレハンドロ・ホドロフスキーを支えているのは芸術表現への飽くなき探求心と家族の愛、信頼できる仲間。

ホドロフスキー監督は語る。

★魂の戦士でない者とは映画を作れない。
★LSDをやらなくても芸術(映画)であの高揚感を味わえる。人間の心の在り方を変える映画を作りたいんだ。
★人生で何か近づいてきたら”YES”と受け入れる。離れていても”YES”だ。DUNEの中止も”YES”だ。失敗が何だ?だからどうした?
★「DUNE」はこの世界では夢だ。でも夢は世界を変える。
   

 気が付けば、まだ「アレハンドロ・ホドロフスキー監督を卒業」とはいかないわたしだ(笑)

 補足・・・前回不明だったミック・ジャガーの役はこれみたい↓
      名前が分からないけど。