エミール・クストリッツァ監督「ジプシーのとき」

またもやクストリッツァ監督。(たまたま見つかったから)だけど、本当によい映画を観た満足感で胸いっぱい!
 この動画の場面が1番心に焼き付いているので、見つかったときはうれしかった♡

 これはジプシーのお祭りだ。ドナウ河の支流だろうか・・・川面に響く哀愁を帯びた調べ・・・勢いよく回される炎、揺らめく影が幻想的だ。ここでわたしは魂を揺さぶられ、眩暈を起こすくらい感動した。

 やはり旧ユーゴスラビアが舞台だ。ジプシーたちが暮らす貧しい村。掘っ立て小屋みたいな家に住むおばあちゃんに育てられた私生児の兄(主人公ペルハン)と脚に障害がある妹、そして金と女に滅茶苦茶だらしない叔父。

 おばあちゃんは不思議な力をもっている。治療師というか祈祷師と言えばいいのか、村人の病気を治してあげる。またペルハンも物を動かす魔法を使うことができる。超能力とか念力とかじゃない。「魔法」と字幕で出ていたけど、それがしっくりくる。

 叔父さんはほんとにひどいヤツで、普通に金と女はもちろんのこと、おばあちゃんの家を破壊したりペルハンが可愛がっていた七面鳥をシチューにしたり、ペルハンのフィアンセを犯したり(-_-;)だけどおばあちゃんは嘆きながらも突き放したりしないんだよね。このおばあちゃんの包容力はすごい。「おばあちゃ~ん♡」と抱きつきたくなる感じ。

 雨が降れば泥だらけになる劣悪な生活環境で暮らすジプシーたち。村はガチョウだらけ。羊だらけ・・・犬も猫も七面鳥も!人間とともに暮らしている(個人的にたまらん)そして楽隊もいる♪悲しい時もうれしい時も、彼らは歌う。
 盗み、物乞い、売春、人身売買を仕切る親方に搾取される孤児や障害者、娘たち。胸糞悪くなるくらい悲惨な状況。
 
 だけどこの映画の幻想的な映像と音楽に流されて溺れながら・・・善とか悪とか超越したジプシーの人生に打ちのめされて、ただ感性だけで浸ろうと決め込んだ。

 どんなに悲惨でも・・・それでも生きていくんだよね。生きて・・・歌って、踊って、奏でる・・そして死んでいく。それだけなんだよね。それだけなんだけど、最高に愛おしいのだ。