この文書は、私が2017年の夏、はじめての音楽作品 "love is" を発表するときに書いたものです。誰に相談することもなく音楽制作をすすめて、ひっそりと発表しました。このときにしか書けないことがあったように感じます。ここに改めてpostします。

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love is

「戰争に反對する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである。」 吉田健一

この度、maishintaという名義で、Tokyo Recordings（現 8th MAY Records代表） の酒本信太さんと共に音楽を作り、その作品集を発表することになりました。作品集は、”love is”というタイトルで、１２曲収録されています。

2016年7月に酒本さんと一緒にネパールを訪れた時に見た、景色や出会った人や出来事、吸い込んだ空気や熱かった太陽が、そのまま音楽になりました。

私たちはひと月、共に旅をする間、特に作品を作ろうとしていたわけではなかったのですが、旅先であまりにもいろんなことがあって、それが音楽という形をもって飛び出てきました。

あるときは、私が口頭で創作したものがたりに応答するようなかたちで曲ができたり（Saiという曲です）、あるときは私が待ち合わせに遅刻して、まちぼうけている間に酒本さんが詩をかいてくれて、それが曲になったり（HOHOEMIという曲です）。

そうやって自然と、たくさんの音楽がうまれました。その中から、１２曲を作品集としてまとめてみようということになりました。

私は１７歳のときにネパールをはじめて訪れ、この国と関わって今年で1８年、仕事を始めて8年になります。そこで一番学んだことは、本当に誰かのため何かしたいなら、自分自身のためにいきなければいけないということでした。

「世界が平和で美しい場所であるためにできることはなにか」という問いに、私は冒頭の吉田健一氏の言葉をそっくりそのまま引用したいと思っています。「各自の生活を美しくして、それに執着することである。」

私はこの８年間、「途上国の女性の自由と尊厳」という大義のために、様々なことをしてきました。うまくいったこと、迷惑になってしまったことなど、いろいろなことがありました。そして、誰かのために、と動いていたら私自身がからっぽにしていることに気がつきました。何をしていても、わけもなくかなしくてしかたがありませんでした。

このままではいけないと思い、しばらくしずかに自分自身をみつめる時間をもちました。外からくる情報をできるかぎり遮断して、自分の内側からでてくる声に耳をかたむけました。

そして、2017年4月4日に夢の中できいたメロディーと歌詞を曲にしたのが、love isという曲です。iPhoneで録音した起き抜けの鼻歌を酒本さんにきいてもらって、いっしょに曲に仕上げました。

この曲には、なにかをつくるときの、「原初の喜び」が溢れているような気がしています。音楽をつくるということについては、私はまったくの門外漢でしたが、酒本さんのサポートもあり、発声を練習したり、筋力トレーニングなどをして、歌を録音しました。

何もなかったところに、声を発し、ピアノの音をかさねて、音楽がたちあがってゆくことに、これまでに感じたことのない大きな、そして純粋な喜びがありました。歌うことや、ふっとわいたメロディーをくちずさむことは特別んことじゃない。こどものときにはうれしいときや感動したときに、自然としていたことだったな、と思い出しました。

そして、創作することは、 必死になってひねりだすことではなくて、 思い出すことだ。自分の内側に耳をすまして、そうして自分の内側すらもとおりこして、ひろいひろい宇宙の声を聴くことなのだということを知りました。ここに収められた１２曲は、そうしてやってきた音楽です。

「ぜんぶある。」という感覚がこの作品には満ちています。この作品集は、おそらく私が大人になってからはじめて、自分の素直な好奇心や喜びだけで作ったものです。きっと自分のこどもがうまれたらこういう気持ちなんだろうなと思います。

私にとっては「音楽をつくること」でしたが、きっと世界中の大人が、「ほんとうはやってみたい。でもいろいろな理由をもってきて、やらずにいること。」があるのではないかなと思います。

時代はおおきく変化していくし、人間に残される唯一の仕事は「創造」することになるだろうという確信があります。

あたらしい時代を、喜びいっぱいに創造をしながらわたしもいきてゆきたいし、そういうことに関わってゆきたい。

これまでだったら、ここで、この経験をネパールでの仕事にいかしてゆきたいです。とか書くところですが、今回は書きません。これはただやりたくてやったことで、何の役にも立ちません。それでも、もしよかったら愛いっぱいに作ったこの作品を手にとっていただけたらうれしいです。

最後に、酒本信太さんをはじめ、背中を押してくださったすべての人へ、この場をかりて、心からの感謝を申し上げます。ありがとうございました。

向田麻衣  2017年8月

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後記

love isを発表してから1年5ヶ月を経て、12月29日に開催したIRIS SUNと8th MAYのリリースライブの最後の曲として歌いました。とても自由に歌えるようになっていました。そして、この曲をリリースしたときに、まだ友達のお腹の中にいた赤ちゃんが、この世に誕生して、ライブを見に来てくれました。（映像に写ってるちいさな女の子。）すごくうれしかったです。

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これからも創作に纏わる様々なエッセイを書いてゆきたいと思っています。継続的に読んでいただける方は、マガジンに参加してみてくださいね🌸 

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