惑星の中にいる

朝のパン屋の匂いで吐きそうになった僕は空を見上げた。そこに見える朝の月は白く、青い空によく映える。「おいしそう…」なんとなく呟いた言葉は僕の中でぐるぐる回る。目の前を通り過ぎる猫、あの子は何個名前を持っているのだろうか。僕は何になれるのだろうか。よだれを垂らした犬は何を考えているのだろうか。キラキラしているように見える目は地球の中心なのだろうか。
一緒に鍋を食べた日を思い出す、赤く燃えた炎が青になるときに月が割れた気がした。その月を食べることはきっと神様にしかできない。それがもし僕にできるなら、僕はもう鍋をつつくこともないだろう。やっと出会えたと思った星は瞬く間に飛んでいく。僕の靴を連れて飛んでいく。「行かないで」と呟いたときはもう宇宙の果てだった。

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