◆ゆかりちゃんの「妄想」

ゆかりちゃんは定期的に、ある「妄想」を行なう。

その「妄想」とは、

・ある日の朝　神様が現れる
・神様が「あなたに、この100万円を差し上げます」と言う
・その100万円には【条件】がある
・24時間以内に【モノ】か【サービス】に消費すること
・24時間経過すると、お金は消えて無くなってしまう
・貯金はNG（お金のままだから消える）
・購入した【モノ】や【サービス】は消えない
・申し込みはNG
・契約はOK

という内容だ。

神様が、「あなたは、日ごろから節約し、貯金して、大変すばらしい」

と、ゆかりちゃんを褒めるところから、この妄想は始まるらしい。

◆で、何を買うの？

僕は、1度質問をした。

「で、ゆかりちゃんは、その100万円で、何を買うの？」

ゆかりちゃんは、即答した。

「まず、あれを買って～、だからイオンモールに行って」
「・・・あ、違うか、最初は高島屋だ！」
「で、今度はいつも行っているエステに行って、回数券を買って」

「ん？ 回数券はイイの？」

「イイの！ 注文じゃなく、これは購入だからイイの！」
「で、子どもたちに、あれと、あれとを買って～」
「それで、あそこにも行って、、」
「あ、じょーじのも、少しは買ってあげるね。なにが欲しい？」

「いくらまでイイの？」

「う～ん、5万円！」

（100分の5？ 少なっ！）（言わんけど）

即答だったのに驚いた。

ゆかりちゃんは、定期的に妄想しているらしい。
いつ、神様が現れても困らないように、その時24時間を有効に使えるようにと、シミュレーションは万全なのだ。

◆使えない性分

ゆかりちゃんは、経済観念がしっかりしている。
そして、実の兄は、日本トップクラスのケチだ。

なので、無条件で100万円をもらっても、ゆかりちゃんは、どうしても貯金してしまう。
もし、なんの条件もなく、神様から100万円を貰ったなら、
エステに行って1万円を使い、夜、僕を誘って外食して、残りの98万円は貯金する。

そんなタイプなのだ。

使えない。
ゆかりちゃんは、「パーッ！」と、1日で100万円を使うなんてできない。

使えないという性分を、自覚しているから、

【1日で消える】

という、ルールを妄想したのだ。

これならば、使うしかない！
使わない方が大損だ！
使うことが正義だ！

実はこの、『消えるお金』は存在する。

以下は、『腐るお金』でインターネット検索し、1番上に上がった内容だ。

皆さん『腐るお金』といったものをご存じでしょうか？ 「一定期間でどんどん価値を失っていくお金」のことです。 これはドイツの経済学者シルビオ・ゲゼルが提唱した「自由貨幣理論」に基づき、実際にオーストリアのヴェルグルという町で使われたことのあるお金の事です。

ヴェルグルという町では、見事に、経済が活性化したらしい。

また現在も、ごく一部の都市で、電子マネーによる価値の下がる通貨を使用しているという情報も、他のサイトで見た。

偶然だろうが、天才経済学者の提案と、ゆかりちゃんの妄想は、本質的には同じだ。

お金を、貯める方にではなく、使う方に仕向ける。

『腐るお金』も『消える100万円』も、どちらも消費を促進し、経済を回す妙案なのだ。

◆給付金

現金10万円の一律給付金が、もう間もなく支給されるというタイミングだった。
僕と、ゆかりちゃんとで、合計20万円が給付される。

『消える100万円』の使い道を語った後、ゆかりちゃんが、こう続けた。

「コロナショックで経済が滞ってるでしょ？」
「だから、このルールがイイのよ！」
「みんなが使えば、そして買物すれば、経済が活性化するでしょ！」
「安倍さん、これやればいいのよ！」
「苦しんでる個人事業主も、そうすれば、かなり助かるし！」
「だから、じょーじ！ 今回の10万円は使うよ！」
「2人だから20万円か！」
「経済、 回すよ！ 回しちゃうよ！」
「コロナがおさまったら、買物に行こう！」

と言い出した。

おお！　マジか？　めずらしい。

「・・・」

なんか考えてる。

「半分は貯金して」
「・・・いや」
「わたしのを全部と、じょーじのの半分を貯金して・・・」
「いや、8万貯金して・・・」
「2万円！ 使うよ！！」

（おいおい！）（言わんけど）

◆〆

給付金も消えるルールーにしないと、1割しか使わず9割貯金してしまうのが、ゆかりちゃんだ。

これ、本当に、ゆかりちゃんが言ったセリフなのだ。

この、天然ボケは横に置いて、
いつか、ゆかりちゃんの『消える100万円』という妄想をショートショートとして書いてみたい。

あくまでも、いつか、だが。

僕は、こんな妄想をするゆかりちゃんが大好きなのだ。