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変わらぬ笑顔と揺るがぬ姿勢

小学校1〜2年生時の担任のK先生・・・
新採用の明るく、優しく、何をやるにも一生懸命で、
まるでお兄ちゃんって感じの先生だった。
「みんなと同じ、先生も一年生!一緒に楽しく勉強したり遊んだりしようね!」と最初の挨拶で言った通り、休み時間も、放課後もいつも一緒にいてくれた・・
休みの日には先生の家(場所はよく覚えていないが、小高い山の中で広い敷地に昔ながらの日本家屋・・庭はこの山です!みたいな感じで・・春には筍彫ったり、山菜取ったり、カブトムシ・クワガタ取ったり、近くの沢でザリガニ釣ったり、山の中を駆け回ったり・・当時まだまだ横浜にもそんな環境がたくさん残っていた・・それにしても先生の家には感動した)に行ってみんなで大騒ぎ!「〇〇探検隊」とか言って山の中を探検する!この時は先生と呼んではいけない!「隊長」と呼ばなければいけない、先生もオイラたちを「〇〇隊員」と呼んでくれる!当時テレビで人気があった「忍者部隊・月光」に男の子はもちろん女の子もみんな成り切って夢中になって探検した・・そんな中で、男の子は女子を助けなさい、みんなで協力して何事も乗り越えなさい、失敗を恐れずにチャレンジしなさい、友達を大切にしなさい、人のために奉仕しなさい、人の嫌がる事を率先してやりなさい、自然に感謝しなさい、と数え切れないほど大切な事を体験する事で学ばせてくれたんだと思う!
名前の呼び方も苗字ではなく、ほとんどの子供にあだ名を付けたり下の名前で呼ぶ・・「けんじ」だったら「けんちゃん」・「幸子」だったら「さっちゃん」
「内田」だったら「ウッちん」・「松本」だったら「まっちゃん」といった感じ!
オイラは「町田」だから「マッチ」・・
そう自慢じゃないが・・・あの近藤真彦より先にマッチと呼ばれていたのだ!
あだ名や下の名前で呼ばれる事がみんな嬉しくて・・・親しみがあって・・一気にクラスの雰囲気も明るく楽しく、まとまりのある仲の良いクラスになった!
毎日、学校に行くのが楽しかった!
「〇〇(苗字)くん、来たよ!」
「〇〇(苗字)くん?・・誰だ?」
「けんちゃんだよ!」
「あぁ〜なんだぁ、けんちゃんか!」なんて事も度々・・
最近は差別だとかいじめに繋がるとか?で全て「さん」を付けて・・とか????
「おい・こら・お前」なんて言ったら大変だとか???
そこまで人間の心のレベルが下がったのか?心が通じ合わなくなったのか・・?
よくイタズラが過ぎたり、危険を伴う悪ふざけ等が続いたり、人を傷つける様な言動には流石に先生も厳しく一括することも当然あった・・厳しく叱り、優しくフォローし、「今日はゲンコツ1だな!」と優しい表情でコツンと来る・・・
叱られている時は怖く、フォローで冷静に、そしてゲンコツでなぜか嬉しくなる。誰かが、ゲンコツを喰らっていると・・
「先生!僕も、僕も!あたしも!あたしも!」と並ぶくらい・・
あのゲンコツにはとても暖かい愛情が詰まっていた!
オイラたちはみんなその愛情を感じ取り、求めて、並んだのかも知れない・・
アントニオ猪木の「闘魂注入ビンタ」並みだな!
でも、ゲンコツ欲しさにいらずら・悪さをする子はいなかった・・
「叱られる」ってのが最初の大きな関門だからね・・・
「叱る」が「怒らない」先生だった!
今思うと授業も様々な工夫がされていて、教わると言うより一緒に考えると言った感じであった・・誰の回答も否定されない、間違いも無い・・答えた事に対して笑顔で褒めてくれる。・・当然の様にみんなが手を挙げ自分が感じた事、考えた事、気付いた事を積極的に発言する。活発な授業だった!
これは後に母から聞いた事だが、授業参加の日・・
算数の時間だった・・
紙皿の上にみかん(おもちゃ)が一つ、それが数セット用意されていて・・
このお皿とこのお皿も合わせるとみかんはいくつ?・・
みたいな感じで足し算の勉強・・
そこで天才マッチが手を上げて・・ニヤッと笑い・・
「一つのお皿の上にみかんを二つ並べたら・・・豚の鼻〜!」と叫んだ!
「えぇ〜へんなの〜!・足し算じゃないじゃん!・おかしい!」と
教室内は大騒ぎ・・参観に来ているお母さん達も大爆笑!
母はもう逃げ出そうかと・・・すると先生が・・
「ちょっと!みんなよく見て…マッチすごい発見したと思わない!確かに豚の鼻みたいに見えるよね!先生は算数の事、足し算の事、数の事しか考えられなかったけど、ちょっと見方を変えると新しいものが見つかるね!どうだろう他に何か発見できるかな?」と・・
「そのまま二つ並べたら目!」
「お皿を縦に二つ並べてみかんは上の皿に並べて雪だるま」
「赤い目だ!」
「うさぎじゃん」と次から次へと多くの発見が・・。とあるタイミングで・・
「みんな沢山発見したね・・〇〇ちゃんはいくつ発見した?」
「二つ」すると先生はお皿に二つのみかんを置いた・・
「〇〇くんは?」
「三つ!」同じように三つのみかんを皿に乗せ、
「二人で発見したのはいくつ?」いつの間にか算数の授業に戻していった!
この授業には一つも否定はなかった、この授業に限らず先生のすべての授業と言ってもいいだろう・・・
参観後の個別面談で母が「申し訳ありませんでした」と言うと・・
「素晴らしい発想だと思いました!」
「えっ?・・でも・・」
「おかげでいい授業ができたました!いかがでしたか?」と・・・
恥ずかしい・あの子、何言っているの・まったくもう!・・・
そんな風に思った自分が情けなくなったと・・
当時を振り返り「本当にいいクラスだったねぇ」と未だに話す事がある。

そんな先生との毎日も3年生に進級するとクラス替えとなり終わる事に・・・
先生は再び、1.2年生の担任となっていた・・
相変わらずの人気ぶり・・新入生たちが羨ましくも思った。
5年生の時・・・
学校に多くの警察官が・・・校内も異様な雰囲気・・・
そこで目にしたのはK先生が数人の警察官に囲まれ連行されていく姿だった・・
「えっ?何?・ウソ?・どうして?」何が何だかわからない・・ショックでもあり、悲しくもあり、連行して行く警察官に対する怒りのような・・・
「なぜ他の先生は何もしないの?・助けないの?・見ているだけなんだ!」
と苛立ちさえ感じた・・
この数ヶ月前に・・ある大きな事件が起きていて、その片棒を担がされたのが先生であったと言う事だった・・・しかしこれは先生が犯人から騙せれ利用されただけだった事が後に判明し、罪に問われる事はなかった・・・が、先生は学校を去った。
それから10年近くが過ぎ・・ある専門学校の前でその学校に通う友人と出会い立ち話をしている時、数人の学生たちが楽しそうに会話をしながら出てきた・・
その中にK先生が、姿を見てすぐにK先生だと確信した・・思わず・・
「先生!」と声をかけた・・こちらを見た先生はパッと目を見開き
「マッチか?マッチだよな!」とすぐにマッチと呼ばれた事が嬉しかった・・
「はい!何やっているんですか?ここにいるんですか?」
「うん・・当たり前だけど大きくなったね・・」
と肩を何度も叩いたり背中をさすったり・・
嬉しかった・泣きそうだった・・・
色々話したが、何を話したかは覚えていない・・
ただ、「ごめんな・・心配かけて、嫌な思いもさせたよな、本当にごめんな、卒業式も見送れなかったね・・・ごめんな・・本当にごめんな・・」と先生は自分の事をさすりながら何度も何度も謝っていた事は鮮明に憶えている・・
その時なんとなく、辛いと言うか・・もう謝らないでよ・・なんとも思ってないし
そんな事を思っていた・・
「何?知り合いなの?」と学生のひとりが質問してきた・・
「僕が教師になって最初に担任した子だよ・・君たちと同じ歳だよ」
そんな年齢まで憶えていてくれたのかと感動した。
「そうなんだ!へぇ〜感動の再会じゃん、じゃぁ先生また明日ね〜!」と帰った。
先生も次の予定があるとの事・・
「いつもここに居るから遊びに来な・・」と何度も振り返り手をあげ去って行った
友人に・・
「お前も教わっているの?」と聞くと
「うん、担任じゃ無いけど良い先生だよ!人気あるしあたしも大好きな先生だよ」その言葉や、学生達と先生の雰囲気を目にして、やっぱり先生は・・
と嬉しくてたまらなかった・・みんなに知らせたいと思った・・
帰宅しすぐ、母にこの事を話した
「えぇ〜本当!そう、先生やっているんだぁ・・良かった、良かった・・良い先生だからね」と懐かしそうに当時の事を思い出しながら話をしていた・・
その後、何度か先生と会う事はあったが、ゆっくりと話をする事はなかった・・
先生と再会で何より嬉しかったのは、先生の笑顔が変わっていなかった事、あの頃と同じように生徒(学生)と一緒になって楽しそうに会話したり、様々な形でコミュニケーションがとられている事、友人から聞いた話では、どんな小さな悩みでも真剣に聞き、一生懸命に答えてくれると言う事・・・あんな事件に巻き込まれ、学校を追われるように去って行った先生、心無い誹謗中傷もあったのかもしれない、想像出来ないくらい辛く苦しい時を過ごしたのかもしれない・・
ある時、「でも、マッチに会えて良かったよ、みんなにずっと謝りたかったんだ・・例え罪にならなくても僕が馬鹿だったから沢山の人に迷惑かけた、本当はあの頃の子供達一人一人に会って謝りたいんだ、マッチだけにでもこうして謝れて良かった・・そしてこんな僕を受け入れてくれた本当に嬉しかった・・」
その時は何も答えられなかった・・ただ首を横に振りながら・・・
「いやいや、とんでも無いです、僕も会えて本当に嬉しかったです」とだけ・・
もっと気の利いた言葉がかけられないものか・・
言いたい事や伝えたい事が沢山あるのに・・
そんな事を、今も思い出すたびに心をよぎる・・呑みにも行きたかった!

小学生の頃の先生、再会した時の先生から一本の揺るがない幹・情熱みたいなものを感じた。
変わらぬ姿勢、失われない情熱・愛情、良い先生に出会ったんだなぁ・・振り返ってみるとそこから色々な事を学んでいたんだなぁ・・それが今になって実感できている。
K先生意外にも節目節目にそれぞれタイプの違った方法も接し方も違った先生や先輩・後輩・大人たち・友人から多くの事を教わり育てられた事に感謝だ!
それをこれからの人たちに残していかなければならい歳にこの馬鹿もなりました。

写真「二十四の瞳」なんとなくK先生と被るものが・・・なので!

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