いのち
実家で飼っていた白い犬は
雑種で耳だけがベージュの短毛で鼻は梅干しのように赤く
ぱっと見スピッツ風のわりには顔はシュッとはしておらず
ずんぐりむっくりでキャラクター系お化けみたいなシルエット。
ぼっそぼそでとても可愛かった。
あまりにも小さかった自分の記憶は薄らぼんやりしていたが
何匹かの中にいた真っ白の犬をもらいに行った記憶は残っている。
そして
私も含め兄弟全員の青春時代を共にし
15年後、私が上京するほんの少し前に寿命で亡くなった。
私はちょうど短大の卒業式もバイトも終わって家にいることが多い時期だったので母親と最期をみとることができたのだった。
彼の瞳から命がどんどんと抜けていく様子を
私は目を離すことなく見続けた。
本当の最期を見たのだ。
陽だまりに座っている彼の肩を抱いて
横に座って一緒に日向ぼっこをする。
あの時間を今でもずっと愛している。
なんだんかんだ動物がそばにいないなんてなかった人生。
いない状況に違和感を感じていたけれど、
一人暮らしや上京生活の忙しさや楽しさと共に
簡単に環境に順応して平気になってゆく感覚があった。
それからまた彼の生きた時間分の日々があっというまに経ち
今私は別の新しい命を受け取りに行こうとしている。
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