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『残業学』中原淳+パーソル総合研究所(著)

2016年9月、安倍内閣が「働き方改革担当大臣」を設置。テレビなんかでも「ノー残業デー」などの様々な施策が頻繁に取り上げられるようになりました。

PCの強制シャットダウンや朝方勤務のような取り組みを行っている企業も多いのではないでしょうか。

さて、あなたの実感として残業はどれぐらい減りましたか?

単純に残業時間が減ったとしても、その分プライベートに何か変化はありましたか?


今回は『残業学』をもとに、以下のテーマでまとめていきます。

★残業はなぜ減らないのか
★残業を減らすためにはどうすればいいか
★残業を減らすとどんないいことがあるのか


■残業の要因とは

筆者は残業の要因を以下のように分類しています。

・麻痺
仕事の量をひたすらにこなし、膨大な時間を費やすることで、自分は成長している・有能だという錯覚に陥ってしまう状態。

・集中
仕事は無限に湧いてくるため、割り振られたタスクが終わると次のタスクを振られ、仕事が早い人にどんどん仕事が集まってしまう状態。

・感染
本心では早く帰りたいのだが、みんなはまだ帰っていないのに自分だけ先に帰ったらマイナスイメージなんじゃないか、と多くの社員が思い込み、結果誰も帰れない状態。

・遺伝
高度経済成長期の仕事をこなせばこなすほど稼げた時代を生き抜いた人や、若い頃に当たり前のように残業をしていた上司のもとで働くことで、「残業=偉大」のイメージが植えつけられている状態。

これにプラスして、問題の見方はかわりますが、 

・残業代が生活費の一部になっている

ことも、要因の一つとなっています。

あなたの残業タイプはこのどれかに当てはまりますか?もちろん、複合的な要因になっている可能性は大いにあります。 

残業に問題意識を抱えている方は、まずはその要因を明らかにするところから始めるのがおすすめです。


■要因から見える日本における働き方

4つ(+1つ)の要因を挙げましたが、そもそもなぜこのような状態に陥っているのでしょうか。

もちろん、いろいろな理由があります。『残業学』では、データやエビデンスを根拠に様々な分析がなされています。

その中でも、私は1つの理由に注目したいと思います。
それはずばり、
日本人は「会社」に依存している。

もちろん、日本人の、誰もがそうなわけではありませんが、日本特有の文化であるため、あえて「日本人」とさせていただきました。

さて、「会社」に依存しているとはどういうことでしょうか。

ここで一つ質問です。
もし明日、勤めている会社が急に無くなることがわかったら、あなたは何を考えますか?
大企業にお勤めの方も、そんなことはありえないなんて思わず、一度考えてみてください。

・明日から何をすればいいんだ。
・路頭に迷ってしまう。
・生活できなくなってしまう。
・人生の終わりだ。
・最悪だ。

このような考えばかりが浮かんできてしまう方は、「会社」に依存している可能性が非常に高いです。

確かに、明日なんて言われたら焦ります。動揺します。

しかし、景気の低迷、不祥事、自然災害など、会社が無くなり、突然外の世界に放り出される可能性はいつだってあります。

その時に、あなたが悲観的になり思考停止してしまうのか、それとも次の一歩を踏み出せるのかによって、あなたの働き方がみえます。

前者のあなたは、
会社の駒として働いています。

後者のあなたは、
会社の環境を使って働いています。

■会社の駒

アメリカを始めとする多くの国々では、担当職務は明確に決まっており、職務にあわせて人を採用することが一般的です。そのため、自分の仕事の範囲は非常にはっきりしており、仕事の終わりが自分で見えます。
自分がやりたい仕事を実現できる「環境」を会社に求めます。

一方、日本の会社では、人を採用した後に仕事を割り振ることが多いです。明確に職務が切り分けられていないことが多いため、どこまでが自分の仕事か正確には判断できず、その結果、割り振られ続ける仕事をこなしていくことになります。
会社にとっては嬉しいお話です。職務が明確に決まっていると、「この仕事は私のやるべき仕事ではない」と社員に断られても仕方ありませんが、日本の会社では振り先が見つからないことはまず無いでしょう。

そして、日本人の多くはそれが当たり前だと思っています。「会社」の一部なのだから、会社の指示・判断に従うことはちっとも不思議じゃない。
だから、私は「会社」の「駒」になっていると表現しています。

■自分の意思

あなたにとっては会社は一つかもしれませんが、会社にとってはあなたは何百、何千人もいる社員の一人にすぎません。

割り振られた仕事をただこなすだけならば、代わりはいくらでもいます。

こんなことを言うと、お怒りの声が聞こえてきそうですね。
・私は自分から動いている!
・私は自分で仕事を創っている!
・私は自分で今の仕事を選んでいる!

いえ、むしろ怒ってください。私の言葉を疑問に思ってください。
そこにあなたの「意思」があります。

そして、その「意思」が会社の駒から脱却するためにとても重要です。

あなたは何のために働いていますか?
会社のためですか?自分のためですか?

会社のため、と言うのは嫌がる人が多いかと思います。
しかし、振り返ってみてください。
気付けば上司のため、会社のため、に働いていませんか。
その仕事の先に何がありますか?

会社に依存していると、会社の目的を自分の目的と重ねてしまいます。
でも、会社は会社であっていわば別人です。

あなたには、あなたの経験と価値と未来があります。
あなたは人生を他人の目的のために生きますか?

あなたの目的は何ですか?

思考停止しないでください。
あなたの人生の話です

その目的がぼんやりとでも見えてくれば、
それがあなたの意思になります。

そして、意思を持つことは働き方を変えるきっかけになります。

この仕事はどんな経験を得られるんだろうか。
この仕事は本当に私がやるべき仕事なんだろうか。
この仕事にはどんな意味があるのだろうか。
もっと他のやり方ができるのではないだろうか。

そのすべてに自分の「意思」で判断ができれば、
残業時間を減らすこともできますし、残業が発生したとしても不満にはならないと思います。

そのときにはもう、あなたは会社の駒ではありません。

■残業とプライベート

どうやら世の中には、ノー残業デーなどで半ば強制的に残業ができなくなると時間の使い方に困る人がいるみたいです。

これまでは会社にいれば何かしらやることはあったけど、それが急に無くなると何をすればいいかわからない。
だから、とりあえず飲みに行ったり、テレビを見たり。

これも思考停止だと思います。
時間の浪費の仕方すら会社にまかせていた結果です。

自分に目的があれば、そのために時間を使えるはずです。

例えば、私は文章が書くことが大好きで、その時間を確保するために可能な限り残業を減らしています。(まだ下っ端なので不可避のときもありますが)

もっとたくさん文章をつづって、質とスピードをあげて、文章力を磨いていきたいです。
そして、誰かのためになる文章を書きたい。
それが、私の目的の一つです。

時間を、人生の一部を自分のために使っています。

■『残業学』


『残業学』では、詳細なデータやエビデンスをもとに残業の様々な要因や対策が書かれています。

私はここまで、日本人が「会社」に依存していること、に注目して残業について書いてきました。

しかし、『残業学』では、基本的には会社の仕組みづくりの甘さやマネジメントの失敗について書かれています。
部下の残業をコントロールする立場の方、残業に関心がある方は、ぜひ『残業学』の一読をおすすめします。














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