突き詰めて考えるということ
今年の目標は本を沢山読むこと。
もともと趣味は読書だったのに、スマホの出現によって本当に読む量が減ってしまった。
電子書籍であれば確かに読むチャンスも増えるかもしれないけれど、そこはやはり紙の本が好き。
だから今年はアウトプットする量も増やしたい…という目標とセットにして、読んだ本の感想やらを定期的にアップしていこう、と決めた。
仕事柄、年末に向けて段々忙しくなるので、正直11月や12月については自信がないけれど、一応目標は月4冊。ジャンルは色々。
厳しいときは絵本で乗り切る…という反則技も既に考えついているし、無理をしない範囲で続けていきたい。
そんな今年1冊目は『DEATH イェール大学で23年連続の人気講座 「死」とは何か』。
この本を知ったきっかけは東洋経済のニュース 東大生厳選、冬休みに読みたい「分厚い本」3冊をTwitterで何人かの人が読んでみよう、と取り上げていたこと。
「死」については考えるきっかけはそれまでにちらほらあった。
年末に、遠い親戚のお葬式が急にあったことや、(これは毎年のことだが)仕事で病院を訪問していくなかで、「死」と残された家族について考える機会があったことも理由のひとつかもしれない。
それ以外だと、最近Twitterでフォローしている幡野 広志さん(@hatanohiroshi)が安楽死について発信されているのも興味深く拝見していた。
だから、アメリカの大学でどのように「死」を取り上げているのか、どういうものが人気講座なのかに、純粋に興味があった。
ちなみに私は殆どなんの前知識もなく(上記の東洋経済のニュースもさらっと目を通して、本のタイトルだけメモったので記事の中身は覚えていなかった)この本を読んだので、どういう類の本かもあまり考えずに読み始めたのだが、この本は基本的に「哲学」の本だ。
啓発本とかそういう類のものではなく、哲学の入門書だ。
哲学、という言葉が抽象的だと感じるとしたら、この著者であるイェール大学教授・シェリー・ケーガン氏が理詰めで考えた、彼の信じる「死」とは何か、「死」にまつわる様々な考察が紹介された本だ、というとわかりやすいかもしれない。
私自身、哲学の授業などとったこともなかったので、それこそ超初心者だったが、「死」が何か、という前に、哲学っていうのはこういうものか、ということが学べたことも新鮮だった。
というか、「哲学をきわめるとは死ぬことを学ぶこと」という人もいるぐらいだそうだ。
魂は存在するか、どのタイミングが死なのか(脳死など)、死は悪いのか、死はなぜ怖いのか、自殺の合理性はどうか、こういった問いについてシェリー・ケーガン氏の思考の経緯と答えが書かれている。
それも細かく、こういう条件下で、こういった場合はこうだ、とにかく理詰め。
(感情的に)魂はあってほしい、とかもなく、キリスト教的に神が自殺は許さないと聖書に書いているから自殺はダメだ、みたいな説も理詰めで論破していく。
たとえ自分が願ったり望んだりしている説も、理屈が通らないと認めない。
私は何故かそこが、ものすごくアメリカっぽい、とも感じた。
そして哲学なだけに、当然のことながら、シェリー・ケーガン氏の答えが絶対だ、というわけではない。あくまで彼の考え方がそうなのだ。
それこそソクラテスがいる紀元前から「哲学」という学問があり、現代まで続いているわけだから、1冊の本を読んだところで答えが出るはずがない。
絶対の答えを教えてくれる本ではない。
むしろ問いかけてくる本だ、あなたはどう思うか?と。
しかし答えがないからと言って、学びがないわけではない。
2000年以上様々な人が考え続けても、絶対の答えがないのが「死」に纏わる問題だと改めて認識できたこと。
人の数だけ考え方に違いがあり、だからこそ自分の死について、家族の死について話し合っておかないといけないこと。
死は予測不可能で、そして多くの人が「早く訪れすぎる」「こんなに早く来るとは思わなかった」と感じること。
この本を読んで、そんな理詰めの正論がほしいわけではない!という人も多いと思う。
勿論それでも良いだろう。
でもあなたの意見に家族も同意してくれているだろうか?
また逆に家族が死の際に同じようなことを望んでいるだろうか??
この本の著者が望んでいるのは彼の意見に同意してほしい、ということではない。(もちろん同意してもらったら嬉しいとは思うが一番ではない)
思ったより早く訪れる死について、多くの人が事前に考え、向かい合うこと、だ。
それはきっと、多くの人が当然のように甘受している「生」をより充実させることになるから。
私は昨年とあるドキュメンタリーを見て「余命宣告をされた直後と、死ぬ時、実際に怖いのはどっちなんだろう。」という記事を書いた。
この問いはまさに「死」の「何が」怖いのか、ということを考えきれていないから沸いた疑問だ。
記事の最後にも書いているように、ぼんやりとした答えが浮かんで終わっているのみだが、この本を読んで、自分が「死」にまつわる様々な疑問や恐れを、考えているようで突き詰めて考えておらず、そのままにして目を逸らしているからこそ、問題が絡まった状態で、ちゃんとした自分の答えが出てなかったと気付けた。
恐れは、何がその原因であり、恐れの対象かわかれば、対処の取り方が生まれる。
それが「死」の場合、たとえそれが避けられないものであっても、後悔などといったさらなるマイナスの感情を生まないように対策もとれる。
この本を読んで、小難しく考えすぎる、と思う人もいるかと思う。
私も時々、ちょっと難しい…と思った。
でも、また折に触れて、自分を見つめなおす際に読み返すと、絶対に新たな発見がある本だ。
1冊目: DEATH イェール大学で23年連続の人気講座 「死」とは何か
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