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霊媒師との出会い by愛の伝道師2世 (7話)

まだ私が愛を知ら無い昔。巫女と出逢う前の時の話だ。

この時の私は普通の人と同じように生きる事を目標にして居て、まずは格好だけでも普通の人に成ろうとスーツを着て生活をして居た。

社会に溶け込んで、少しでも普通になりたいと、自分の心の内に棲む魔物を表面化させ無いように、穏やかに生きて行く事を心がけて居た。





上野を散歩してるとテレビ局の人に話しかけられた。その人達は変わり者を探していると言うのだ。そして見た目的に変わり者の私に目が留まり話しかけたそうだ。

私がろくに仕事をした事が無いと言うと彼等は何故か驚いてた。そして私の家に着いて来て、日々の生活や何を考えてるかを根掘り葉掘り尋ねて来た。

どうやら私は社会の平均から見ると変わり者に写るようで、そのプロデューサーが良く当たる占い師に占ってもらう過程を取材したいと言った。

私は面白そうだなと思ったし、あの美輪明宏さんが出てる番組なので二つ返事で了承した。

この時には、美輪さんの夢を見たことはすっかり忘れて居た。ただテレビに出れたらラッキーくらいにしか考えて居なかった。





後日改めて、その占い師が居る館へ案内された。地元の仲間内だけが来るようなスナックを改装した店だった。何となく元々スナックをやりながら占いが良く当たると評判になり、占い業に転職したのだろうか?と感じた。

占い師の方は、長い金髪のギャルで私と同じ年齢くらいの人だった。店の外観から先入観があったのかもしれ無いが、顔を見た瞬間に夜の商売の人だと感じた。

気位が高い、高慢ちきな印象が空気に乗って漂って居て、子生意気そうな印象だった。私と同世代の女性で店を切り盛りして生きてるのだから、こんなモノなのかも知れないが、成り上がり真っ最中の貪欲な匂いがした。

彼女は三代続く霊媒師一族の後取りで、そのギャルのような出立ちと相まって占い界隈では有名な人のようだった。

この時の私は、霊や占いと言うものは一切信じて居なかった。統計学的に学問として人間の特性などを何種類かに分ける事は可能だと考えて居たが、超能力的なものは全てカラクリが有ると考えて居た。





彼女が私に質問をする形で、将来私がどんな職業に就くべきかを占って貰った。私のオーラが紫色だと彼女は言ったが、私はオーラとかを信じて無いし「紫色だから何だと言うのだ?」と感じた。

その説明が聞きたいのに、オーラの色だけ伝えて、話を変える彼女に内心イライラしていた。

すると彼女は、急に怒り出し私に説教をするように、人に迷惑を掛けないようにしろだとか、手に職を付けろだとか、何十年も前に学校の先生が言ってたような戯言を発して来た。

そんな言葉は聞き飽きて居るし、そんな誰でも言えるような事は全部無視して生きて来たから今の自分が在る。「この女、何にも分かってないな」と思って話を聞いて居ると、彼女の怒りはより激しさを増し声を荒げ怒り出した。

私は内心で、「カメラが回ってるのにこんなに切れ出して大丈夫か?この女。」と心配になった。

テレビ撮影という事もあり、私もサービス精神が旺盛なお調子者の性格が災いしたのか、普段の自分では考えられ無いほど、積極的に相手に自分の事を説明して、今後の生き方について尋ねたが、確信的な事は何も答えてくれなかった。ただ、態度の悪い飲み屋のネーチャンと話しただけと言う印象だった。

結局、「自分の生き方で生きて行く強さを持った人です」と言われ占いは終わった。

彼女に霊能力が有るとか、未来が分かる占い師だとは思わなかったけど、彼女なりに一生懸命アドバイスをして、占いの後には御焚き上げをしてくれたので、根は優しい人なのだと感じた。





人間は生きてても、最後は死ぬから悲しいし。どんな人でも最後は寂しい思いをして、人生を終える気がしてならなかった。

私の祖父は裁判官を務め上げた立派な人だったが、晩年には呆けてトイレも1人では出来なくなった。そして幻覚を見て「狐が居る」と言っては祖母に「そんなもの何処にも居ませんよ」怒られ叩かれて居た。

誰もが羨む高級取りで、天皇陛下から祝祭にお呼ばれされるような名家にまで登り詰めたのに、最後は自分の伴侶に嫌われ怒鳴られながら死んで行くのかと思うと、虚しくてたまらなかった。

私が祖父の車椅子を押して、祖母や娘である私の母は一歳手伝わ無い。全て私に押し付けて旅行を謳歌してた。

私は女どもの薄情な姿を見て、良き旦那や父として生きた最後に受ける仕打ちがこれなのかと絶望感を感じて居た。





私が経験した哀しみに関して、詳細は述べなかったものの、「人間は最終的には死ぬ。その時、どうせ悲しいと感じるだろう」と彼女に伝えた時、彼女は食い気味に「それはあなたの妄想で、生きてみなければわからない」と反論した。

その言葉には怒りや苛立ちが含まれて居て、私は自分の祖父が遂げた人生の結末を見てきた上での発言だったため、彼女の言葉に腹が立った。お前のような頭の悪い女には、どうせ分からないと感じた。しかし、同時にどこかで彼女の言葉から、根拠のない薄っぺらい希望を感じ取った気がした。

私は最後まで彼女を霊能力者だとは認めていなかった。だけど後日、占われていた状況を振り返ると、彼女が怒ったりイライラしたりする瞬間は、私が心の中で彼女を疑ったり見下したりしている時に限られていることに気づいた。もしも私の心の声が聴こえて居たのなら、彼女が理不尽に声を荒げたり怒ったような物言いをしてくるのも理解できた。

私は感情を顔に出さないタイプだし、テレビで流れる事も意識して、怒りや苛立ちが表に出ないようにかなり注意して居た。しかし、彼女のように長年夜の仕事をしていれば、通常の人とは違う感覚の鋭さを持っていることもありえると感じた。

霊を信じるわけではないが、私に占いをしてくれた彼女は「感が鋭い」という表現を超えた洞察力を持つ人物だったと、何日も後になって感じた。

人々がそのような人物を霊能力者と見なすのは、その人間離れした洞察力の高さが根底に有るのではないかと感じた。

この体験が、並外れた感の良さのずっと先に霊能力と呼ばれる領域が存在してるのではないか?と考えるきっかけになったのだった。

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