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今までに出会った人物伝 その一

 久しぶりに更新。治療中にKei君と話している中でそういえば昔こんなやつがいたという話になった。その時に昔から自分の周りには面白いというかキャラが立った人間が多かったなということを思い出した。私自身は決して面白みのない男だし、地味で目立つこともない至ってごく普通の人間だが、周囲の人間には恵まれたのかもしれない。今回はそういった私が過去に出会ったとんでもなく面白い人を一人紹介したい。なお続きがあるかは不明だ。


人並み外れた経済感覚を持ったモンスター

 彼と出会ったのは私が大学編入を目指して専門学校に通っていた頃だ。その男の名を「オカ」という。当初はお互い大した接点はなかったが、次第にグループが大きくなっていく中で自然と邂逅したような気がする。

 彼の異様さはまず帰り際のコンビニで大いに発揮された。高校時代までコンビニに通ったことがなかった私だが家が同じ方向のオカともう一人と私でだいたい3人で行動していた。彼は決まってコンビニで野菜サラダを買うのだが(面倒なので自炊しない主義)、その時に必ず千円札を出す。おつりで何百円も返ってくるのだが彼は迷うことなく全額を被災地の寄付箱に突っ込んだ!私ともう一人は彼の行動に驚き問いただすが、「僕は小銭を持たない主義なんだ」と宣言したのだ。それから後は私がオカとよくコンビニに行くことが多くなったので彼はなぜかおつりを毎回私にくれていた。(なんでも世話になっているからというよくわからない理由だった)

 学校まで徒歩三分の高そうなマンションに住んでいながら雨の日は傘を持つのが面倒くさいのでタクシー通学。夏は部屋で常にクーラー、冬は常に暖房をつけっぱなしにして家を出る。失恋した友人を慰めるためにステーキハウスで1万円のステーキをポンとおごる。私の誕生日には黒毛和牛のステーキを奢ってくれた(年下に奢られたのは初めてだし超美味かった!)。金は払うが不味いもの、嫌いなものは一切手をつけないし勿体ないという発想はない。現金がなかったので奨学金を借りた後親が一括返済(利子を払うだけで特に意味のない行為)。クラスメートに3000円だすからレポートを書いてくれるか聞いたりととにかく人並み外れたセンスの持ち主だった(良くも悪くも)。資本主義の申し子のような男だった。

 彼の家が何の職業か定かではないが、母親は宝石商かなにかをやっていると本人から聞いたことがある。佐賀の私立高校出身らしく今まで周りが金持ちだったため特に違和感なく過ごしてきた(高校の卒業旅行で友達と新幹線日本の旅を満喫したとかなんとか)らしいが、専門学校で周りの貧乏ぶり(普通の生活)に驚いたらしい。一応私立出身の私とはなぜか馬が合ったため(クラスは公立高校出身者がほとんど)、一緒に行動することが増えたがその強烈な個性からクラスでは浮き気味だった。今欲しいものはマンションと言っていた(当時19-20才、マンション経営がしたいとのこと)。


歯に衣着せぬ物言いが特徴

 個人的に私が思う彼の外見的特徴は、綺麗な中性的な顔立ちに背はやや低め、気持ちポッチャリ目でチャーミングさはありつつ、金持ちらしい高価な衣服にモデルのようなファッションセンス(派手なコートにトンガリ靴とブランドバッグ)があった。

 そして人当たりと口は結構きつい男だった。思ったことは口に出さないと気が済まない性質らしく、婉曲な表現や周りの空気を読むと言ったことはほぼしなかった。彼の罵詈雑言は中々に強烈だったし、心に刺さることも結構あったものだ。私もよく「馬鹿、アホ、マヌケ、愚図、顔が汚い、デブ、髭が濃い、鈍足、そんなんじゃ女の子にモテナイ、(言動に対し)君のそういう所が良くない」などとダメだしを言われたものだ。
 彼は私より一つ年下だが誰に対しても君づけで呼ぶのだ。別の友人曰くあれは他人を見下している証拠だと憤慨していた。そんなこんなでプライドは高いし、口は悪いしでクラスメートから敬遠されるのは無理もない話である。他の友人からマジュフォンよくあいつと一緒に居られるなと言われたこともあるが、当時の私からすれば確かに腹は立つが言われたことは事実であるし、一理あるという感じだった。それに基本的に暴力を振るうタイプの人間ではないので最も嫌いなタイプではなかったのもある。

 また私は外食特にランチが好きだったし、よくオカともう一人を誘って飯に行っていたので、食の好みは近いものがあったようだ。皆外食は金がないから基本的に嫌がったが、オカとバイトを二つしていたもう一人の友人はほぼ賛同してくれるので自然と仲良くなったのもあるかもしれない。貴重な大富豪仲間でもあり合宿中や受験が終わった授業中にも死ぬほど大富豪した仲でもある。高校時代はボーカルをやっていたらしくカラオケで歌ったREADY STEADY GO (L'Arc〜en〜Ciel)は死ぬほど上手くてびっくりした。歌声だけは本人降臨とよく言われていたものだ。


独特な彼女がいたし、よくモテタらしい

 とにかく自信が服を着て歩いているような男なので彼女はいた。彼女持ちは友人達に写真を見せる流れだったのだが、一人だけ彼女の話題になると暗くなる男が彼だった。当然皆興味津々だったし、しつこく写真を見せるように言われると渋々出してきたのが、女性の手首の写真だった。なんでも遠距離恋愛で名古屋にいる彼女が夜な夜な、手首の写真を送ってきたり、私のこと嫌いになったの?と電話してきては違うと説得する日々なのだとか。こころなしかあの頃は顔が青かったような気がする。
 その後、結局彼女とは上手くいかず別れるために名古屋までいくことになったらしい。その前夜に仲間内で飲み会があったのだが彼女と別れる話で盛り上がり「あいつ絶対刺されるよ」と言われて不安がっていたのは覚えている。飲み会の後に震えながら「一人になりたくない、今夜は帰りたくない」と言われたのでうちで二人でパワプロをしたのだが、何が悲しくて男にこんな台詞を言われなければならないのか。それは女子に言われたい台詞だったのだが・・・。
 動揺したせいか、彼はパワプロで凡ミスを繰り返していたし、私は下手くそなので打てなかったのでたしか両軍合わせて20残塁以上して貧打戦のまま9回に1点をとられて負けたのだ。ちなみに当時やっていた2004パワプロはオリックスが村松大島谷ブラウンオーティズ塩谷山崎日高後藤、先発は具臺晟だった。彼はスワローズファンだったので稲葉宮本岩村ラミレス鈴木古田真中城石ベバリンだった。
 後日彼は無事別れて帰ってきたし、その後実家に帰省したときに電車で隣に座っていた女の子から連絡先を聞かれてやりとりをしていると聞いたので普通にモテル男だったようだ。それにしても彼の「このクラスの女子のレベル(40人中10人が女子)なら俺だったら全員落とせる!」という自信満々の名言は今でも忘れられない。


関東指向が強く、本望を遂げた

 うちの学校の指定校推薦の目玉だったのが中央大学への推薦枠だった。志望するものは多かったが優取得率90%以上という要件を満たせる者はほとんどいなかったので(私は頑張ったが75%で満たせなかったし関西指向のためどっちにしろとる気はなかった)、1年の時点で候補者はかなり絞られていた。その後オカとクラスの首席が争う一騎打ちの様相を呈していた指定校推薦争いだったが、首席が国立大学への受験を決めたためオカの進学が決まったのである。
 卒業式の日に専門学校と提携した大学の卒業証書をもらうのだが、なんと彼はもらった卒業証書を教室に放置して帰って行ってしまった。曰く最終学歴が大事でこの学校には興味がなかったらしい。担任が怒っていたのは記憶にあるが、翌年から中央大学への推薦が打ち切られると更に大激怒していた・・・。


おわり

 こうして振り返ると本当に面白い男だったし色々と勉強になった。卒業後は一切連絡がとれないためどこで何をしているのかはわからないが、縁があればまた会うかもしれない。なかなかいないぶっ飛んだキャラだったがよく飯を奢ってもらったので特に不満はない。化粧水に詳しくやたら勧められたので使っていたものだ。同窓会にも来なかったし、元気にしてるのか未だに謎である。

#今までに出会った人物列伝 #ぶっ飛んでた #資本主義の体現者

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